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担保解除と担保の入れ替え|共同担保の物件を売却するときの交渉ポイント

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担保解除と担保の入れ替え

複数の物件をまとめて担保に入れている融資では、そのうち1物件だけを売却しようとしても、金融機関が担保を外してくれなければ、売買の決済ができません。担保の解除や入れ替えは、売買契約を結んでから慌てて交渉するのでは遅く、売却の検討を始める段階で、解除の条件と必要な資金を把握しておく必要があります。この記事では、共同担保の仕組み、解除の方法、金融機関が見る数字、交渉の進め方、決済までの流れを、数字の例で整理します。

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書類を確認する様子

共同担保とは何か:なぜ売却のときに問題になるのか

共同担保とは、1つの融資(債権)を担保するために、複数の不動産に抵当権(または根抵当権)を設定している状態です。たとえば、物件Aを買うときに、既に持っている物件Bも担保に入れて、融資を受けた場合などに生じます。登記簿には、それぞれの不動産に抵当権の登記がされ、共同担保目録で、同じ債権を担保する不動産が一覧になっています。

民法第392条は、同一の債権の担保として数個の不動産に抵当権がある場合の、代価の配当の扱いを定めています。同時に代価を配当するときは、各不動産の価額に応じて債権の負担を按分する。ある不動産の代価だけを配当するときは、抵当権者はその代価から債権全部の弁済を受けることができる、という内容です。つまり、共同担保の物件の1つを売っても、金融機関は、その売却代金から債権の全部を回収する権利を持っています。1物件だけを外して売るには、金融機関が、その物件の抵当権を解除することに同意しなければなりません。

買主から見れば、抵当権が残ったままの不動産は買えません。民法第577条は、買い受けた不動産に契約の内容に適合しない抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、代金の支払いを拒むことができると定めています。決済の時点で、抵当権が抹消されることが、売主の実務上の前提になります。

抵当権と根抵当権の違い

融資の担保には、特定の債権を担保する通常の抵当権のほかに、根抵当権が使われることもあります。民法第398条の2は、根抵当権について、一定の範囲に属する不特定の債権を、極度額の限度で担保するための抵当権と定めています。追加の借入や、複数の融資をまとめて担保できるため、継続的に取引する金融機関では使われることがあります。

項目 抵当権 根抵当権
担保する債権 特定の債権(借入ごと) 一定の範囲の不特定の債権(極度額まで)
金額の基準 債権金額 極度額(担保できる上限)
設定時の登録免許税 債権金額の千分の四 極度額の千分の四
担保物件を外すとき 対象の物件の抵当権を抹消(解除)する 対象の物件の根抵当権を抹消(解除)する。残る物件の極度額や被担保債権の範囲を確認

どちらの形でも、売却する物件を共同担保から外すには、金融機関の解除手続きが必要になります。登記簿や融資契約書で、どちらの形の担保か、極度額はいくらかを、売却の前に確認してください。

担保解除の方法:4つのパターン

方法 内容 必要になること 向いている場面
全額返済して抹消 売却代金などで残債を全額返済し、すべての抵当権を抹消する 残債を全額返せるだけの資金、繰上返済の手数料 担保を整理して、融資を完済したい場合
一部解除(部分的な弁済) 売却する物件の抵当権だけを外す。売却代金の一部または全部を返済に充てる 残る担保の評価が十分であること。弁済額の合意 融資を続けながら、1物件だけ売却したい場合
担保の入れ替え(差替) 売却する物件の代わりに、別の物件や預金などを担保として差し入れる 代替担保の評価、新たな抵当権の設定登記 売却代金を返済に充てず、手元に残したい場合
追加の弁済と条件の変更 弁済のあと、返済額や期間を見直して、残る融資の条件を再設定する 金融機関との協議、条件変更の手続き 返済の負担を調整したい場合

どの方法になるかは、残債の額、残る担保の評価、売却価格、金融機関の方針で決まります。多くの場合は、一部解除として、売却代金のうち一定額を返済に充てることを求められます。

金融機関が見る基準:担保カバー率

金融機関は、担保を解除したあとに残る担保で、残る債権を十分にカバーできるかを確認します。ここでは、解除後に残る担保の評価額を、解除後の残債で割った数字を「担保カバー率」と呼びます。評価額の出し方(積算評価や収益還元評価、掛目の考え方)は金融機関ごとに異なるため、ここでは金融機関の評価額が分かっているものとして考えます。

