「相手とわかりあえない」「上司と意識疎通できない」仕事をしていれば必ずといっていいほど抱える悩みです。
しかし実はこの悩み、ある能力を上げるだけで簡単に解決できてしまいます。
その能力とは「先を読む力」です。この予測できる力のことを心理学用語でスキーマと呼びます。スキーマを高めると、仕事やコミュニケーションが円滑に進むのです。
先見力が欲しい・・将来を見通す目を持ちたい・・変化の目まぐるしい時代で、生き残るためにも、“先を読む力”は必要です。とりわけビジネスシーンにおいては、先が読めないと他者から抜きんでることができません。
忖度(そんたく)という言葉が流行って久しいですが、忖度とは言い換えると、予測できる力、スキーマのことです。そこで今日は、このスキーマにスポットを当ててみたいと思います。
この記事では、
・スキーマの高め方
・スキーマの注意点
をご紹介いたします。
先を読む力「スキーマ」とは?
仕事を円滑に行なうにあたって、必要なものがあります。それがスキーマです。
スキーマとは認知心理学の言葉で、「人間が枠組みに基づいて推測する」ことです。相手の立場や気持ちを「察知する能力」のことです。
スキーマは連想力
仕事はチームで行なうものなので、相手の立場や気持ちを理解しなければうまく回りません。
人は誰しも「自分のことをわかってほしい生き物」です。
相手を思いやる気持ちがなければ苦手意識や嫌いな気持ちが相手に伝わり、意思疎通が不可能になります。そうなれば文字通り成果は出せません。
察知力を高めることで相手の期待に応えられ、チーム全体が円滑に回るようになります。
どんな画期的なフレームワークや問題解決法があったとしても相手を思いやる気持ちが前提になければ成り立たないのです。
例えば、断片的な情報を受け取った時、その情報では足りない部分を過去の経験や知識から推測します。
「赤い」
「甘い」
「ケーキの上にのっている」
と言えば「いちご」と連想できます。
極論すればスキーマとは、「赤い」という断片的な情報だけから、「いちご」を連想できる力のことを指します。
言い換えると、「1を聞いて10を知る力」とも言えます。仕事において、少ない情報から流れを読むことは、非常に重要なスキルです。
スキーマの高め方
上司の「あれやっといて」の一言で、仕事ができれば評価の対象になることは間違いありません。
スキーマとはこの能力のことを言います。では、スキーマを高めるにはどうしたらいいのでしょうか?
それはインプットを多くすることです。インプットを多くすると、様々な知識や事例が増え、正解に近い仮説を立てることができるからです。
インプットを多くするには、他者の経験から学ぶことです。読書をしたり、セミナーを受講したりと、他者の事例から学ぶのです。
仕事を効率よく進められるスキーマ。
この力を高めることは、ビジネスパーソンにとって大きな武器となります。スキーマを身につけるためには、次の2つのポイントを知っておく必要があります。
聴き方
聴き方のポイントは、相手の目を見て相手のペースに合わせ、あいづちを打つことです。
聴くという文字からもわかる通り目や心も使って「聴く」ことがポイントです。
相手の目を見ることで、相手に関心を寄せていることが伝わります。
相手のペースに合わせることで相手は気持ちよく話せます。あいづちを打つことで、相手はより信頼してくれるようになります。
話し方
話し方のポイントは、相手が聞きたいことをテンポよく話すことです。
「何の話か」「それを聞いてどうすればいいのか?」「結論は何か?」などを簡素かつ的確に話していくことが重要です。
つまり、相手が答えやすい話し方をすることで相手は聴く耳を持ってくれるのです。
しかし、この世に完璧なものは存在しません。スキーマにもデメリットが存在します。
スキーマの注意点
色眼鏡で見過ぎない
スキーマを高めることは重要ですが、そのスキーマが高いゆえに成長できないこともあります。
なぜスキーマが高いと成長できないのでしょうか?
