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繰上返済と再投資の比較|借入金利と期待利回りで判断する考え方

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繰上返済と再投資の比較

手元に数百万円の余剰資金ができたとき、「借入を繰上返済するべきか、次の物件の自己資金に回すべきか」で迷う方は少なくありません。どちらにも言い分があるため、感覚で決めると後から「あの判断でよかったのか」と引きずりがちです。

この記事では、繰上返済を「借入金利と同じ水準の利回りを得る行為」と置き直し、再投資の期待利回りと並べて比べる方法を、仮の数値例で整理します。あわせて、税引後で見る考え方、手元資金(流動性)の価値、金融機関との契約で確認する点までまとめます。税率や制度は国税庁などの一次情報で確認した内容を記し、確認できない部分は断定しません。

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目次

繰上返済は「借入金利と同じ利回りの運用」と考える

繰上返済で何が起きるかを、いちばん単純な形で言い換えると、「繰上返済した金額に、借入金利と同じ率の利息が付く」ことと同じです。年2.0%で借りているローンに100万円を繰上返済すると、以後その100万円に対して支払うはずだった年2万円の利息が不要になります。これは、年2.0%の運用に100万円を回したのと、お金の流れとしては同じ意味を持ちます。

この見方をすると、判断の軸がはっきりします。

  • 繰上返済の「利回り」は、借入金利(のうち実際に減る部分)で決まる
  • 再投資の「利回り」は、次に買う物件や事業の収益で決まる
  • 両者を、同じ条件(税引前同士、または税引後同士)で比べる

ただし、利回りが高い方を選べばよい、という単純な話ではありません。繰上返済は、契約で決まった利息が減るという性質上、結果のぶれが小さい選択です。一方の再投資は、空室、修繕、売却価格などで結果が大きくぶれます。ぶれの大きさ(リスク)の違いと、手元資金を失うことの影響(流動性)を、利回りとは別に評価する必要があります。

本記事の数値例は、考え方を示すための仮の数字です。実際の金利、手数料、税額は、借入先の契約書、国税庁の案内、税理士などの専門家で確認してください。

判断の軸は「金利差」「流動性」「融資余力」の三つ

繰上返済と再投資を比べるときは、次の三つの軸で整理すると、論点が混ざりません。

判断の軸 見るポイント 繰上返済に傾く場合 再投資に傾く場合
金利差 借入金利(税引後)と、再投資の期待利回り(ストレス後)の差 借入金利が高い。再投資の利回りが低い 借入金利が低く、再投資の利回りに十分な余裕がある
流動性 繰上返済後の手元現預金が、生活費・運転資金・修繕費の何か月分残るか 手元資金が十分あり、使い道がない 手元資金が薄く、繰上返済すると身動きが取れなくなる
融資余力 繰上返済で残高が減ると、次の融資にどう影響するか 残高が減って返済負担率が下がり、次の借入が通りやすくなる 自己資金を入れる物件の融資が、すでに見えている

三つの軸のうち、金利差だけが数字で比べやすいため、そこだけで結論を出してしまう例がよくあります。しかし、手元資金を使い切ってから修繕費や空室が重なると、ローンの返済が苦しくなります。繰上返済で減るはずの利息より、資金繰りの悪化による損失の方が大きくなることもあります。三つの軸は、並べて確認してください。

繰上返済の二つの方式と、効果の違い

繰上返済には、一般に二つの方式があります。名称は金融機関によって異なることがありますが、考え方は次のとおりです。

方式 内容 毎月の返済額 利息の軽減効果 向く場面
期間短縮型 返済額は変えず、完済時期を前倒しする 変わらない 大きい 返済負担に余裕があり、総利息を減らしたい
返済額軽減型 完済時期は変えず、毎月の返済額を下げる 下がる 期間短縮型より小さい キャッシュフローを楽にしたい、融資余力を回復させたい