試算の例(仮)

借入残高が1億2,000万円で、物件A・B・Cの3物件が共同担保になっている場合を考えます。金融機関の担保評価額は、Aが5,000万円、Bが4,000万円、Cが3,500万円で、合計1億2,500万円(担保カバー率は約104%)とします。このうち、物件Aを売却します。

項目 ケース1:5,500万円で売却し、手取りを全額返済 ケース2:評価額相当の5,000万円を返済 ケース3:4,200万円で売却し、手取りを全額返済
売却価格 5,500万円 5,500万円 4,200万円
売却の諸費用(仲介手数料、印紙税、司法書士報酬など) 約194万円 約194万円 約149万円
売却の手取り 約5,306万円 約5,306万円 約4,051万円
金融機関への弁済額 約5,306万円 5,000万円 約4,051万円
解除後の残債 約6,694万円 7,000万円 約7,949万円
残る担保の評価額(B+C) 7,500万円 7,500万円 7,500万円
担保カバー率 約112% 約107% 約94%
手元に残る資金(税金を除く) ほぼなし 約306万円 ほぼなし

ケース1とケース2では、残る担保が残債を上回るため、解除が認められやすい状況です。金融機関の方針によって、売却代金の全額を求められる場合も、評価額相当の弁済で足りる場合もあります。一方、ケース3のように売却価格が下がると、手取り全額を返済しても、残る担保が残債を下回ります。この場合、金融機関は、追加の弁済、代替の担保、または解除の見送りを求めることがあります。

仲介手数料は、国土交通省の告示で上限が定められています(売買価格が400万円を超える場合は、税抜価格の3%+6万円に消費税が目安)。上の試算の数字は、あくまで説明のための仮の例で、実際の弁済額や評価額は、金融機関の判断で変わります。売却の見込み価格は、複数の査定を取り、下振れも想定して確認してください。

「解除価格」という考え方

複数の物件を担保にした融資では、金融機関が、物件ごとに「この物件を外すには、いくら返済してほしい」という弁済額(解除価格)を、あらかじめ決めておくことがあります。この額は、売却価格や物件の評価額と、同じとは限りません。たとえば、売却価格が評価額を上回っていても、残る担保に余力が少ないと判断されれば、売却価格に近い額の弁済を求められることがあります。反対に、残る担保が十分あれば、評価額より低い弁済で足りる場合もあります。解除価格の考え方は、金融機関の方針や融資の契約内容で異なるため、売却を検討する段階で、具体的な数字を聞いておきます。

売却価格が想定を下回ったときの備え

担保解除で最も問題になるのは、売却価格が想定を下回って、残債を十分に減らせないケースです。次のような備えを、売却を決める前に検討します。

  • 売却価格を、複数の査定のうち低めの価格でも、担保カバー率が足りるか試算しておく。
  • 足りない場合の追加の弁済額(ケース3では約449万円)を、手元資金で用意できるか確認する。
  • 代替の担保(他の物件、定期預金など)を差し入れる選択肢があるか、金融機関に聞く。
  • 売却の時期を延ばして、価格が上がるのを待つ選択肢と、金利・保有コストを比べる。
  • 解除が認められなかった場合に、売買契約を解除できる条件を、契約書に入れられるか不動産会社と相談する。

残る融資の条件の見直し

一部を返済して担保を外すと、残る融資の残高が減ります。このとき、返済額を維持して期間を短くする方法と、返済期間を維持して毎月の返済額を軽くする方法があり、どちらを選べるかは金融機関の対応によります。毎月のキャッシュフローを重視するのか、総支払利息を減らしたいのかで、選び方が変わります。繰上返済の判断の仕方は、別の記事(繰上返済と再投資)を参考にしてください。残る物件の収支が、解除後の返済条件で成り立つかも、あわせて試算します。

担保の入れ替え(差替)の中身

売却する物件の抵当権を外す代わりに、別の担保を差し入れる方法です。売却代金を返済に回さず、手元に残したい場合や、売却代金が残債の返済に足りない場合に検討します。代替の担保には、次のようなものがあります。

代替の担保 評価の考え方 手続き・費用
別の不動産(既に所有している物件) 金融機関の評価額。既に他の融資の担保になっている場合は、余力のみ 新たな抵当権の設定登記。登録免許税は債権金額(根抵当権は極度金額)の0.4%
預金(定期預金など) 預金額を基準に評価 質権の設定の手続き。預金は一定期間拘束される
保証人の追加・変更 保証人の資力による 連帯保証契約の締結。経営者保証の考え方は、別の記事で整理

