「所得税の節税ができる不動産投資を始めてみませんか?」
「公務員が投資するのにお勧めの不動産を用意できます!」
そんな謳い文句で不動産投資ビジネスに引っ張られそうになった公務員の方はいませんか?
確かに「節税」という観点から考えれば「損益通算」という仕組みを利用して、納める税金を減らせる場合もありますが、不動産投資と給与所得などを合わせて赤字が出ていないといけないのでこれだと本末転倒といえます。
また、個人が莫大な初期費用のかかる不動産投資にやみくもに手を出すのは危険で投資に失敗したときには返せるか分からない借金を抱えてしまう可能性もあります。
そんな公務員がカモとして狙われるのには4つ理由があります。
そして、その理由は大きく2つが挙げられ、公務員が不動産投資に失敗する理由にもなっています。さらに、失敗する理由はそれだけではありません。
現役の公務員の方にとっては少し耳の痛い内容もあるかもしれませんが、不動産会社に狙われないためにも是非通読していただきたいです。
【失敗する理由1~信用があるからこそ狙われる~】
ある程度の資本を持たない方が不動産投資を始めるには、銀行からの資金借り入れが必須になります。
その借り入れをする際には「与信」が大切になってきます。
例えば、明らかに収入が少ない方や勤め先の経営状況が悪い方などにお金を貸したいと思いますか?
個人レベルでも経済能力に乏しい方にはお金を貸したくないはずですよね。
銀行など大きなお金を貸し出す金融機関ならなおさら信用はなくてはならないものです。
公務員は収入が安定していて、国や地方自治体に雇われているので勤務先が破綻することもほとんどありません。その点から考えても、公務員は銀行からの信用が高いと言えるのです。
ただ、公務員のそのような属性を狙って不動産投資に引っ張り込もうとする悪徳会社がいるのも事実です。むしろ、それがカモとして狙われる理由の一つです。
このような会社が狙っているのは、公務員の安定的な給料と銀行からの信用をもとに得た運用資金です。
価格の高い物件を売りつけ、説明もあいまいな会社は要注意といえます。
悪徳不動産会社が考えているのは自社の利益や売り上げだけの場合が多く、お客さんのことまで考える会社は一部です。
また、お金を貸す金融機関にしても貸した相手がちゃんと返済できることが重要であって、その人が不動産投資で成功することを一番に願っているわけではありません。
【失敗する理由2~不動産知識に乏しい~】
不動産に関連する職業の方ならまだ分かりますが、不動産の知識が全くない公務員がいきなり不動産投資を始めるには非常に危険です。
そもそも公務員は営利目的で働いてはいないですよね。
ですから、「利益をあげる」という視点に欠けているといえます。そのように考えたら収益をあげ続けなければならない不動産投資で利益をあげる視点が欠如した人間が始めるのには無理があります。
ですから、その前にお金や不動産の勉強をする必要が出てきます。
例えば、利回り(物件価格に対する賃料収入の割合)の高い物件を営業マンに勧められ、それを鵜呑みにして物件を購入してしまったとします。
その営業マンは単純に「利回り9%」、「借入金をすぐに返済できます」といった文句で勧めてくるかもしれませんが知識のない方は正しい判断ができません。
このケースでも一見すれば利回りが高く収益があがるように思えますが、利回りが高い物件は「中古物件」のケースも多く、中古となれば当然修繕費等もかかってきます。
不動産会社が提示するのはあくまで「表面利回り」と言って、満室想定時の賃料収入かつ「維持管理費等の諸費用」を加味しない数字です。
こういった基本的な不動産の知識すら持たず、利益をあげることに希薄な点が、公務員が狙われるもう一つの理由です。
【失敗する理由3~楽観的な想定をしてしまう~】
不動産投資に限った話ではありませんが、ビジネスをして儲ける、つまり利益を生むためには、起こりうるリスクもしっかりと把握し、綿密かつ入念に収支を想定する必要があります。
もちろん、不動産投資にも空室リスクをはじめ、いくつかのリスクが存在しています。
これは上記の理由とも似てくる話ですが、公務員の場合、「利益をあげる」ということを意識して仕事をするということはあまりありません。
ビジネス的な思考能力が、一般的なビジネスマンと比較して不足しているということです。
ですから、リスクを真剣に考えず、営業マンや広告のおいしい内容ばかりに気を取られがちです。
「なんとなく儲かりそう」といった感じで公務員が不動産投資に手を出し、思わぬリスクが発生して、想定外の損失を被るということも珍しくないのです。
たとえば、関東地方のある市役所に勤めるCさんは、利回りのよさに注目して地方の田園地帯にある8部屋のアパートを購入しました。
交通の便はあまりよくなく、人口も少ない地域でしたが、近くにとある企業の部品工場があり、そこで勤める人たちが入居してくれる物件だったのです。
実際、購入してからしばらくの間は、満室状態が続き、安定的に家賃収入を得ることができました。
しかし1年半が過ぎたころ、その企業は部品を海外工場で製造することに決めたため、工場は閉鎖されることとなり、勤めていた人たちも一斉にその地を去って行ってしまったのです。
もともと交通の便も悪く、人口も少ない地域だったので、アパートは一気に空室だらけとなり、Cさんは毎月20万円余りの損失を公務員としての給料で穴埋めすることになってしまったのでした。
このような失敗を防ぐためには、投資のおいしい側面ばかりに注目して、安易に楽観的な想定をしないことです。
不動産投資を行うのであれば、10年、20年先のことも含めて起こる可能性がある、あらゆるリスクを想定し、本当に利益をあげられる可能性が高いのかどうかを慎重に見極める思考能力が求められるのです。
【失敗する理由4~副業禁止の規則に抵触する~】
失敗といえるかどうかは微妙ですが、公務員の「副業は禁止」という規則にも気をつけなければなりません。
投資イコール副業とみなされるわけではありませんが、不動産投資の規模が一定の基準を超えた場合には副業とみなされることになります。
投資とみなされるか、副業とみなされるかを分ける基準は次のとおりです。
「戸建ての場合なら、家屋数が5棟以上か否か」
「マンションやアパートの場合なら、部屋数が10室以上か否か」
「年間に得られる家賃収入が500万円以上か否か」
許可を得ることなく、以上の基準を超えた不動産投資を行い、それがバレた場合には「副業についている」と判断され、何らかの懲戒処分が下さられる可能性が高くなります。
また、物件の管理を自ら行っている場合には、「大家」という副業についているとみなされる可能性が高くなりますので、管理はすべて不動産会社などの業者に委託してしまう必要があります。
このように、副業禁止という側面から見た場合も、公務員が不動産投資を行うにはさまざまな制限やデメリットが存在するのです。
【最後に】
ここまで見てきたように、公務員が不動産投資に手を出そうとすると悪徳不動産業者のカモになりやすく、また、知識の乏しさやリスク想定の甘さから安定的に利益を得るのは容易なことではありません。
それに、規則との関係で不動産投資を行うこと自体にさまざまな制限がかかります。
職場に内緒で不動産投資に手を出し、利益を得るどころか損失を出し、その挙句、職場にバレて軽い処分で済んだならまだしも、職もなくし資産も失いということになってしまっては元も子もありません。
不動産投資に限らず、投資で利益を得るためには豊富な知識と利益を出すためのビジネス思考能力が必要です。
おいしい言葉にだまされたり、甘い見通しだけ持ったりして安易に不動産投資に手を出すことは、やめておいた方がいいでしょう。
しかし、それでもなお不動産投資に興味があるのなら、「カモにされてしまう場合もある」ということも考慮し、しっかりと不動産の知識を身に付けて臨んでください。