2008年に初めてふるさと納税が導入されてから10年以上が経過しました。時間の経過と共にこの制度の認知度も高まっていき、2017年度の納税受入額は3500億円を超えました。
この制度は元々、地方経済活性化の目的で導入された制度ですが、ふるさと納税を利用した方の所得税や住民税が控除されたり、返礼品がもらえたりするなど納税した側にもメリットがあります。「ふるさと納税って今さら過ぎて人に聞きにくい・・」という人も多いのではないでしょうか? 今回はそんな人に向けて、ふるさと納税制度の仕組みを分かりやすく解説します。
ふるさと納税制度とは?
ふるさと納税とは、寄付金税制の種類です。「納税」という名称がついているためややこしいのですが、実際には「寄付」を利用した節税方法のひとつと言えます。自身で選択した特定の地方自治体に寄付をすることによって、その自治体へ住民税の一部相当を「納税」したように見せる制度となっています。そのため、ふるさと納税は「ふるさと寄付金」とも呼ばれています。
寄付金控除とふるさと納税の違い
ふるさと納税は国や地方公共団体などに対してお金を寄付したときに税金が安くなる「寄付金控除」の一つとされています。
寄付金控除は、寄付したお金から2000円を引いた額が所得控除として差し引かれます。例えば、1万円寄付した場合、その金額から2000円を引いた8000円が所得から控除されます。ただし、ふるさと納税には単なる寄付金控除とは違う特徴があります。以下に、その違いを2点まとめてみました。
・ふるさと納税は住民税の控除にもつながる!
ふるさと納税は所得税控除だけでなく住民税の控除にも適用されます。また、住民税控除の場合、控除のされ方が「基本分」と「特例分」の2パターンあります。それぞれの控除額の計算方法については後程お伝えしたいと思います。
・手厚い返礼品がもらえる!
ふるさと納税は寄付先を限定していませんので、自分の好きな地方自治体に寄付することができます。しかも寄付をすれば地方の特産品や地方限定の返礼品などがもらえるのはとても魅力的です。
ふるさと納税後の税率は?
ふるさと納税で控除対象となる税金は所得税と住民税です。まず、所得税の控除の計算方法ですが、式に表すと以下のようになります。
ボールド)所得税の控除額=(寄付した額-2000円)×所得税率
ちなみに所得税率は、その年の所得に応じて変わってきます。所得税率については、個人の場合は下記のような累進課税率になりますので参考にしてください。
所得額 | 税率 |
---|---|
195万円以下 | 5% |
195万円超330万円以下 | 10% |
330万円超695万円以下 | 20% |
695万円超900万円以下 | 23% |
900万円超1800万円以下 | 33% |
1800万円超4000万円以下 | 40% |
4000万円超 | 45% |
次に、住民税の控除額の計算方法です。ここがふるさと納税の効果が出るところで、基本分と特例分に分かれています。
(基本分)
ボールド)住民税からの控除=(寄付した額-2000円)×住民税率10%
(特例分)
ボールド)住民税からの控除=(寄付した額-2000円)-所得税からの控除分-住民税(基本分)からの控除分
この特例分の控除に関しては、「住民税額所得割額×20%」と比較して少ない方が採用されます。
ふるさと納税の申告対象となるのは?
