そんな彼はいくつもの言葉を世に残していきました。その中には現在でも生かせる言葉が多数存在しています。
「天下布武」
この言葉は信長が天下を統べるべく掲げた四文字です。このように書くと戦の旗印として使用されたイメージを抱く人もいるかもしれません。
しかし、そうではありません。この四文字は印章の印文として使用されていました。印章とは、ハンコのことで、印文はそのハンコに刻まれた文字や記号になります。
つまり、天下布武は公的文書に押された、信長の意思を示した言葉といえます。しかし天下布武という言葉には未だに大きな誤解があり、その真意も正確には流布していないのが現状です。
しかし、その真意には現代を生き抜くために学ぶべきことが多く含まれています。
では天下布武の真意は何なのか?
それをひもとき、現在のマネー術に生かすとしましょう。
【天下布武とは】
「天下布武」という言葉が、織田信長が自分の印章に活用したものというのは先程紹介した通りです。この言葉は「世の中を武力をもって治める」という意味だと思われがちです。
しかし、正しくは武力という意味で使われてはいません。「武」には、元々「戦いを止める」という意味合いがあります。
漢字を分解すると「矛」と「止」となります。「止」の字以外の部分が「矛」を示します。矛は、戦の際に使われていた武器で、転じて戦いを意味します。
そこから、「矛を止める」ものが「武」です。その意味が込められているのか、「武」の部首は「止(とめる・とめるへん)」です。
また、「武」は「七徳の武」を意味しており中国の古典「春秋左氏伝」では「7つの武の目的を備えた人物こそ天下を治める資格がある」と書かれています。
①暴を禁じる(暴力の禁止)
②戦を止める
③大を保つ(大国を維持する)
④功を定める(功績を達成する)
⑤民を安じる(国民を安心させる)
⑥衆を和す(大衆が仲良くできるようにする)
⑦財を豊かにする(経済的な豊かさを実現する)
これらが7つの武の目的であり、転じて「天下布武」とは「天下に七徳の武を布く」となります。つまり自らを魔王と名乗った織田信長が「天下泰平の世の中を実現させる決意」を示したものです。
この言葉は、織田信長の名付け親である沢彦和尚が贈ったもので、信長は「自分自身の理想に合う言葉だ」と喜んでいたと「政秀寺古記」に記載されていたほどです。
【織田信長的マネー術①私利私欲に溺れるな!】
「一人はみんなのために、みんなは一人のために」
「一人はみんなのために、みんなは一人のために」という言葉を一度は耳にしたことはないですか。
この言葉の意味するところとしては、それぞれが自分だけのことを考えるのではなく、他の人のことまで考える必要があるといったところです。
もし、自分のことだけを考えて他の人が困っているのに助けてあげない人は、仕事の場や友人からも信頼してもらえません。
これは会社経営者でもいえることです。もし、会社の顔である社長が会社のことを考えず、自分の私利私欲のことばかり考えているとどうでしょう。
従業員のことを考えない社長のために働こうという気持ちが芽生えるとは到底思えません。そうなると生産性が落ちて会社がもうからなくなります。
その結果、社長はまともな給料を受け取ることができなくなり、会社のお金を使うような事態を招きかねません。
では、人間ではなく動物ならどうでしょう?
動物の中には血縁関係にない他の個体に対して、利他的な振る舞いをする種類もあります。
このような振る舞いは互恵的利他行動と呼ばれるもので、他の個体に対して親切にすることによって、その個体から利益(見返り)を得ることを目的にした行動です。
たがって、直接の利害関係がない相手に対しては、利他的な振る舞いがなされることはありません。
しかし、人間の場合はそうではありません。
直接的な利害関係がなく、利益(見返り)が期待できないような状況であっても、他の人に対して親切に振る舞うというのは、よく見られることです。
これは人間の場合、その場面を見ていた第三者からの評価が高まり、人物としての評判も良くなって、結局は自分も他の人から親切にしてもらえる、という社会的な仕組みが背景としてあるためと考えられます。
このような関係性といえば、なにか思いつく言葉はありませんか?
