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IRR・CCR・NPVの使い分け|保有期間で変わる不動産投資の収益率

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IRR・CCR・NPVの使い分け

不動産投資の収益率には、利回り、CCR、IRR、NPVなど、似た名前の指標がいくつもあります。どれも「儲かっているか」を表しますが、見ている範囲が違うため、同じ物件でも数字が大きく変わります。特に、物件を何年保有するかによって、評価がまったく違って見える点は、見落とされがちです。この記事では、CCR、IRR、NPVそれぞれが何を測る指標なのかを、同じ仮の物件を使って計算しながら整理し、保有期間で結果がどう変わるか、どの場面でどの指標を使うかをまとめます。

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電卓を使って収支を計算する様子

三つの指標は「見ている範囲」が違う

まず、三つの指標の違いを表にまとめます。

指標 正式名称 何を測るか 売却を含むか 時間の扱い
CCR 自己資金配当率(キャッシュ・オン・キャッシュ・リターン) 1年間の手取りのキャッシュフローが、自己資金の何%か 含まない 1年分だけを見る
IRR 内部収益率 購入から売却までの自己資金の出入り全体を、年利に換算した率 含む 出入りの時期を反映する
NPV 正味現在価値 将来の手取りを割引率で現在の価値に直し、自己資金を引いた金額 含む 割引率で現在の価値に直す

CCRは「保有中の手取りが、投入した自己資金に対して何%か」を見る指標で、売却は考えません。IRRとNPVは、売却による収入までを含めて、購入から売却までの全体を評価します。IRRは「率」、NPVは「金額」で答えが出る点も違います。

評価の基準を示す公的な資料として、国土交通省の不動産鑑定評価基準があります。その収益還元法の章では、収益価格を求める方法として、一期間の純収益を還元利回りによって還元する方法(直接還元法)と、連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計する方法(DCF法)が示されています。復帰価格とは、保有期間の満了時点における対象不動産の価格のことです。この記事でNPVを計算する考え方は、DCF法と同じです。

計算に使う仮の物件と前提

以下の計算は、すべて、次の仮の前提に基づく説明用の例です。実際の物件の数字ではありません。

項目 仮の前提
購入価格 5,000万円
購入時の諸費用 400万円
借入 4,000万円(金利2.0%、返済期間25年、元利均等返済)
自己資金 1,400万円(購入価格+諸費用−借入)
年間の純収益(NOI) 420万円(毎年一定と仮定)
年間の元利返済額 約203万円(月々約16万9,542円)
売却時の価格 売却時点の次の年のNOIを出口キャップレート8%で割った額(5,250万円)
売却費用 売却価格の3%と仮定
税金 考慮しない(税引前)

購入時のNOI利回りは、420万円÷5,000万円=8.4%です。出口キャップレートを8%と置くため、売却価格は5,250万円となり、購入価格より高くなります。この前提は、築年数が進むと価格が下がりやすい現実より、やや強気であることに注意してください。後の章で、前提を変えて試算します。

CCR:保有中の手取りを自己資金で割る

CCRは、年間の税引前キャッシュフロー(NOIから元利返済額を引いた額)を、自己資金で割って求めます。

  • 年間の税引前キャッシュフロー:420万円−約203万円=約217万円
  • CCR:約217万円÷1,400万円=約15.5%

返済の余裕を示すDSCR(債務返済余裕率)は、420万円÷約203万円=約2.06です。CCRとDSCRはともに、保有中の資金繰りを見る指標です。

CCRの特徴と限界を押さえておきます。

  • 売却を含まない:出口で値下がりしても、CCRには表れません
  • 元本の返済が「支出」として扱われる:元利返済額のうち元本の部分は、実際には借入金が減って資産が増えている部分です。この例では、1年目の返済額約203万円のうち、元本は約125万円、利息は約79万円です。元本の返済分を加えて見る場合、1年目の(キャッシュフロー+元本返済)÷自己資金は、約24.4%になります
  • 1年分の数字:空室の増減や、大規模な修繕の年によって、大きく変動します
  • 自己資金の回収の目安:自己資金1,400万円÷年間の手取り約217万円=約6.5年で、売却を考えない場合に、手取りだけで自己資金が戻る計算です

IRR:売却まで含めた年あたりの収益率

IRRは、購入時に払う自己資金(マイナス)と、毎年の手取り、売却時の手取り(プラス)を、並べたときに、現在価値の合計がちょうどゼロになる割引率です。簡単に言えば、「この投資の自己資金は、年あたり何%で増えたか」を表します。

