日本では古来より、人知の及ばないものとして自然や種々の神々に畏敬の念を抱いてきました。
これらの神様に祈りをささげる場所は一般的に神社がメインとなりますが、神棚が誕生したことでより身近に神様を感じられるようになりました。
神棚は家庭では家内安全、会社では商売繁盛を願うために祀られています。また、得られた恩恵に対してお礼を申し上げることで道徳心を養うことにも繋がると考えられてきました。
ただし、設置方法などに決まりがあり、その様式に則ったやり方で参拝するのが正しいとされています。
【神棚を一般家庭で祀るには】
一般家庭での神棚の向き
まず、一般家庭で設置するに当たって知っておくべきことがいくつかあります。
まず一つは設置する方角。
方角として良いとされているのが「南・東向き」の位置です。
南向きは「地位名誉」、「勉強運」、「隆盛運」などと関わりが深いとされ、東向きは「創造性の発揮」、「新規運」、「進出運」を盛り上げるのによいとされています。
ですが、どうしても上記の方角が建物の構造や配置の関係上難しい場合もあるはずです。
そんなときは、北・西向きの方角に設置しても問題ありません。
南や東はあくまで「吉方位」であって北や西がダメということではないのです。
それから設置する高さ・位置にも注意が必要です。
「人が見上げるくらいの高さ」「天井より少し低いところ」「神棚の下を人が通る場所は避ける」「静寂で光の差すところ」などに設置するのが望ましいと考えられています。
場所選びとしては、トイレや人通りの激しい玄関などは避け、天井に近く、床から大体2mくらいの位置が最適です。
目安としてはお供え物を取り替えるときに手を伸ばして届く高さにすることです。
【神棚の向きはオフィスでも同じでいいのか?】
お店やオフィスに設置するときも方角や位置・高さなどは一般家庭のときと同様で構いません。
また多くの会社では、社員・従業員さんなどの「座る場所」が神棚に背を向けた位置になっていないかという点を懸念してたまに社長室に神棚を置いている会社も見かけますが、できれば社員全員、より多くの人の目につくメインオフィスに設置したほうがお参りしやすくなります。
また、テナントの1階にオフィスを構えている場合や神棚がある階の上にもオフィスが入っている場合などにはプラスするものがあります。
それは神棚の上に「雲」と書いた紙を貼り付けておくことです。こうすると「ここが最も高い場所で、この上に人が歩いたりすることがないですよ」という意味を持たせることができます。
それ以外にも「天」「空」などの文字でも構いません。
この「雲」という字を書く習慣は、2階建ての家や集合住宅が広まったころくらいから
浸透していきました。
一昔前は書道が得意な方にお願いして立派な文字を書いてもらっていたこともあったようです。
しかし、現代ではパソコンでプリントアウトしたものを使うケースも増えています。この文字自体は誰が書いても良いとされていますが、大切なのは「神棚よりも上を(神様の頭上を)歩かせてもらっている」という畏怖の念・感謝の気持ちを持つことです。
誰が書いても良いのですが、ただ達筆な人や社長が書いてしまうというのも面白くありません。
ここは一つ文字を書くことをイベントにして社内での交流を深める機会にしましょう。例えば、書初め大会を催すなどです。
そして、そうした催しの中から会社のイメージに合った文字を選ぶというのも一興といえます。
【お参りの仕方】
神棚の掃除
晴れて神棚の設置が完了したら今度は掃除が必要です。
掃除は週に1回程度ハタキや乾いた白い布などで埃を落としてください。ただし、カビの原因になるので濡れた布の使用は避けるべきです。
また掃除を始めるときと掃除が終了した時には一礼する作法があります。
そして、6月末や12月末には「大祓(おおはらえ)」と言って一年間に溜まった穢れを落とす意味での大掃除が行われます。
特に年末に行われる「大祓」は12月29日と31日は避けて行われます。
これは29日が「二重苦」を連想させ縁起が悪いこと、31日が正月前に1日で飾り付けをする「一夜飾り」になり失礼にあたると考えられているからです。
参拝の仕方
次に大事なのは参拝の仕方です。
年末の掃除は12月25日から28日くらいまでの吉日もしくは30日が適した日となってきます。
それから参拝方法については「二拝二拍手一礼」が基本です。
やり方としては、神棚の前に立ち、まず軽く一礼します。そのあと深く二回お辞儀をし(二拝)、手を二回叩きます(二拍手)。最後にもう一度深くお辞儀をし(一礼)、一歩下がって完了です。
さらに神棚には参拝に最適な日というものがあります。
特に毎月1日と15日は参拝すると強いご利益があるとされていますので、参拝のついでにこれらの日に掃除をすると運気が上昇するかもしれませんね。
【お供え物】
お供え物については、できるだけ国産の「米、酒、塩、水」を用意し、基本的に毎日新しいものに取り替えましょう。
また、「米、酒、塩、水」以外に供える神饌(お餅、お菓子等)は食すこともできますが、塩と水は食すのは避け、庭先や玄関先に撒くようにします。
供え終えたお酒も無理に飲む必要はありません。ですが、米は通常のものと混ぜて食しても問題ないです。
神饌や供えた酒、米などには神様の力が宿るとも言われています。
お供え物を食すことは有難い行為で、体内にエネルギーを取り込むことだと捉えることができます。
それから、本格的な神棚を設置したい場合には「神鏡」や「高坏」、「瓶子」、「皿」、「榊立」、「火立」、「水玉」などの神具を用意してください。
お供えの方法としては、高坏に米、水玉に水、皿に塩、瓶子にお酒をそれぞれ入れて必ずお米が中央にくるようにします。
また瓶子は左右対になるように2つ用意し、奥の両サイドに設置します。このとき水は手前の左側、塩は手前の右側に供えます。
そして万が一神具が古くなり欠けてしまったら、神社に引き取ってもらって新しいものと取り替えてください。
【神棚を設置する理由】
ビジネスと神棚の関連性
一時期、儲かる会社と神棚の関係性について話題になりました。会社や事務所、店舗などに神棚を設置すると、どんなメリットがあるのでしょうか。
神棚は、メインオフィスや社長室に人目につく場所に置かれる事が多いため、取引先などの外部から来社された方も神棚を見る事になります。
神棚が綺麗に保たれているという事は、社長さんや従業員の皆さんがきちんと手入れし、神棚と向き合い、細かいところまできちんと管理が行き届いているという事になります。取引先等、外部の方に好印象を与えられます。
オフィスのパワースポット
また、設置直後は形だけのお参りになるかもしれませんが、会社全体で神棚に向き合う事によって、次第に特別な場所になっていきます。また、このことによって心を落ち着かせる事のできるパワースポットへ変化する可能性を秘めています。
神棚というと、特定の宗教を指すようなイメージを持つ方もいらっしゃると思いますが、神棚を祀り、きちんと向き合う事によって人の道として忘れてはならない事を教えてくれるという存在になります。
【まとめ】
神棚は家庭やオフィスの中で最も神聖な場所です。
しかし、いくら神棚が神聖なものだとしても会社の場合、社員一人一人の信条や信仰している宗教等によって神棚の参拝がNGとなる場合もあります。
設置するのはよいことですが参拝等は強制ではなくあくまで個人の意思を尊重したうえで行うようにすべきです。
そういった点を踏まえた上で神棚を祀れば、社員のモチベーションアップにつながり、会社の業績を上げるのも夢ではないかもしれません。