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タックスヘイブンの税制とは?税金の逃げ道

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「タックスヘイブン」金融・経済に関する知識に明るい人であれば聞き馴染みのある言葉だと思います。

しかし、そうでない人からするとパナマ文書に関するニュースのときに見聞きしたくらいで、ちゃんとした意味は知らないのではないでしょうか。

「ヘイブン」=「ヘブン」ではありません。

ですから、タックスヘイブンは税金や税制を好き勝手できる税金天国とはなりません。

タックスヘイブンの「ヘイブン」には「避難地(所)」・「安息所」といった意味があり、「タックス」と合わせると「税金の避難地」となるわけです。

日本では租税回避地と呼ばれることが多いです。税金を回避するとなると違法のように思われるかもしれませんが、決してそうではありません。

税金がないか、もしくは低い地域や国の税制を法にしたがい利用すれば問題のない節税方法だからです。

近くではシンガポールや香港がそれにあたり、その他にもケイマン諸島などが有名です。

なぜ、タックスヘイブンを利用するのか?

タックスヘイブンを利用する目的としては節税か、犯罪行為にはなりますが脱税が良く挙げられます。

どちらにせよ税金を安く抑えるために利用されているイメージです。

例えば自国では30%も税金がかかるのに対して、タックスヘイブンでは全くかからないか20%以下になるとなれば、それを利用しない手はないですよね。

この点が企業や富裕層にとってはメリットになるのです。

 

しかし、ただ税金が安くなるからというだけでタックスヘイブンを利用しているわけではありません。

タックスヘイブンと呼ばれる国や地域は共通した特徴を持っています。

まず一つ目は、もちろん税金がかからないか、税率が低いという点です。

この点に関しては4つに国や地域を分類することができます。

法人税のみならず所得税や相続税もかからない無税国、シンガポールの17%、香港の16.5%のように税率の低い低税率国、それから国外源泉所得非課税国と租税特典国です。

国外源泉所得非課税国とは、国外で所得が発生しても、それに対して課税をしない国や地域を指します。

ちなみに日本を含む多くの国で採用されているのが全世界所得課税方式で、この方式だと国外での所得に対しても課税されます。

租税特典国は、特定の条件を満たせば減税ないしは免税をする税制を採用している国のことです。マレーシアやミャンマーなどが該当します。

 

二つ目は規制が緩いという点です。

端的に言ってしまえば、干渉されないのです。

日本では税金に対して監視の目は厳しく、手続きも複雑ですが、タックスヘイブンでは規制が緩いので日本のようにはなりません。

その規制の緩さを示す事例として銀行での口座開設があります。

タックスヘイブンで口座を開設する際には、個人を特定できる書類の提出が求められないのがほとんどなのです。それだけでなく会社の設立も簡単にできてしまいます。

 

さらに特徴はこれだけでなく、三つ目として秘匿性の高さが挙げられます。これは個人情報保護を目的としているノミニー制度の利用を主に指しています。

この制度では、第三者名義で法人登記ができてしまうだけでなく、代理人名義で法人の設立から運営までが可能となります。つまり、本人の情報を明かす必要がないのです。

また国や地域によりますが、当事者以外が口座情報を詮索することを禁止していたりもします。

最後に挙げられる特徴としては、実質的な経済活動を求められない点があります。

どういうことかというと、タックスヘイブンである国や地域に住所を置いているだけで良く、実際の経済活動は求めないということです。

つまりは会社の設立にあたって建物などは不要で書類だけで問題がないのです。

そして、これらの特徴を上手く活用することで特に法人はさまざまなメリットが得られるのです。

 