仮の数値例:残高3,000万円・残り20年・金利2.0%で500万円を繰上返済する

元利均等返済の仮の条件で計算します。繰上返済前の毎月の返済額は約15.2万円(残り240か月)で、残り期間の利息は合計で約642万円です。ここに500万円を繰上返済した場合を比べます。

項目 繰上返済なし 期間短縮型 返済額軽減型
毎月の返済額 約15.2万円 約15.2万円 約12.6万円
残りの返済期間 240か月 約193か月(約47か月短縮) 240か月
残り期間の利息合計 約642万円 約425万円 約535万円
利息の軽減額 なし 約217万円 約107万円

期間短縮型の方が利息の軽減額は大きくなりますが、毎月の返済額は変わりません。返済額軽減型は、軽減額は小さいものの、毎月のキャッシュフローが約2.5万円改善します。この差が「利回りの差」ではなく「使い道の違い」であることが重要です。浮いた月2.5万円を別の物件の自己資金づくりや修繕積立に回せるなら、返済額軽減型にも別の価値があります。

金利が違うと、軽減額はどう変わるか

同じ条件(残高3,000万円・残り20年・500万円の繰上返済)で、金利だけを変えた仮の計算です。

借入金利 期間短縮型の利息軽減額 返済額軽減型の利息軽減額
1.5% 約156万円 約79万円
2.0% 約217万円 約107万円
3.5% 約431万円 約196万円
5.0% 約696万円 約292万円

借入金利が高くなるほど、繰上返済の効果は急速に大きくなります。金利が上がる局面では、繰上返済の「利回り」が上がっていくことになります。変動金利で借りている場合、現在の金利が低くても、将来の金利上昇の可能性を織り込んで考える必要があります(金利上昇の影響は、別の記事で整理したストレステストの考え方が参考になります)。

税引後で比べる:利息は経費になるので、実際の効果は小さくなる

不動産投資の借入金利は、不動産所得の必要経費になるのが一般的です。国税庁の「必要経費の知識」(タックスアンサー No.2210)では、業務のための借入金の利息は必要経費になると案内されています。そのため、繰上返済で利息が減ると、同時に経費も減り、課税される所得が増えます。つまり、繰上返済の手取りの効果は、利息の軽減額そのものではなく、税金の分を引いた額になります。

税率の確認(国税庁の速算表)

国税庁のタックスアンサー No.2260によると、所得税の税率は、課税される所得金額に応じて次のとおりです。

課税される所得金額 税率
195万円未満(1,000円〜1,949,000円) 5%
195万円以上330万円未満 10%
330万円以上695万円未満 20%
695万円以上900万円未満 23%
900万円以上1,800万円未満 33%
1,800万円以上4,000万円未満 40%
4,000万円以上 45%

このほか、所得税には復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)が上乗せされ、住民税(所得割)も別にかかります。総務省の案内では、住民税の所得割の標準税率は10%(道府県民税4%、市町村民税6%。政令指定都市は2%と8%)です。実際の税率は自治体の条例で決まるため、標準税率と異なる場合があります。復興特別所得税については、令和9年以後の取扱いが変わる旨の記載が国税庁のページにあります。年分によって異なるため、最新の案内を確認してください。

仮の数値例:限界税率が約30%の場合

所得税率20%の層で、復興特別所得税(2.1%)と住民税10%を加えると、合計の限界税率は約30%です(20% × 1.021 + 10% = 約30.4%)。この層の方が、金利2.0%のローンの利息を経費にしている場合、税引後の借入コストは次のようになります。

  • 税引前の借入金利: 2.0%
  • 税引後の借入コスト: 2.0% × (1 − 0.304) = 約1.39%

つまり、繰上返済の税引後の「利回り」は約1.4%です。課税所得が高い層ほど、利息の経費算入による税の軽減が大きいため、繰上返済の税引後効果は小さくなります。逆に、不動産所得が赤字で、他の所得と損益通算できない部分(次の注意点を参照)がある場合や、青色申告特別控除などで所得がほぼゼロの場合は、利息を減らしても税が増えないため、税引後の効果が大きく残ります。