情けは人のためにならず
そう「情けは人のためならず」ですね。
この言葉は、人のためを思って親切に接すれば、その親切は相手のためになるだけではなく、まわりまわって結局は自分自身にとってよい報いとなって帰ってくる、ということを表しています。
このような「情けは人のためならず」という関係性は、社会心理学で「間接互恵性」と呼ばれており、人間の利他的行動の基盤になっていると想定されています。
ですから、自分を最優先してしまうと周りの協力を得ることができなくなってしまい、最終的には自分が苦しむ結果を生んでしまいます。
なにも「聖人君子になれ」といっているわけではありません。しかし他の人のためになることを少しでも行って、いざとなったときに助けてくれる人がいる人間関係を作るのは重要です。
「周りのことを考えて行動している」ということを証明すれば、多くの人に信頼してもらうことができ、ビジネスや人間系を良好に進めることが可能です。
【織田信長的マネー術②徳は返ってくる】
コンパッションの能力も同時にたかめる
上記で私利私欲に溺れないように話をしましたが、「人のため」ばかり考えていられないのも人間の性。これは決して「悪」というわけではありません。
「自分を大事にする」「自分のために何かをする」というのも、とても大切なことです。
今、ちょっとしたブームになっているマインドフルネスはご存知ですか。これに関しては、脳科学や臨床心理学などの分野でさまざまな研究が行われています。
そのような研究の結果、マインドフルネスを単体で行うよりも「コンパッション」の能力も同時に高めていった方が、より大きな効果を期待できることがわかってきています。
「コンパッション」とは、わかりやすくいえば「慈悲」とか「思いやり」あるいは「あわれみ」のようなもののことです。
そして「コンパッション」の中でもとりわけ重要とされているのが「セルフ・コンパッション」、つまり自分に対する思いやりなのです。
自分を許す
自分に対して思いやりをもって接したり、自分のために行動をすることが、自分自身を良い状態にし、その結果として人のためになる行動もしやすくなる、ということを指しているといえます。
つまりは「自分を許す」ということです。
これは投資などのマネー術でお金を稼ぐことにも当てはまります。この世の中には株や不動産に投資をし、配当金や家賃収入を得ている人がいます。
ただ、投資を行っている人は少数派で多くの方にとっては非日常的な行動に見えるでしょう。
もしかしたら人によっては「卑怯な稼ぎ方」と思っているかもしれません。
ですが、投資とは本来世の中のためにするものです。
自分のお金を投じることで経済成長の助けになり、社会の役に立つことができるのです。また、投資をしたお金が成長し、最終的に自分のところへ戻ってきます。
つまりは、社会のためにやったことが最終的に自分にとって良い結果を生み出します。
この事からいえるのは「投資を行った人や企業全てが幸せになるのが正しい投資」ということです。
「意図せざる結果」
また、社会学には「意図せざる結果」と呼ばれる概念があります。
この概念は、明確な意図を持って行動したにもかかわらず、その意図とは違った結果が起こることを指しています。
「情けは人のためならず」とは逆で、「自分のため」と思ってやったことであっても、まわりまわって結局は他人のためになることもあるということです。
ですから、まずは自分を許し、投資に挑戦してください。そして、そんな投資には複利効果があるので、続ければ続けるほど利益をたくさん得られる可能性があります。
自分のお金が世の中の助けになり、資産が増えていく様子を知ることでモチベーションが高まり、さらに投資をしようという気持ちになります。
それから投資をすることで国の経済動向や企業の状態を知ろうと思うようになり、多くの知識を得られます。
世の中のために始めた投資で知識を増やすことができ、配当金などを受け取ることができるようになり、最後には自分のためになります。
投資を始めることで、何事にも後ろ向きだった人でも自ら率先して情報を集め、株を買い増しするようになり、自分の新しい1面を見つけることができます。
今回話したことはマネー術のほんの一部に過ぎません。マネー術には幾多の方法が存在しています。
そして、その前にお金に対する考え方や罪悪感を改める必要があります。
今回話したマネー術については杉田卓哉著「信長から僕が学んだ勝つために一番大切なこと」で分かりやすく学ぶことができます。