その一つが事業におけるスピードです。

規制が緩く、書類さえあれば会社が簡単にできてしまうので、展開にスピードが求められる事業には最適な場所となります。

もう一つが二重課税を確実に避けるためです。

国外で所得が発生すると、自国と国外とでそれぞれ税金が課せられ二重課税になる可能性があります。

しかし、ほとんど税金の課せられないタックスヘイブンを利用していれば、そのリスクがほぼなくなります。

それから、秘匿性の高さを生かして公務員や富裕層が公には知られたくはない投資活動などを行っています。

このように単純に税金が安くなるからだけでタックスヘイブンを利用しているわけではないのです。

指摘される問題点

上記で挙げたタックスヘイブンの特徴を活用して合法に活動する分には犯罪にはなりませんが、問題がないわけではありません。

真っ先に指摘されるのが「マネーロンダリングの温床」になる点です。

合法に活動する分には犯罪にはならないと述べましたが、そもそも活動に使われる資金が犯罪によって得られたものの場合があるのです。

それは、銀行の口座開設や会社設立が個人を特定することなく容易にできる上に、それらの情報が固く守れているからです。

これらの点を利用し、犯罪で得られた資金を出所不明のお金としてしまうのです。

問題はこれだけではありません。

 

もう一つ大きな問題として指摘されているのが、「税金逃れ」です。

この問題はパナマ文書によって広く知られるようになりました。

パナマ文書にはタックスヘイブンであるパナマを利用して税金逃れをしていた企業や個人の情報がその証拠とともに記載されています。記録は1970年代からされ、1150万件にも及ぶ情報が公になりました。

タックスヘイブンを合法に節税するのは、利用する企業や個人にとっては喜ばしいことですが、国にとっては税金を取り逃がしたことになります。

しかし、合法な行為である以上責めるのは難しいです。

 

それよりも問題なのは合法に見せかけた行為です。それにあたるのが、「ペーパーカンパニー」です。文字通り書類上だけの会社で活動実態がありません。

そのような会社を設立しやすいのがタックスヘイブンの特徴でしたよね。

その特徴を利用して形だけは合法の会社を設立するのです。

その結果、タックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立したり、住所だけを移したりしている企業や個人はどこにも納税しなくて済みます。

この点が税金逃れとして強く非難されています。

見せかけだけ合法とは?

 

上記で話したような見せかけだけ合法になる行為を「租税回避」と呼びます。

そして、この行為は罰せられることがありません。

なぜなら、税法上で予想していない方法で納税を回避する行為を指しているからです。

つまりは法の抜け穴を活用した課税逃れです。

どんなに不自然に見える行為をとったとしても、それに対して課税する法律がなければ罰することができないのです。

 

それとは違い、明らかに違法とれる行為を働いて課税を逃れようとするのが脱税です。

ですから、経費の架空計上や所得の圧縮などの脱税行為が発覚すると、罰則を受けることになります。

罰則としては、修正申告をしたときなどの延滞税、過少申告をしたときなどの加算税といった課税をされるものと、確定申告を期限内に提出しなかったり偽ったりしたときに受ける刑事罰とがあります。

 

刑事罰は懲役刑か罰金刑となっていて、その内容も最低でも5年以下の懲役か、500万円以下の罰金と決して軽くはありません。

租税回避や脱税といった方法をとらなくても問題なくできるのが節税です。

節税は法律に沿っての行為ですから、何ら咎められるようなものではありません。

むしろ、積極的に取り組んで余計な税金を払うことなく、ゆとりのある資産の運用をするべきでしょう。

最後に

タックスヘイブンの利用の大半は租税回避にあたります。

租税回避は現状として罰せられる法律や税制がないというだけです。

実際、タックスヘイブンに対する国際的な目も厳しくなってきています。

ですから、現状罰せられることがなくても自国や国際的な風向きが変われば、すぐさまに脱税行為とみなされる可能性が十分あります。

そうなれば最悪の場合、刑事罰に処されます。

 

つまり、法律の範囲内でタックスヘイブンを利用するのは自由ですが、租税回避のようなグレーゾーンの行為をするならば専門的な知識と「罰せられるかもしれない」という覚悟を持つ必要があります。

それが無理なら決して足を踏み入れないでください。

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