注意点: 土地等を取得するための借入金の利子は、不動産所得が赤字になったとき、その赤字を他の所得と損益通算する際に、該当部分が通算の対象から外れます(国税庁 タックスアンサー No.1391)。この場合、赤字の一部は他の所得と相殺できないため、利息の経費算入の効果が見かけより小さくなります。繰上返済の効果を税引後で見るときは、自分の所得の状況を税理士に確認してください。

再投資の期待利回りをどう見積もるか

次に、比べる相手である再投資側の利回りの出し方です。物件の表面利回りは、比較には使えません。表面利回りには、空室、管理費、修繕費、固定資産税、購入時の諸費用が入っていないからです。繰上返済と比べるなら、自己資金に対して年間にいくらの現金が残るかを示す指標を使います。

自己資金に対する年間キャッシュフロー率(CCR)

CCRは、次の式で求めます。

  • CCR = (年間の純収益 − 年間の返済額) ÷ 投入した自己資金

純収益は、満室想定の家賃から空室損失と運営費(管理費、修繕費、固定資産税、保険料など)を引いた額です。返済額は、元金と利息の合計です。CCRは、自己資金に対する現金の戻り率を見るため、繰上返済の「利回り」と同じ軸で並べやすい指標です。

仮の数値例:500万円を自己資金にして物件を買う場合

次のような仮の物件を想定します。

  • 物件価格 2,000万円、購入時の諸費用 140万円(価格の7%と仮定)、総投資額 2,140万円
  • 自己資金 500万円、借入 1,640万円(金利2.5%、25年、元利均等)
  • 年間返済額 約88.3万円(うち初年度の元金が約47.8万円、利息が約40.5万円)
  • 満室想定の年間家賃 200万円、空室損失と運営費で30%を見込み、年間純収益 140万円

このとき、年間のキャッシュフローは 140万円 − 88.3万円 = 約51.7万円、CCRは 51.7万円 ÷ 500万円 = 約10.3%です。繰上返済の税引前の利回り(2.0%)と比べると、はるかに高く見えます。しかし、この数字は、一つの前提が崩れると大きく変わります。

前提の変化 年間純収益 年間CF CCR 返済に対する純収益(DSCR)
想定どおり(運営費30%) 140万円 約51.7万円 約10.3% 約1.59
空室・修繕で純収益が約14%減 120万円 約31.7万円 約6.3% 約1.36
純収益が約29%減 100万円 約11.7万円 約2.3% 約1.13

純収益が約29%減ると、CCRは2.3%まで下がり、繰上返済の効果(金利2.0%)とほぼ同じ水準になります。つまり、「再投資の利回りが、借入金利より高い」というだけでは、判断の根拠として弱いのです。ストレスをかけた後のCCRで比べるのが、実務的な見方です。

なお、CCRは現金の戻りだけを見る指標です。元金返済による純資産の増加(上の例では初年度約47.8万円)は含まれていません。この分は、物件を売却したときにしか現金になりません。含めて評価するかどうかは、出口戦略と合わせて判断してください(IRRや出口の考え方は、別の記事で整理しています)。

繰上返済と再投資を並べる:判断のしかた

ここまでの数字を並べて、判断の手順を整理します。

手順1:比べる土俵をそろえる

  • 繰上返済の効果: 借入金利(税引後に直すなら × (1 − 限界税率))
  • 再投資の効果: ストレス後のCCR(税引後に直すなら、税の影響を別途計算)
  • どちらも、税引前同士か税引後同士のどちらかにそろえる

手順2:再投資側に「安全マージン」を求める

再投資には、空室、修繕、金利上昇、売却価格の下落などの不確実性があります。繰上返済の利回りより、いくら上乗せがあれば再投資を選ぶのか、自分の基準をあらかじめ決めておくと、判断がぶれません。

