最近、公務員が不動産投資に参入するケースも増え、安定した不労所得が得られる不動産投資のニーズが高まっています。

その要因としては、
✔︎ 一生懸命働いているのに給料が一向に上がらない」
✔︎ 残業が多い
✔︎ 年功序列の人間関係が嫌だ
✔︎ 将来仕事がAIに奪われるかもしれない…

こうした悩みや不安を抱える公務員が増えているからです。

公務員という職業は、不動産投資をする上での与信が高く、その結果、金利が優遇されたり借入可能額が比較的高いなど、一般のサラリーマンよりも有利な点が多いのも事実ですが、逆に公務員である故に気を付けなければならない点もあります。

そこで今回は、公務員が不動産投資をする際の注意点や対策について考えてみました。私自身は公務員ではなく、民間企業に勤務するサラリーマンとして不動産投資を開始しましたが、やはり副業兼務規定は気になった経験があるのと、友人には公務員の兼業大家も多いため、この記事をまとめてみました。

1.公務員が不動産投資をする際の3つの基本的な注意点

(1)事業的規模かどうかに注意すること

公務員が不動産投資を行う際、国家公務員法103条と地方公務員法38条の副業禁止規定の壁をクリアする必要があります。これらの法律に違反すれば懲戒処分の対象となります。

副業禁止規定をクリアする条件は、不動産投資が「事業的規模」かどうかによって変わります。事業的規模でない場合には副業とはみなされません。「事業的規模でない」とは、以下を指します。

・独立家屋の場合、5棟以上
・アパートやマンションの場合、10室以上
・月極駐車場の駐車台数10台以上
・コインパーキングを賃貸経営する
・年間賃貸収入が500万円以上である

いわゆる5棟10室の原則です。「事業的規模」というのは会計用語で、それに満たない場合は「業務的規模」と呼称します。

事業的規模でなければ、本業に支障をきたさない限り、自分で不動産管理に携わることができます。「事業的規模」である場合は、自分で不動産管理を行うことは認められておらず、必ず管理会社へ委託しなければなりません。

「事業的規模」に該当し、不動産投資が副業とみなされる場合は、自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係)等の書類を所轄庁経由で、人事院に提出して、承認を得なければなりません。

具体的な必要書類は以下のとおりです。

・自営兼業承認申請書
・貸借条件一覧表(レントロール)
・物件概要書
・物件の管理委託契約書

また、自治体によってルールが異なるため、不動産投資をする前に、「規模」「経営方法」「事前承認の有無」は必ず確認しましょう。

(2)公務員が不動産投資をする際の税金

不動産投資が「事業的規模」でない場合は、所得税申告の際、65万円の青色申告特別控除が適用できません。したがって、青色申告特別控除は10万円が最高額です。一方「事業的規模」である場合は、65万円の青色申告特別控除が適用できます。

また、一般企業のサラリーマンが副業をし、確定申告や住民税の申告をするときは、住民税の計算明細書から副業収入が会社にバレないようにするため、特別徴収の欄にチェックを入れないのが一般的ですが、公務員の場合、不動産投資による副業収入が職場にバレても問題ありません。不動産投資の事前承認を得ているか、それが不要な場合のどちらかだからです。

したがって、特別徴収の欄にチェックを入れても問題なく、住民税を自分で納付する手間が省けます。

(3)すべての副業に共通する基準を守ること

不動産投資を含め、公務員が副業をする際、あらゆる副業に共通する基準を守らなければなりません。国家公務員法の第99~101条で公務員として次のようなことが定められています。

・職員は信用を失うこと、不名誉なことをしてはならない。
・職務の中で知った秘密を漏らしてはならない。
・勤務中は仕事に集中しなければならない。

これらに該当する場合、法律違反になります。

2.法人化を活用した副業禁止規定のクリア

(1)メリットが多い不動産管理の法人化

通常、不動産投資をするとき、個人の名義で銀行から融資を受け、不動産を所有します。これに対し、「資産管理法人」を設立すれば、名義がすべて設立した法人の名義となります。

「資産管理法人」とは、自分の不動産を管理してくれる会社のことをいいますが、不動産管理会社のことではありません。ここでいう「管理」とは、法人が不動産投資の「主体」になるという意味です。

資産管理法人を設立すれば、不動産投資の主体が法人となり、個人が営む事業とはならないため、副業禁止規定をクリアすることができます。

個人で不動産投資をすると「経費」として認められる範囲が非常に限定されますが、 資産管理法人を設立すれば、利益に対して支払われる支出を原則損金※として扱うことができ、利益を減らせるため、個人の場合よりも節税できます。
※ 損金とは、法人の支出した経費のことで、個人の「利益」に相当する「益金」の反対語です。