新しい不動産に抵当権を設定する場合、登録免許税は、債権金額の千分の四(登録免許税法 別表第一)です。たとえば、債権金額5,000万円なら20万円、これに司法書士報酬が加わります。差替は、解除と設定を同時に行うため、日程の調整が複雑になりやすく、金融機関の審査にも時間がかかります。売却の決済日から逆算して、早めに相談してください。

交渉のポイント:順序と伝え方

担保解除の交渉は、「売却を決める前」「売買契約の前」「決済の前」の3つの段階で、確認すべき内容が異なります。

段階 確認・交渉する内容 準備する資料
売却を検討する段階 解除に応じる条件(弁済額の考え方、残る担保の評価の基準)、手数料、所要期間 借入の一覧、物件の資料、売却の見込み価格
売買契約の前 具体的な売却価格での弁済額、解除の可否、残る融資の条件の変更 査定書、買主の概要、売却のスケジュール
決済の前 弁済額の最終確認、解除書類の準備、抹消登記の段取り 売買契約書、決済日、司法書士の連絡先

伝え方の基本

  1. 売却の目的を先に説明する(資金の使い道、残る物件の運営計画)。
  2. 売却後の収支と返済の見通しを、数字で示す。
  3. 解除に必要な条件を、聞き取りの段階で書面またはメールで確認する。
  4. 条件が複数ある場合は、最も負担の少ない選択肢と、次善の案を、並べて相談する。
  5. 売買契約を結ぶ前に、解除の方針について、担当者から承諾の見通しを得る。

普段から、返済を遅れず続け、定期的に状況を報告している取引先は、解除の相談でも、話が進めやすくなる傾向があります。日ごろの関係づくりについては、別の記事で整理しています。

売却から決済までの流れと、抵当権の抹消

時期 主な手続き
売却を決める前 借入契約書と担保の設定状況を確認。金融機関に相談
売買契約の約1〜2か月前 査定、売却先の検討。金融機関と弁済額・解除条件の確認
売買契約 契約書に、抵当権等の抹消の時期と、売主の負担を明記
決済日の約1〜2週間前 金融機関に、決済日、弁済額の最終確認。解除書類の準備を依頼
決済日 買主からの代金の入金、金融機関への弁済、解除書類の受領、所有権移転登記と抵当権抹消登記の申請を同日に行う
決済後 金融機関との残りの融資の条件の確認。譲渡所得の確定申告の準備

抵当権の抹消登記を申請するには、一般に、登記識別情報(または登記済証)、「解除証書」や「弁済証書」などの登記原因証明情報、金融機関の会社法人等番号、委任状といった書類が必要です。これらは、抵当権者である金融機関から送付されます(法務省民事局の案内)。登録免許税は、不動産(土地または建物)1個につき1,000円で、土地1個と建物1個なら2,000円です。なお、同時に20個を超える不動産について抹消を受ける場合は、申請1件につき2万円とされています。

売買の決済では、買主からの入金、金融機関への弁済、抹消の書類の受け渡しを、同日に進めるのが一般的です。時間のずれがあると、決済が成り立たないため、金融機関・司法書士・不動産会社の3者で、時刻を含めた段取りを事前に確認してください。抹消登記の手続きは、法務省民事局の案内で一般的な流れを確認できます。

契約書で確認すべき条項

担保解除の交渉の前に、融資契約書(金銭消費貸借契約書)や担保設定契約書で、次の条項を確認しておきます。

  • 担保物件の処分に関する条項:売却、賃貸、担保の変更などに、金融機関の事前の承諾が必要か。
  • 期限の利益喪失の条項:承諾なしに担保物件を売却した場合に、残債の一括返済を求められる規定がないか。
  • 追加担保や担保の差替に関する条項:担保価値が下がった場合に、追加の担保を求められる規定。
  • 繰上返済の条項:繰上返済の手数料、違約金、通知期間(何か月前までに通知が必要か)。
  • 財務制限条項:解除後の収支が、条項に抵触しないか。条項の考え方は、別の記事で整理しています。
  • 共同担保の範囲と、後順位の抵当権の有無:他の金融機関が後順位の抵当権を持っている場合は、調整が必要になることがある。