売却時の手取りは、売却価格から売却費用と、その時点の借入の残高を引いた額です。例の物件で、5年後に売却する場合は、5,250万円×(1−3%)−借入残高約3,351万円=約1,741万円になります。キャッシュフローを並べると、次のとおりです。

  • 購入時:−1,400万円
  • 1〜5年目:毎年+約217万円
  • 5年目の売却による手取り:+約1,741万円(5年目の手取りに加える)

このキャッシュフローから求めたIRRは、約18.8%です。手計算で求めるのは大変ですが、表計算ソフトのIRR関数に、0期から5期までの金額を並べて渡せば、すぐに求められます。保有期間を変えると、次のようになります。

保有する期間 売却を除く手取りの累計 売却時の手取り IRR NPV(割引率8%)
1年 約217万円 約1,217万円 約2.4% 約−73万円
3年 約650万円 約1,474万円 約17.0% 約328万円
5年 約1,083万円 約1,741万円 約18.8% 約650万円
7年 約1,516万円 約2,019万円 約19.0% 約906万円
10年 約2,165万円 約2,458万円 約18.6% 約1,192万円
15年 約3,248万円 約3,250万円 約17.7% 約1,478万円
20年 約4,331万円 約4,125万円 約17.0% 約1,611万円

保有1年だけだと、売却費用の負担が重く、IRRは約2.4%です。3年で約17.0%、7年で約19.0%と最大になり、その後は少しずつ下がります。

借入を使った場合と、使わない場合のIRRの違い

同じ物件を、借入なし(5,400万円をすべて自己資金で払う)で買った場合のIRRも計算してみます。毎年のNOIは420万円、売却価格は5,250万円(売却費用3%)とします。5年保有で約6.8%、10年保有で約7.4%です。借入を使った場合の約18.8%、約18.6%と比べると、大きな差があります。

これは、物件の収益率(購入価格に対するNOI利回り約8.4%)が、借入金利(2.0%)を上回っているため、借入を使うことで自己資金に対する収益率が引き上げられているためです。反対に、空室の増加や出口の価格の下落で、物件全体の収益率が借入金利を下回れば、借入を使った場合のほうが、収益率は低くなります。借入を使った場合の数字が良く見えるのは、レバレッジによるリスクも同時に大きくなっているためです。この点は、別の記事で整理しています。

なぜIRRは頭打ちになるのか

保有を1年延ばすかどうかは、「今売って現金にする」か「もう1年持つ」かの比較です。もう1年持つと、1年分の手取りと、1年分の元本の返済(借入が減る分)が得られます。この追加の1年が、現時点の売却手取りに対して、何%の収益になるかを計算すると、次のようになります。

  • 5年目から6年目:約20.4%
  • 7年目から8年目:約17.8%
  • 10年目から11年目:約15.0%
  • 14年目から15年目:約12.4%

追加の1年で得られる収益率が、それまでのIRRを上回る間は、保有を延ばすとIRRは上がります。下回り始めると、IRRは下がります。この例では、7年目あたりが境目です。保有が長くなると、売却価格が一定の前提では、追加の1年は「同じ手取りを、徐々に大きくなる売却手取りで割る」ことになり、率が下がっていきます。

NPV:割引率を置いて、金額で判断する

NPVは、将来の手取りを、割引率で現在の価値に直し、投入した自己資金を引いた金額です。NPVがプラスなら、置いた割引率を上回る収益が見込めると読みます。割引率は、「自己資金に対して最低限これだけは欲しい」という期待の利回りで決めます。

不動産鑑定評価基準は、割引率について、DCF法で、ある将来時点の収益を現在時点の価値に割り戻す際に使用される率とし、求める方法の例として、類似の不動産の取引事例との比較、借入金と自己資金に係る割引率の加重平均、金融資産の利回りに不動産の個別性(投資対象としての危険性、非流動性、管理の困難性など)を加味する方法を挙げています。

上の例では、割引率を8%としたNPVを表に示しました。NPVは、保有期間が長くなるほど大きくなる傾向があります(20年で約1,611万円)。IRRは7年で最大でしたが、NPVは、追加の1年の収益率が割引率の8%を上回っている間は増え続けます。この例では、保有25年までNPVは増え続けます。

割引率を変えると、NPVは次のように動きます。

保有する期間 割引率6% 割引率8% 割引率10%
5年 約813万円 約650万円 約502万円
10年 約1,566万円 約1,192万円 約878万円
20年 約2,370万円 約1,611万円 約1,057万円