再投資のストレス後CCR − 借入金利(税引後) 一つの考え方の例
マイナス、またはほぼゼロ 繰上返済の方が、結果のぶれが小さいため合理的
プラス数ポイント 他の軸(流動性、融資余力)も見て総合判断
大幅なプラスで、DSCRにも余裕がある 再投資を検討する価値がある。ただし融資が付くことが前提

どれだけの上乗せを求めるかは、個人の資金状況やリスク許容度で変わります。ここで示した区分は一つの整理の例であり、公的な基準ではありません。

手順3:手元資金の残りを確認する

繰上返済、または自己資金の投入のあとに、手元の現預金が何か月分残るかを確認します。目安として、生活費、全物件の返済額、固定資産税の納期、想定される修繕費を合計し、数か月分が残るかを見ます。具体的な月数は、保有物件の数、築年数、収入の安定度で変わります。

流動性と融資余力:繰上返済した資金は自由には戻らない

流動性の価値

繰上返済と再投資の比較で、いちばん見落とされやすいのが流動性です。繰上返済したお金は、返済した分の借入枠が自動的に戻るわけではありません。一般的な事業用の融資は、繰上返済した後に、同じ金額を再び借りる契約にはなっていません。追加で借りるには、新たな審査が必要です。

そのため、繰上返済の直後に次の事態が起きると、困る場合があります。

  • 入居者の退去が重なり、返済と運営費の資金繰りが苦しくなる
  • 大規模な修繕(屋根、外壁、給排水設備など)が必要になる
  • 買いたい物件が出てきても、自己資金がなく、機会を逃す
  • 勤務先の収入が下がり、追加の借入が通りにくくなる

手元の資金が厚ければ、これらに自分の資金で対応できます。薄ければ、高い金利で急いで借りることになりかねません。繰上返済で減る利息(たとえば年2%)より、資金不足で払う追加コストの方が大きくなる場合があるため、一定の現預金は繰上返済の対象にしないでおくのが一般的な考え方です。

手元資金は「使い道がない余り」ではなく、「資金繰りを守る保険」としての役割があります。繰上返済に回すのは、保険として必要な額を確保した後の、本当の余剰分にとどめる方法があります。

融資余力への影響:繰上返済は次の借入を通りやすくするか

繰上返済は、借入残高と年間返済額を減らします。これは、次の融資を受けるときの返済負担率(年間返済額 ÷ 年収)や、総債務の見え方を改善します。返済額軽減型は、とくに年間の返済額が下がるため、金融機関が見る返済負担の指標が改善しやすい方式です。

一方で、期間短縮型は、毎月の返済額が変わらないため、返済負担率は改善しません。残高が減る分、債務の総額は下がりますが、金融機関によっては、年間返済額を重視する場合もあります。次の融資を狙うなら、方式の選び方まで含めて検討する価値があります。

ただし、金融機関ごとの審査の見方は異なります。同じ繰上返済でも、評価のされ方は一律ではありません。次の融資の予定がある場合は、繰上返済の前に、取引のある金融機関の担当者に、方式による見え方の違いを聞いておくと安心です(融資の与信枠と名寄せの考え方は、別の記事で整理しています)。

契約面の確認:手数料・最低額・事前通知

繰上返済には、契約で定められた手続きと条件があります。民法第136条2項は、期限の利益(返済の期限が来るまで返さなくてよい利益)は放棄できるが、これによって相手方の利益を害することはできない、と定めています。この規定があるため、貸し手は、繰上返済によって失う利息の補償として、手数料や違約金を契約で定めることがあります。