ふるさと納税の控除申告の仕方は、サラリーマンと自営業者で違ってきます。以下に見ていきましょう。
・確定申告が必要の場合
確定申告は一般的に個人事業主などが税金の申告をするときに行うものですが、ケースによってはサラリーマンの方も行う必要が出てきます。例えば、医療費控除を受ける場合や住宅借入金控除などの初年度分申告については、会社員でも確定申告の手続きが必須になってきます。ふるさと納税で確定申告が必要な方は以下の条件に当てはまるかどうかでわかります。
1)1年間に寄付した自治体の数が6団体以上ある方
2)年収が2000万円以上ある方
3)給与所得者で給与所得以外の所得がある方
4)給与所得者でかつ医療費控除などの手続きが必要な方
5)ワンストップ特例の申請手続きができなかった方
・確定申告が不要の場合
上記の条件からもわかるように、確定申告の必要がないふるさと納税利用者は「ワンストップ特例」を受けていることです。また、ふるさと納税をした団体の数が5団体以下というのも条件になります。
この時、気を付けておきたいのが「5団体以下」の自治体というだけで、例えば、「1団体に6回以上寄付するといったことは可能」となります。また、この場合住民税のみが控除対象となります。
これらの要件を満たしているとワンストップ特例が使えます。この特例を利用すると翌年度分の住民税が減額されますが、条件を満たせば自動的に適用されるわけではありません。「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」という書類を自治体からもらうか、自分でネット上から取得・プリントアウトするかして記入し、その後各自治体に提出します。
オンライン上のプラットフォームに記入して申請することもできますので、条件を満たしている方はぜひ活用しましょう。なお、確定申告が必要な人は「ワンストップ特例」の申請をすると控除されなくなりますので注意が必要です。
ふるさと納税の流れ
ふるさと納税の仕組みや制度の概要についてある程度わかったら、今度はふるさと納税利用の流れについて見ていきましょう。
①まず納税可能額を知る
ふるさと納税を利用した控除には上限が定められています。今回、詳しい上限金額については割愛しますが、上限金額を超えて納税すると超えた分に関しては税金控除の対象にならないので注意しましょう。この上限金額は、年収や家族構成などによって異なってきます。以下、参考までに納税可能額の目安を紹介しておきます。
年収300万円程度の方 | 1~3万円ほど |
年収500万円程度の方 | 4~6万円ほど |
年収1000万円程度の方 | 13~17万円ほど |
ちなみに私は、個人で不動産所得もあることから、毎年30万円程度のふるさと納税を申請しています。
②自治体からもらえる返礼品を決定する
ふるさと納税の返礼品としてもらえるものはお米、野菜、肉、海産物、家電などいろいろあります。どんな返礼品がもらえるのかまとめたサイトなどもありますので、いろいろ調べてみるのもよいでしょう。
③寄付をする
納税は銀行振り込み、郵便振替のほかクレジットカードでもできます。クレジットカードでの納税の利点は、ポイントがたまることです。例えば、カードブランドによっては納税額の1%ほどがポイントで還元されるものもあります。また、納税の方法としては、ネット通販をするように簡単にWeb上で納税を完了できるサイトもあります。
④返礼品を受け取る
返礼品は納税後1~4週間ほどで送られてきますが、人気の品や家電などは1ヵ月以上かかる場合もあります。また、配送先を自宅以外の場所に指定し、お中元やお歳暮代わりに利用することも可能です。
⑤所得税などを減税する
減税の手続きを確定申告でする場合、郵送されてきた「寄付証明書」が必要になります。ワンストップ特例制度には本人確認書類と自治体への申請用紙が必要になります。
ふるさと納税制度のまとめ
ふるさと納税の利用上限額は、家族構成や所得額によって異なります。ただ一つ言えることは、高所得者ほど控除される金額も大きくなるため、高所得者の方がふるさと納税のメリットを受けやすいということです。
ただし、今までのふるさと納税制度はチェック機能が甘く、自治体の運営の良心に頼っていました。そのため最近ニュースでも話題となったように、納税者を囲いこむ目的で「過剰な高額な返礼品競争」や「自治体の特産品とは関係ないもの」を扱うなど問題視されている点が多く出てきました。
これらのことを考えると、今後制度の見直しやふるさと納税制度の仕組み自体が変わってしまうこともあり得ます。自治体側に求められるのは「地域振興」というふるさと納税の趣旨を再確認し、「自治体の応援をしたい」という納税者の善意を裏切らないということではないでしょうか。納税者自身も目先の返礼品にとらわれず、ふるさと納税の意義をしっかり見据えることが大切です。
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