それは、スキーマが高いと物事を色眼鏡で見てしまうからです。
人は、1を聞いて10を知る能力があると、残りの9を色眼鏡で見てしまうのです。
「赤い」
「甘い」
「ケーキの上にのっている」
イコール「いちご」とは限らないのです。
答えは、もしかしたらフルーツケーキの「ラズベリー」かもしれません。
このように色眼鏡が原因で、条件反射的に物事を推測してしまうのです。刻一刻と変わるビジネスシーンにおいては、なおさら顕著になります。
セオリー通りにやらない
相手を察知するには、“セオリー通りにやらない”ことです。どうしたらいいのかと言うと「セオリーを活かしつつ、アドリブを加味する」ことです。
セオリーとは、印象を良くする方法であったり、相手に伝わる話し方をしたりといった方法論のことです。その方法を用いれば、ほぼうまくいくもののことを指します。
しかし、セオリーは人や状況によって結果が異なります。
そこで、「アドリブを加味する」のです。セオリー通りにやり、時と場合によって自身の感性で変化させることです。
セオリー通りだと「この相手には結論から話すべき」だが、今は忙しくないので「状況から話を進め、最後に結論を言う」という方法に変化させるのです。
セオリーはあくまでセオリーです。それが必ず通用するとは限りません。
アドリブで変化させることで、的中率を高めることができるのです。
根拠に基づく
予測に強くなるためには、「ファクトベース」をもつことが重要です。
ファクトベースとは直訳すると、ファクト(fact=事実)ベース(base基本)です。つまり「事実に基づいた考え方」という意味です。
事実とは、「数値データ」や「その専門分野に長けた人物の意見」のことです。統計や調査で割り出された数字は、未来を予測する上で役に立ちます。
専門分野に長けている人の意見も信憑性が高いので、未来を予測する判断材料になります。
このように、根拠に基づいた情報から判断することで精度の高い予測ができるようになるのです。
リスク分散する
しかし予測はあくまで予測なので、ハズレる可能性もあり得ます。ハズレる可能性を低くするためには、「リスクを分散」することです。
リスクを分散するとは、複数の予測を用意することです。
「統計のデータからの予測」「専門家の意見からの予測」「トレンドからの予測」など、複数の予測を用意しておき、どの予測が適切なのかを判断します。
ひとつの予測だけを“正しい”と決めてしまうと、リスクが高くなります。事実は変わりやすいことを念頭に予測立てることが、ポイントになります。
人間の動向から読む
予測する上で、知っておきたいことがあります。それが「人間の特性」です。未来は人の心や動向に大きく左右されます。
人の心が未来を創るといっても、過言ではありません。これらを踏まえると、心理学や行動経済学、または歴史について学んでおくことが大事です。
「人はこの状況になると、こんな行動を起こす」
「景気が上向くと、○○が流行る」
「こんな時代になると、こういう人物がのしあがってくる」
など、“人の特性”を知ることは、予測をする上でとても有効な判断材料となるのです。
まとめ
先を読む力であるスキーマを身につける上で注意したいのが、あくまで“予測”ということが大前提と理解しておくことです。
専門家の意見、論理的な根拠など、どんなファクトベースがあったとしても、それは“未来の事実”ではありません。飛行機のない時代に識者が、「空気より重いものが飛べるわけがない」と豪語していた。
それにも関わらず、ライト兄弟は飛行機を完成させたわけで。
つまり、「事象だけが事実」と言えるのです。予測を予測の範囲内で、最大限に活かすためには、事実から目を反らさないことが重要といえます。
相手とのコミュニケーションを円滑にするスキーマ。そこに必要なのは「忖度(そんたく)」という言葉です。
忖度とは、他人の気持ちを推し量り配慮することです。
仕事において仲間や周りを思いやることは必須なのです。かといって、度の過ぎた「忖度」は空回りの原因にもなります。
相手との距離を見極めつつ忖度することで、健全なコミュニケーションを取ることができるのです。
いくら理論として成り立っていても、コミュニケーションの正解はひとつではありません。
スキーマをうまく使うには、与えられた情報から先を読み、一度フラットな目線で見てみることです。