確認するポイントは次のとおりです。

  • 繰上返済手数料の有無と額: 一部繰上返済、全額繰上返済で扱いが異なることがある
  • 最低の繰上返済額: 金融機関によって下限が決まっている
  • 事前通知の期限: 繰上返済の希望日の何営業日前までに連絡が必要か
  • 固定金利期間中の扱い: 固定期間中の繰上返済に、追加の費用がかかる場合がある
  • 保証料の取扱い: 保証会社を使う融資で、前払いの保証料が戻る場合があるかどうか(金融機関と保証会社の規定による)
  • 団体信用生命保険の保険料: 繰上返済後の扱い

政府系金融機関の融資では、繰上償還に承諾が必要で、所定の算式で手数料を計算する旨を案内している場合があります。借入先が政府系の場合は、公式ページや契約書の特約条項で、取扱いを確認してください。手数料の額は、契約書の条項で決まるため、一般論では判断できません。

繰上返済の手数料がある場合、利息の軽減額から手数料を引いた額が実際の効果です。手数料が数万円〜数十万円かかる場合は、軽減額が小さい少額の繰上返済では、割に合わないこともあります。

金利タイプ・残り期間・借り手による違い

金利タイプと残り期間

繰上返済の効果は、金利タイプによっても異なります。

金利タイプ 繰上返済の考え方
変動金利 現在の金利が低くても、将来の上昇で利息が増える可能性がある。上昇に備えた繰上返済は、リスクを減らす意味がある
固定金利(固定期間中) 金利は固定のため軽減額は計算しやすい。ただし、固定期間中の繰上返済には、手数料がかかる場合がある
固定期間満了後に再設定 満了後の金利を確認してから、残高を減らす判断も考えられる

残り期間が長いほど、繰上返済による利息の軽減額は大きくなります。完済が近いローンでは、繰上返済しても、元々払う利息が少ないため、効果は小さくなります。逆に、借入の初期ほど利息の割合が大きいため、繰上返済の効果が出やすい時期です。

個人と法人での違い

借り手が個人か法人かで、考え方が変わる点があります。

  • 税率: 個人は所得に応じた累進税率(上の表)、法人は法人税率で課税される。国税庁の案内では、資本金1億円以下の中小法人等は、年800万円以下の部分が15%、超える部分が23.2%(令和8年4月1日現在のページ)。税率の違いで、利息の経費算入の効果の大きさが変わる
  • 資金の自由度: 法人の資金を個人の用途に使うことはできない。法人で繰上返済して手元資金が薄くなると、法人の資金繰りに直接影響する
  • 決算書への見え方: 法人は、借入金の減少が決算書に反映される。融資の審査では、決算書の数字が見られる(法人の決算書と融資については、別の記事で整理しています)
  • 経営者保証: 経営者保証がある借入では、繰上返済で残高を減らすことが、保証の負担を減らす意味を持つ場合がある

法人の場合は、役員借入金(法人が代表者から借りているお金)の返済の優先順位との関係もあります。銀行への繰上返済と役員借入金の返済、どちらを先にするかは、金融機関の見方や税務の影響が絡むため、税理士に相談したうえで決めてください。

よくある失敗と判断のチェックリスト

判断でよくある失敗

実務でよく見かける判断ミスを、整理します。

  1. 手元資金を使い切る: 繰上返済や自己資金の投入で現預金がほぼゼロになり、修繕や空室に対応できなくなる
  2. 表面利回りと比べる: 運営費や諸費用を引く前の利回りと、借入金利を比べて、再投資が有利と誤解する
  3. ストレスをかけない: 満室想定の収支だけで再投資を決め、空室や金利上昇で赤字になる
  4. 手数料や税を見落とす: 繰上返済手数料や、利息減少による税の増加を計算に入れていない
  5. 目的を決めずに繰り上げる: 総利息を減らすのか、毎月の返済を楽にするのか、次の融資を狙うのかを決めず、方式を選ぶ
  6. 金利上昇局面で動かない: 変動金利で借りていて、金利が上がり始めても、判断を先送りする
  7. 繰上返済と再投資の二択に絞る: 実際には、現金を保有し続ける、一部だけ繰上返済して残りを再投資に回す、など中間の選択肢がある

