「顧客に自分の商品やサービスの価値をわかりやすく伝えたい!」といった願いを持つマーケター、広告担当者は数多くいるのではないでしょうか。
今回はそんなあなたに、顧客への訴求力に定評のあるUSP(Unique Selling Proposition)について、用語の意味、使用するメリット、代表的な事例などをご紹介します。
USPを使いこなすことで、他のマーケター。広告担当者に差をつけることができるかも!
USPとは何か?
USPの用語説明
USPとはマーケティング用語の一種で、「Unique Selling Proposition」の略称です。
簡単に説明すると「消費者に対する独自の強力の提案」ですね。日本では一般的に自社サービス・商品の差別化を目的として用いられます。
USPと似たような意味合いで用いられる用語に
「キャッチコピー」
「ブランドプロミス」
「マーケティング・コンセプト」
「POD(Point of difference)」
などがあり、マーケティングに携わっている人であれば一度は耳にしたことがある用語でしょう。
それぞれ定義は微妙に違うのですが、大雑把にまとめると上述したとおり「この商品・サービスにはこういった独自の強みがあるので買いませんか?」といった提案ということになります。
USPの背景・歴史
USPが大事とされる理由の一つが「市場の商品・サービスの均質化」。
昨今どの企業も設備投資、商品開発に力を入れている上、似たような商品・サービスが生まれています。
顧客に選んでもらうには商品・サービスだけでなく「なぜこの商品・サービスを買うのか?」を理解してもらえないと購入に至りません。
そこで「この商品・サービスにはこういった独自の強みがあるので買いませんか?」といった提案、つまりUSPが必要となるのです。
USPが誕生したのは今から50年ほど前。アメリカの広告の巨匠、ロッサー・リーブスというコピーライターが提唱しました。
彼は1940年代に成功した広告を徹底的に分析し「ある共通点」を発見。それを『USP ユニーク・セリング・プロポジション』という著書にまとめました。
その後広告・マーケティングの権威として知られているダン・ケネディやジェイ・エイブラハムらの手によって業界へと広がっていきました。
成功するために欠かせないUSPの3条件
ロッサー・リーブスは優れたUSPとしての三つの条件を述べています。
1,消費者に対しての提案
単なる言葉や宣伝文句ではなく、「この商品・サービスを購入すればこういったメリットがありますよ」といった提案でなければならない。
2,独自のものである
競合他社が同じような提案をできない、しないもので差別化がなされていなければならない。
3,強力・強烈な提案
大衆(マス)を動かせるほどの強力で強烈なものでなくてはならない。
以上の条件から、USPは大規模な広告マーケティング(マス向け)を想定していることがわかります。
大衆に向けた、差別化の図られた、訴求力のある強力な提案。この三つが優れたUSPをつくる際の最低条件なのです。
メリット盛りだくさんのUSPとは?
差別化を図ることができる
リーブスの挙げたUSP三つの条件の一つ、「独自のものである」がこれにあたります。顧客が競合他社の商品と比較する際、どこがどう優れているのかをアピールできるので、購買の意思決定の際に優位に立つことができます。
大衆に向けてインパクのあるメッセージを打てる
三つの条件のうち「強力・強烈な提案」を満たすことで得られるメリット。マスメディア(テレビ・新聞)を用いて、より多くの大衆に対して訴求力のある提案型メッセージを打つことができます。
商品やサービスの強みを端的に伝えられる
優れたUSPの条件「消費者に対しての提案」であるためには、USPがわかりやすい提案の形である必要があります。くどくどと説明するのではなく、端的に強みを伝えることで顧客の印象に残る提案となるでしょう。
実際に使われているUSPとは?