費用と税金の見積り

項目 内容 目安(仮)
仲介手数料 売却を依頼した不動産会社への報酬 国土交通省告示の上限が目安。5,500万円の売却なら約188万円(税込)
抵当権抹消の登録免許税 不動産1個につき1,000円 土地1個と建物1個なら2,000円
司法書士報酬 所有権移転登記と抹消登記の手続き 数万円程度(依頼先による)
印紙税 売買契約書 契約金額に応じた額(5,500万円なら軽減措置の適用時は3万円)
繰上返済の手数料・違約金 融資契約による 契約書で確認。ない場合もある
譲渡所得の税金 売却益に対して課税 長期譲渡(所有期間が5年超)なら約20.315%、短期なら約39.63%

譲渡所得の税金は、売却益(売却価格から取得費と譲渡費用を引いた額)に対してかかります。たとえば、売却益が800万円(仮)なら、長期譲渡の場合、約163万円です。売却代金から返済に回した後に、納税資金が手元に残らない状況を避けるため、税金の見込み額も、弁済額と一緒に試算しておくことが大切です。長期か短期かは、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで判定されます(国税庁 タックスアンサー No.3208、No.3211で確認)。譲渡費用に含まれる範囲は、個別に異なるため、税理士に確認してください。

よくある失敗

  • 売買契約を結んでから、金融機関に相談する:解除を断られた場合に、売買契約が履行できなくなります。
  • 売却価格だけを見て、担保の余力を確認しない:売却後に残る担保が不足して、追加の弁済を求められます。
  • 納税資金を忘れる:売却代金のほぼ全額を返済に回したあと、譲渡所得の税金が払えなくなります。
  • 決済日と抹消登記の段取りを、直前に確認する:書類の不備で、決済が延期になります。
  • 後順位の抵当権や、他の融資との関係を見落とす:想定外の調整が必要になります。

よくある質問

Q. 売買契約を結んだあとで、金融機関に解除を断られることはありますか。

A. あります。金融機関の同意がなければ、抵当権を外せません。契約前に金融機関へ相談し、解除の条件と、弁済額の見込みを確認してください。売買契約書にも、解除ができなかった場合の扱いを確認しておくと安心です。

Q. 担保を外す物件の分だけ、返済すればよいのですか。

A. 融資の元本を、物件ごとに割り当てているとは限りません。共同担保の場合は、債権全体を、複数の物件で担保しています。解除に必要な弁済額は、売却代金、残る担保の評価、金融機関の方針によって決まります。

Q. 抵当権抹消の費用は、どのくらいかかりますか。

A. 登録免許税は、不動産1個につき1,000円(土地と建物なら2,000円)です。これに、司法書士の報酬がかかります。金融機関の手数料や、繰上返済の違約金が別にかかる場合があります。

Q. 担保の入れ替えは、必ず認められますか。

A. 認められるとは限りません。代替の担保の評価、金融機関の方針、借り手の状況によって判断されます。入れ替えの可否と条件は、事前に金融機関へ確認してください。

Q. 売却益が出ない場合も、弁済は必要ですか。

A. 売却益が出るかどうかと、金融機関への弁済は、別の問題です。担保の解除に必要な弁済は、残債と担保の状況で決まります。売却益に課税されるかは、取得費などによって異なるため、税理士に確認してください。

まとめ

  • 共同担保の物件は、金融機関の同意がなければ、1物件だけを売ることはできません。民法上も、買主は抵当権が残る不動産の代金の支払いを拒むことができます。
  • 解除の方法は、全額返済、一部解除、担保の入れ替え、条件の変更の組み合わせです。金融機関が見るのは、解除後の担保カバー率です。
  • 売却価格が想定を下回ると、担保カバー率が足りなくなり、追加の弁済や代替の担保を求められることがあります。低めの価格でも試算しておきます。
  • 交渉は、売却を決める前から始めます。売買契約の前に、解除の条件を書面で確認します。
  • 費用は、抹消の登録免許税(1個1,000円)のほか、仲介手数料、司法書士報酬、譲渡所得の税金も見込んで、手元に残る資金を試算します。

制度や取り扱いは改正されることがあります。個別の融資契約の内容や、解除の可否は、金融機関・司法書士・税理士に確認してください。

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※本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、特定の投資・融資・税務上の判断を勧めるものではありません。制度や数値は記事作成時点の一般的な内容です。個別の判断は、金融機関・税理士などの専門家にご確認ください。

最終更新:2026年10月

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