日本は学歴社会と思いますか?
思ったという方、実は、世界的に見れば日本はそれほど厳しい学歴社会ではありません。
「能力のある人材を採用する」という文化がある欧米などに比べれば、「人材は入社してから育てる」という、やさしい文化が日本にはあるからです。
とはいうものの世間を見渡してみると、大学を出ていないことをいつまでも気にしたり、卒業した大学の名前に対して劣等感をもっているような人が多くいるのも事実です。
つまり、学歴コンプレックスが存在するということです。
今回は、この学歴コンプレックスの克服法をお教えしたいと思います。
学歴コンプレックスとは
学歴コンプレックスの克服法を教える前に、そもそも学歴コンプレックスとは何なのかを説明します。
「劣等感」のことではない
コンプレックスというと、劣等感と同じような意味で使われていますが、正確にはそうではありません。
コンプレックスという用語をメジャーにしたのは、スイスの精神科医ユングです。
ユングによればコンプレックスとは「無意識に抑圧され、感情によって色付けされた心的複合体」とされています。
ただ、日本ではユングの理論よりも「アドラー心理学」でおなじみのアドラーの理論のほうが広く受け入れられたという事情があります。
アドラーは、「劣等コンプレックス」という用語を使って自らの理論を説明していましたが、日本では「劣等」の部分を略して使われることが多かったため、いつの間にか「劣等感」イコール「コンプレックス」となってしまったのです。
このことを踏まえて考えると、日本で使われている「学歴コンプレックス」という言葉は「学歴に対する劣等感」という意味にとらえることができます。
では、そのような学歴コンプレックスを持つ人にはどのような特徴があるのでしょうか?
学歴コンプレックスを持つ人の特徴
まず、一つ目として挙げられるのは、学歴コンプレックスを持つ人は自分の失敗や実力不足を過剰に学歴のせいにしてしまうということです。
それに加えて、学歴コンプレックスを持つ人は、自分だけでなく他の人も学歴で評価しがちです。
そうなると、自分よりも学歴が高い人には嫉妬心や反感を持ってみたり、反対に自分よりも学歴が低い人に対しては、見下したり、馬鹿にしたりして、どちらにしても平和な気持ちで過ごすことができなくなってしまうのです。
また、学歴コンプレックスを持つ人は自分を必要以上に飾ろうとして、ウソをついたり、話を大きくしたりもします。
といっても、これは学歴コンプレックスに限った話ではなく、劣等感を持つ人にはよくあるパターンですね。
学歴コンプレックスの克服法
ネットで「学歴コンプレックス 克服法」と検索すると、さまざまなやり方が出てきますが、今回は、実際に効果があることが科学的な研究によって示されている方法を紹介します。
アクセプタンス・コミットメント・セラピー
紹介するのは、アクセプタンス・コミットメント・セラピー(ACT)を使ったやり方です。
ACTは、新世代の行動療法と呼ばれる心理療法の一つです。
といっても、ACTの理論や、その基礎となっている関係フレーム理論(RFT)と呼ばれる言語行動に関する理論は難解で、プロの公認心理士の人ですら、その理論をきちんと理解できていない人が少なからずいるくらいです。
ですから、ここでは理論を説明するのではなく、科学的な基盤を持ち効果が実証されているACTの枠組み、考え方を利用した方法をお教えします。
アクセプタンス
アクセプタンスとは、「受け入れる」ということです。
受け入れるというのは、我慢するとか妥協するとかいうことではありません。
否定しないということです。
つまり、学歴コンプレックスを否定して、それと戦ったり、何とかしようとしたりせず、そのままに放っておくということです。
学歴コンプレックスに限らず、人間の苦悩というのは、それを何とかしようともがけばもがくほど、考えれば考えるほど、余計に大きくなっていくのです。
だからあえていいます。
学歴コンプレックスがあっても、それを何とかする必要はありません。
問題にしないこと、それ以上考えないことです。
コミットメント
あなたは今、自分の生きたい人生を生きることができていますか?
学歴コンプレックスを抱えていると、自分を必要以上によく見せようとしたり、他者を見上げたり見下したりで忙しいです。
また、何でも学歴のせいにしがちで、どうすれば自分を向上させていくことができるかなど考えることもないでしょうから、とても生きたいように生きることなどできません。
そこで、大事になってくるのがコミットメントです。
では、何にコミットメントするのでしょうか?
自分が大切に感じること、つまり「価値」です。
ACTでは、自分が生きていく方向を示すものとしての価値を大切にします。
自分自身と向き合って価値を明確に言葉化し、それに沿った行動を起こしていくのです。
もし、言葉化するのが難しければ、自分の死後、自らの葬式を上から見ている場面を想像してみてください。
そのとき、参列している親しい人々に、あなたが生前どのような人だったといってほしいですか?
誰かほかの人に見せるわけではありませんから、本音で考えてみてください。
その中に、あなたが大切にしている価値のヒントが含まれているはずです。
価値が明確になったら、それに沿った行動を起こしていきましょう。
できれば、価値も、できた行動もノートなどに書き出して「見える化」しておくとかなり効果的です。
自尊心を向上させる
自尊心を向上させることができればさらに効果を得られます。
ただし、「自分は○○ができるから優秀だ」とか「自分はあいつより年収が高いからえらい」などというように「条件付きのもの」や「比較に基づいたもの」は「ナルシズム」とでもいうべきものであり、
そのような自尊心を持っていたとしてもコンプレックスを強めてしまうだけです。
本当の自尊心とは、いいところも悪いところも含めて、ありのままの自分を受け入れるということです。
といっても、「今のままでいい」と成長をあきらめることではありません。
むしろ、ありのままの自分を受け入れることによって、自分をさらに成長させていくことができるのです。
なお、自尊心を向上させるには、
「どんな些細なことでも自分ができたことを評価する」
「自分をほめる」
「どんな感情が出てきても自分を許す、承認する」
といった方法が有効です。
特に、「自分ができたことを評価する」というのは、コミットメントとの関係でも非常に大切ですので、どんな些細なことでも肯定的にとらえるようにしてください。
また、これに関しても頭の中だけでやるのではなく、ノートなどに書き出す方がはるかに効果的ですので、ぜひ手を動かしてください。
最後に
学歴コンプレックスが解消すれば、「本当になりたい自分」になれるのでしょうか?
そもそも、あなたが本当になりたいのは、どのような自分なのでしょうか?
それをはっきりさせることは、価値を明確にすることにもつながります。
そして、その答えはあなたの中にあります。
外側をいくら探しても見つかりませんし、他の人に聞いても分かりません。
自分で自分に向かい合うしか方法はないのです。
学歴コンプレックスと戦わず、あなたが大切にする価値に沿った行動を継続的に起こしていくことができれば、学歴コンプレックスなど自然に消えてしまっているはずです。
いつまでも学歴コンプレックスを気にし、卑屈になったり、自分を飾ったりすることに一生懸命になる人生と、
学歴コンプレックスがあってもそれと戦わず放っておき、自分の大切に感じる価値に沿った行動を次から次へと実践していく人生。
どちらが有意義な人生といえるのかは、考えなくても分かりますよね。
選ぶのは、あなたです。
コンプレックスを解消し、あなたを幸せにできるのは、あなただけなのです。