【ダイソン】「吸引力が変わらない、ただ一つの掃除機」
USP:吸引力が変わらない、ただ一つの掃除機
解説:言わずと知れたダイソンの掃除機のUSP。「吸引力が変わらない」で自社商品の強みをアピールし、「ただ一つ」のフレーズを用いることで競合他社には無いといったメッセージを打ち出すことに成功しています。
また、大衆のニーズとして「長く使っても機能が落ちない掃除機が欲しい」といった部分もカバーできており、優れたUSPの三つの条件すべてを網羅している典型的なUSPと言えるでしょう。
【M&M’s】「お口でとろけて、手でとけない」
USP:お口でとろけて、手でとけない
解説:こちらは顧客ターゲットを親に設定。「子供がチョコレートを食べる際に服が汚れてしまう」といった悩みを持つ子供の親に対して「手でとけない」という商品の強みをアピール。
また「お口でとろけて」のフレーズを用いることでチョコレートの美味しさもアピールしています。
【ニトリ】「お、ねだん以上。」
USP:お、ねだん以上。
解説:大衆の「良いものを安く買いたい」といったニーズに対して強力な訴求力を持つUSP。
品質はもちろんのこと、それらが安く買えますよといった点は多くの顧客に対して「お得感」を抱かせることができます。
価格競争において優位なポジションをとることができる大企業ならではのUSPと言えるでしょう。
実践で取り入れやすいUSPとは?
まずは自社の商品・サービスの強みを洗い出す
優れたUSPをつくる際には、まず自社商品・サービスの強み(社内シーズ)を洗い出す必要があります。
万全を期すのであれば、まずはマーケティングの基本フレームである「3C」を用い、市場調査を行うところから始めるといいでしょう。
・ 自社(Company):自社の経営理念、設立背景、技術力や人材力、製品ラインアップといった社内シーズ。
・ 顧客(Customer):既存客、見込み客、今後の顧客といったターゲット。
・ 競合他社(Competitor):同業種、関連業種といったシェアをとる際に競う可能性のある他社。
以上を整理することにより、市場における自社商品・サービスの位置付けがわかります。
次に自社商品・サービスの強みを洗い出します。以下の評価基準で強みを挙げていきます。
・ 価格
競合他社と比べて、自社の商品・サービスの価格優位性があるか。
・ 品質の高さ
競合他社と比べてクオリティの高い商品・サービスを提供できているか。
・ スピードの速さ
納期の短さ、納品の速さといった点で競合他社と比べて優位に立てているか。
・ ラインナップの豊富さ
競合他社と比べて、顧客ニーズを母広く満たすことのできる商品・サービスを取り揃えられているか。
・ UI/UXのデザイン
競合他社と比べて、自社商・サービスの利便性が高いか。
・ ブランド力
競合他社と比べて、知名度・信頼度の高い企業と言えるか。
市場と親和性のあるUSPをつくる
優れたUSPの条件である「強力・強烈な提案」のためには、ユニークでありながらも市場に受け入れられやすい提案が必要になります。
尖り過ぎるとニッチに特化し大衆への訴求力が欠けてしまいますし、ありふれたものだと競合他社の商品・サービスと差別化がうまく図れません。
大衆のニーズをしっかりとおさえつつ、自社商品・サービスの特色を打ち出しましょう。また、KPIをしっかりと把握しながら実行に移すのがポイントとなります。そこで、KPIに関して下記のページで解説いていますので、参考にしてください。
USPは「オリジナル」にこだわる必要はない
USPはオリジナルでなければならないといったことはありません。今まであった商品・サービス市場で後発として参入しても成功しているケースは多くあります。
例えば消臭除菌スプレーのファブリーズですが、似たような商品は世の中にたくさん生まれています。その中でも先にUSPを打ち出すことで優位に立てるといったこともあるのです。
まとめ
ロッサー・リーブスが提唱したUSP。誕生から50年近く経っていますが、今なお注目を浴び続けているのはUSPが本質をついているからではないでしょうか。
昨今ビジネス書や新書などで新しいフレームワークや思考ツールが世の中にたくさん生まれていますが、こういった本質をついたノウハウを学ぶことで見えてくる部分もあります。
是非この機会に取り組んでみて下さい。