割引率が高いほど、将来の手取りが小さく評価されるため、NPVは小さくなります。長く持つほど、割引率の影響が大きく出ます。

割引率の考え方には、二つの見方があります。借入を除いた物件全体のキャッシュフローを評価するなら、借入金と自己資金の構成割合で加重平均した率を使います。仮に、自己資金に10%、借入金に2%を求めるとして、構成割合が自己資金26%・借入金74%なら、加重平均は約4.1%です。この記事の計算のように、借入の返済を差し引いた自己資金のキャッシュフローを評価するなら、自己資金に求める期待利回りをそのまま使います。どちらのキャッシュフローを評価しているのかを、揃えることが大切です。

IRRとNPVで、結論が割れるとき

IRRは「率」、NPVは「金額」なので、複数の案を比べると、順位が入れ替わることがあります。

仮の例として、5年後に一括で回収する次の二つの案を、割引率8%で比べます。

案 自己資金 IRR 5年後の回収額 NPV(割引率8%)
案X 500万円 25% 約1,526万円 約539万円
案Y 3,000万円 15% 約6,034万円 約1,107万円

IRRはXのほうが高く、NPVはYのほうが大きくなります。どちらが良いかは、手元の自己資金の使い道で決まります。自己資金が限られていて、案Xに使った後に、残りの資金で他の投資ができるなら、案Xの選択肢も有力です。一方、自己資金を遊ばせてしまうなら、案Yのほうが、最終的に増える金額は大きくなります。

IRRが高くても、投入できる金額が小さいと、資産全体に与える影響は限られます。逆に、IRRが平凡でも、大きな金額を運用できるなら、増える額は大きくなります。「率」と「金額」の両方を見ることが、判断の精度を上げます。

前提を変えると、結果は大きく動く

ここまでの計算は、NOIが毎年一定で、出口キャップレートが購入時より低い(価格が上がる)という、比較的強気な前提でした。前提を変えて、結果を試算します。

前提 5年 10年 15年
A:NOI一定・出口キャップレート8% IRR約18.8%・NPV約650万円 IRR約18.6%・NPV約1,192万円 IRR約17.7%・NPV約1,478万円
B:NOI一定・出口キャップレート9% IRR約13.0%・NPV約264万円 IRR約17.0%・NPV約929万円 IRR約17.1%・NPV約1,300万円
C:NOIが毎年1%低下・出口キャップレート8% IRR約15.9%・NPV約449万円 IRR約16.4%・NPV約860万円 IRR約15.8%・NPV約1,060万円
D:NOIが毎年1%低下・出口キャップレート9% IRR約9.7%・NPV約83万円 IRR約14.7%・NPV約623万円 IRR約15.1%・NPV約906万円

前提Aと前提Dでは、5年保有のIRRが約18.8%と約9.7%で、約2倍の差があります。売却までの期間が短いほど、出口の価格の前提が結果を大きく左右します。保有期間が長いほど、毎年の手取りの比重が大きくなり、出口の前提の影響は小さくなります。出口キャップレートの考え方は、別の記事で整理しています。

また、前提Dでは、IRRが15年まで上昇し続けています。出口の価格が低い前提では、早く売るよりも長く持ったほうがIRRが高い、という結果になっています。保有期間の最適な長さは、前提によって変わるため、1つの前提だけで判断しない姿勢が重要です。

目的別の使い分けと、実際の進め方

三つの指標を、目的別に使い分けるとおおむね次のようになります。

知りたいこと 使う指標 理由
保有中の資金繰りに余裕があるか CCR、DSCR 毎年の手取りと返済の関係を見る
売却まで含めた全体の収益率を、物件間・期間間で比べたい IRR 率で比較しやすい
自己資金の期待利回りを上回るか、金額でどれだけ増えるか NPV 基準を上回る分を金額で判断できる
融資を受けるときの返済の余裕 DSCR(金融機関が見る指標) 返済額に対するNOIの倍率

実際に使うときの手順は、次のとおりです。

  1. 物件のNOI、購入価格、諸費用、借入条件から、年間の元利返済額と、自己資金を確定する
  2. 保有期間の候補(たとえば5年、10年、15年)を決める
  3. 出口キャップレート、NOIの推移(家賃下落や費用の増加)を、複数の前提で置く
  4. 毎年の手取りと、売却時の手取りを並べ、IRRとNPVを計算する
  5. 大規模修繕の時期、金利の見直し、空室の増加を織り込み、再度計算する
  6. 税金(所得税または法人税、売却時の税金)を加えて、税引き後の数字でも確認する