判断のチェックリスト

最後に、実際に判断する際の確認項目をまとめます。

  1. 繰上返済の候補額は、生活費・運営費・修繕費・納税資金の確保後の余剰か
  2. 借入金利(固定/変動、今後の見通し)は、いくらか
  3. 繰上返済の方式(期間短縮型/返済額軽減型)は、目的に合っているか
  4. 繰上返済手数料、最低額、事前通知の条件を確認したか
  5. 利息減少による税負担の変化(限界税率)を試算したか
  6. 再投資の候補があるなら、ストレス後のCCRとDSCRを計算したか
  7. 再投資の融資が実際に付く見通しがあるか(金融機関に事前確認したか)
  8. 繰上返済で次の融資の見え方がどう変わるか、金融機関に確認したか
  9. 判断の根拠を紙に書き、後から検証できるようにしたか

よくある質問

Q. 金利が低いうちは、繰上返済をしない方がよいですか

A. 一概には言えません。借入金利が低いほど、繰上返済の利息軽減効果は小さくなります。一方、変動金利の場合は、将来の上昇リスクがあります。金利が低くても、流動性を確保したうえで、再投資の利回りと並べて判断してください。

Q. 繰上返済は、期間短縮型と返済額軽減型のどちらが得ですか

A. 利息の軽減額だけを見れば、期間短縮型の方が大きくなります。ただし、返済額軽減型は毎月のキャッシュフローを改善し、返済負担率を下げるため、次の融資や資金繰りの面で有利になる場合があります。目的に合わせて選んでください。

Q. 繰上返済をした後に、同じ金額を再び借りることはできますか

A. 一般的な事業用融資では、繰上返済した分の枠が自動的に戻ることはなく、追加の借入には新たな審査が必要です。金融機関や商品によって異なるため、契約内容を確認してください。

Q. 繰上返済すると、税金は増えますか

A. 利息が減ると、必要経費に算入できる利息も減り、課税される所得が増える場合があります。国税庁の案内では、業務のための借入金の利息は必要経費になります。個別の影響は、所得の状況によって異なるため、税理士に確認してください。

Q. 手元資金は、どのくらい残しておくべきですか

A. 保有物件の数、築年数、収入の安定度、借入の返済額によって変わります。生活費、全物件の返済額、固定資産税、想定される修繕費などから必要額を計算し、一定期間分を確保しておく考え方があります。具体的な月数は、専門家と相談して決めてください。

Q. 繰上返済に手数料がかかる場合、やめた方がよいですか

A. 利息の軽減額から手数料を引いた額が、実際の効果です。軽減額が手数料を大きく上回るなら、繰上返済の意味があります。手数料の額は契約書で確認してください。

まとめ

繰上返済は、「借入金利と同じ水準の利回りの運用」と置き換えて考えると、再投資との比較がしやすくなります。比べるときは、次の点を押さえてください。

  • 繰上返済の効果は、利息軽減額から手数料と税の影響を引いて見る
  • 再投資は、表面利回りではなく、ストレスをかけた後のCCRとDSCRで見る
  • 利回りの差だけでなく、手元資金(流動性)と融資余力を合わせて判断する
  • 繰上返済は戻らない資金になる一方、再投資は結果のぶれが大きい。両者のリスクの違いを意識する
  • 繰上返済の方式は、総利息を減らしたいのか、毎月の返済を軽くしたいのかで選ぶ

制度や数値は改正されることがあるため、国税庁や借入先の金融機関で確認し、個別の判断は税理士・金融機関・専門家に相談してください。

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※本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、特定の投資・融資・税務上の判断を勧めるものではありません。制度や数値は記事作成時点の一般的な内容です。個別の判断は、金融機関・税理士などの専門家にご確認ください。

最終更新:2026年10月

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