また法人の場合、個人のように「事業で使っている部分だけ必要経費化する」というルールがなく、法人名義で保有する減価償却資産のすべてを事業用として全額経費計上することができます。

(2)法人化するときの注意点

「公務員が法人を設立することは兼業禁止規定に反するのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、いくつかの注意点を守れば、法人化が可能なのです。

・代表取締役の設定と株式比率

まず、資産管理法人を設立する公務員自身が代表取締役や役員になってしまうと、公務員法に違反する可能性があるため、民間人の配偶者などの親族を代表取締役とする必要があります。

ただ、そうすると公務員が融資の対象でなくなるため、銀行から融資を受ける時に不利になります。そこで、配偶者を代表取締役にしつつ、公務員たる投資家自身が100%の株式を持つようにします(銀行によっては、投資家本人の株式比率が50%程度でも融資が得られることがあります)。

・資産管理法人の本店所在地

次に、本店の所在地を実家等、できるだけ自宅とは違う住所で登記するようにします。税務署等の行政調査があった場合、公務員の自宅に税務署の職員を調査することになり、誤解を招きかねません。レンタルオフィスやバーチャルオフィスも検討してみましょう。

・役員報酬と給与の設定

最後に「役員報酬」です。資産管理法人を設立しても、公務員自身に対して会社から役員報酬を出してしまうと国家公務員法に抵触する恐れがあります。そのため、法人の役員報酬については、公務員を退職するまでゼロに設定しておきます。代表取締役である配偶者に対して給与という形で支給することで、法人の利益をコントロールするとよいでしょう。

資産管理法人の形態には、株式会社、合同会社、一般社団法人などがありますが、上記のとおり、株式があるということは、公務員の場合、必然的に「株式会社」を設立することになります。株式会社の設立に必要な費用は概ね20~30万円です。

3.不動産投資における公務員の弱みと対策

(1)与信があることを逆手にとられる

公務員はあらゆる職業の中でも信用が高く、それは銀行だけでなく、不動産会社の営業マンにとっても周知の事実です。そのため不動産会社からすれば、公務員は何よりの優良顧客なのです。

当然不動産会社としては仲介手数料が欲しいので、公務員には高額な不動産を勧めてきます。融資が出るギリギリの物件を何とかして売ろうとします。このとき、営業マンは巧みなセールストークを駆使してきますので、予備知識がないと口車に乗せられてしまう恐れがあります。

営業マンが高額物件を勧めてきても、きっぱりと断る態度を示すことが重要です。これは公務員に限った話ではありませんが、額の多寡ではなく、しっかりと収益性が出る物件なのか、もしくは資産性が高い物件なのか、など自身の投資判断の基準を明確に持っておき、それに合わない物件は買わない、と決める勇気も必要です。

営業マンは、営業しながら投資家の知識や経験を測っています。初心者だと思われると、カモにされてしまう恐れもあるため、自分自身の考えをはっきりと示すことは、公務員の不動産投資においてとても重要です。

(2)ビジネススキルが低い

公務員の勤め先は一般企業のように営利組織ではないため、公務員は「利益を出す」という意識が一般企業の会社員に比べると低いことが多いです。そのため、本人が自覚することなく、高額な物件を買わされてしまうということがあります。

こういう書き方をすると公務員の方には失礼ですが、知識や経験の浅い人は不動産投資を始める前に、不動産投資で利益が出る仕組みをしっかりと勉強する必要があります。

(3)リスク対策に対する意識が甘い

また公務員は職が安定しているせいか、一般企業の社員に比べて危機感が少なく、楽観的になりやすい傾向にあります。そこで問題なのがリスク対策です。不動産投資に対する考えが楽観的すぎると、空室対策などのさまざまなリスク対策ができず、問題が起こったとき、対処に苦労することになります。

なので、事前に不動産投資に関する知識を本などから収集してよく理解することです。特に先輩投資家の失敗談をよく読むとよいでしょう。失敗談を聞くことで、不動産投資に対する危機管理能力が養われます。

4.公務員の不動産投資のまとめ

以上に挙げた点に注意しながら、失敗のない不動産投資に取り組みましょう。特に、副業禁止規定に抵触すると、懲戒処分の対象となり、本業にも影響が及ぶので注意が必要です。また、公務員と並行しながら不動産投資を行うにあたって、すでにその経験のある公務員の方の話を聞いてみるのもいいでしょう。また、公務員の不動産投資家でブログを運営している人もいるのでそういう人と情報交換をしてみましょう。

不動産投資について更に理解を深めたい公務員に向けて、現役不動産投資家である私、杉田卓哉(椙田拓也)が書いた『公務員が不動産投資で成功するマニュアル』という30ページあるPDFレポートを期間限定で無料公開しています。読んでみたい方は、下記のURLよりダウンロードしてください。
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