計算するときの注意点

  • 表計算ソフトのNPV関数の使い方:一般的な表計算ソフトのNPV関数は、最初に指定した金額を「1期後」の金額として割り引きます。購入時の自己資金(0期)は、関数の外で、そのままの金額で加える必要があります。IRR関数は、0期から並べた全体を渡します。入出金の時期が不規則な場合は、日付を指定できる関数(XIRRなど)を使います
  • IRRは、途中の手取りを同じ率で再投資できる前提を含んでいる:IRRが約19%と出ても、毎年の手取りを約19%で運用できるとは限りません。高いIRRを、そのまま実現できる収益率と受け取らないようにします
  • キャッシュフローの符号が何度も変わるとき:大規模修繕で、途中でマイナスの年があると、IRRが複数出る、または計算できないことがあります。NPVで確認します
  • 税引前と税引後:この記事の例は税引前です。実際には、所得税や法人税、売却時の譲渡所得にかかる税金によって、数字は下がります。税金の影響は、個別の事情によって異なるため、税理士に確認してください
  • 自己資金に何を含めるか:諸費用や、入居までの空室期間の費用、修繕の積立などを含めて、実際に出ていく金額で置きます
  • 前提を一つの数字に固定しない:出口キャップレート、家賃、金利を動かして、最悪の場合でも自己資金が残るかを確認します

よくある質問

Q. IRRは何%あれば良い投資と言えますか。

A. 一律の合格ラインはありません。他の運用手段の期待利回り、借入の金利、投資に伴うリスク(空室、修繕、金利の上昇、出口の価格の下落)を踏まえて、自分で基準を決めます。借入金利を大きく上回っているか、前提を悪くしたときもプラスが残るか、という見方が有用です。

Q. CCRが高ければ、良い物件ですか。

A. CCRが高くても、売却時に大きく値下がりすれば、全体では損になります。CCRは保有中の手取りを見る指標なので、出口の価格を含めたIRRやNPVとあわせて見る必要があります。築年数が古く、利回りが高いが、将来の価格が大きく下がる物件ほど、この違いが出やすくなります。

Q. 保有期間は、IRRが最大になる年に合わせて売るべきですか。

A. IRRが最大になる年が、最適とは限りません。売却すると、その手取りを、同じ水準の収益率で再投資できるかが問題になります。売却後に、同じ程度の収益率の投資先を見つけられるなら、IRRが最大の時期に売る意味があります。見つけられないなら、NPVが大きくなる長い保有も選択肢です。また、売却には費用と税金がかかります。

Q. 表計算ソフトのIRRとNPVの数字が合いません。

A. 割引率や、期の数え方が違っている可能性があります。NPV関数は最初の金額を1期後として扱うため、購入時の自己資金を関数の外で加えているか確認してください。年の途中に入出金がある場合は、XIRRなど日付を指定する関数を使います。

Q. 割引率は何%に置けばよいですか。

A. 自己資金に対して求める期待利回りで置きます。他の運用手段の利回り、借入の金利、物件のリスク(空室、流動性の低さなど)を踏まえて決めます。複数の割引率(たとえば6%、8%、10%)で計算し、結果がどの程度動くかを見ておくと、判断の幅が分かります。

まとめ

CCR、IRR、NPVは、同じ物件でも見ている範囲が違うため、目的に応じて使い分けます。要点は次のとおりです。

  • CCRは、1年間の手取りが自己資金の何%かを見る。売却は含まず、保有中の資金繰りの確認に向く
  • IRRは、購入から売却までの自己資金の出入りを、年利に換算した率。保有期間によって変わり、この例では7年あたりで最大になった
  • NPVは、割引率を置いて将来の手取りを現在の価値に直し、金額で判断する。保有期間が長いほど大きくなりやすい
  • IRRとNPVで順位が逆転することがある。率と金額の両方を見る
  • 出口キャップレートとNOIの推移の前提で、結果は大きく動く。複数の前提で試算する
  • 税金、修繕の時期、金利の変動も加えて確認する

収益率の計算は、前提を置いた試算であり、将来の成果を保証するものではありません。税制や融資の制度は改正や運用で変わることがあるため、個別の判断は、金融機関、税理士などの専門家に確認してください。

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※本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、特定の投資・融資・税務上の判断を勧めるものではありません。制度や数値は記事作成時点の一般的な内容です。個別の判断は、金融機関・税理士などの専門家にご確認ください。

最終更新:2026年10月

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