
不動産投資で融資を使っていると、購入から数年は、税金が少なく、手元のお金も安定して見えます。ところが、減価償却が終わる頃から、「黒字なのに、税金の支払いで、手元のお金が足りない」という状態が起こることがあります。これが「デッドクロス」です。この記事では、デッドクロスの仕組みを、数字の例で確認し、起こる前に打てる対策を整理します。

デッドクロスとは?起こる仕組み
不動産所得(課税される利益)と、実際に手元に残るお金(キャッシュフロー)は、次のように計算が異なります。
| 計算式 | ポイント | |
|---|---|---|
| 課税される所得 | 家賃収入 − 運営経費 − 利息 − 減価償却費 | 減価償却費は、経費になるが、現金は出ていかない |
| 手元に残るお金(税引前) | 家賃収入 − 運営経費 − 元利返済額(利息+元本) | 元本返済は、現金は出るが、経費にならない |
この2つの差は、「減価償却費 − 元本返済額」です。減価償却費が元本返済額より大きいうちは、手元のお金より、課税所得が小さくなり、税負担が軽く感じられます。減価償却が終わり、減価償却費がゼロになると、逆転して、手元のお金より、課税所得のほうが大きくなります。この逆転が、デッドクロスです。
数字で見る:償却終了前後の違い
築古の木造アパートを、簡便法の4年で償却するケースの例です(仮の数字)。家賃収入600万円、運営経費120万円、年間の元利返済額300万円(うち利息100万円、元本200万円)、減価償却費は4年間、年250万円とします。
| 項目 | 1〜4年目 | 5年目以降(償却終了) |
|---|---|---|
| 家賃収入 − 運営経費 | 480万円 | 480万円 |
| 利息 | ▲100万円 | ▲約95万円 |
| 減価償却費 | ▲250万円 | 0円 |
| 課税される所得 | 約130万円 | 約385万円 |
| 手元に残るお金(税引前) | 約180万円(480万円−300万円) | 約180万円 |
| 税金(限界税率33%の場合) | 約43万円 | 約127万円 |
| 税金を払った後の手残り | 約137万円 | 約53万円 |
同じ物件なのに、償却終了後は、税金が約84万円増え、手残りが大きく減ります。他の所得が多く、限界税率が43%になる場合は、税金は約166万円となり、手残りは、ほとんど残りません。

デッドクロスへの主な対策
| 対策 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 償却終了前の売却を検討する | 課税所得が大きくなる前に、売却や入れ替えを検討する | 売却時の譲渡所得税・諸費用を、手取りで比較する(不動産売却の税金) |
| 追加の物件購入 | 新たな物件の減価償却費で、課税所得を調整する | 借入が増える。返済の安全度を確認する(返済比率とDSCR) |
| 法人化 | 所得が大きい場合に、税率の差で、負担を調整する | 設立・維持のコストがかかる(法人と個人どちらが有利?) |
| 融資期間の見直し | 元本返済額を抑え、課税所得との差を縮める | 総利息が増える。借り換えの費用も考慮(借り換え) |
| 納税資金の積立 | 償却終了後の税負担を、見越して、資金を積み立てておく | 予備資金とは、別に管理する |
デッドクロスを事前に見つける手順
よくある質問
Q. デッドクロスは、必ず起こりますか?
A. 減価償却費が元本返済額を下回る状況になれば起こります。築古の木造を短期間で償却する場合は、早く訪れやすく、築浅のRC造などは、償却期間が長いため、遅く訪れる傾向があります。
Q. 節税のために、償却の大きい物件を買うのは、有効ですか?
A. 短期的には、課税所得を圧縮できますが、償却終了後の税負担や、売却時の税金、融資の評価への影響も、あわせて考える必要があります。
まとめ
デッドクロスは、減価償却費が元本返済額を下回り、課税所得が手元に残るお金を上回る状態です。償却終了後は、税金の支払いで資金が不足するおそれがあります。償却の終了時期を確認し、10年程度の課税所得と手残りの表を作って、売却・追加購入・法人化・融資期間の見直し・納税資金の積立を、早めに検討しましょう。
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、特定の投資・融資・税務上の判断を勧めるものではありません。制度や数値は記事作成時点の一般的な内容です。個別の判断は、金融機関・税理士などの専門家にご確認ください。
最終更新:2026年10月
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