
融資を受けて物件を買う場合、金利や返済期間は気にしても、契約書の後ろの方にある「期限の利益の喪失」や「財務制限条項」まで読み込む人は多くありません。しかし、この条項に抵触すると、毎月の返済どおりに払っていても、残りの借入金を一括で請求される可能性があります。この記事では、期限の利益の考え方、融資契約でよく見られる喪失事由と財務制限条項の種類、数字で余裕を測る方法、契約前後の備えと、抵触しそうなときの動き方までを整理します。

期限の利益とは何か
期限の利益とは、「返済の期日が来るまでは、その金額を返さなくてよい」という債務者の利益のことです。たとえば、25年かけて返すと約束した借入金は、毎月の約定返済日が来るまでは、残りの元本を請求されません。民法136条は、期限は債務者の利益のために定めたものと推定し、期限の利益は放棄することができる(ただし、これによって相手方の利益を害することはできない)と定めています。
不動産投資の融資では、この期限の利益が、金融機関にとっては「長期にわたって貸し続けるための前提」になっています。返済が滞っていないのに、借り手の財務状態が大きく悪化していたり、担保の価値が失われていたりする状況で、金融機関が25年先まで一括請求できないままでは、貸出債権を守れません。そこで融資契約には、一定の事由が起きたときに期限の利益を失わせる(残債の全額について返済期日が到来したものとして扱う)条項が置かれます。
借り手から見ると、この条項は「どの事由に抵触すると返済の見通しが根本から変わるか」を示すものです。条項の内容は金融機関や商品、契約書ごとに異なります。この記事は一般的な整理であり、実際の条項は、ご自身の契約書(金銭消費貸借契約書、約款、特約など)で確認してください。
期限の利益を失う二つの経路:法律の規定と契約の特約
期限の利益を失う経路は、大きく二つあります。
一つ目は、法律の規定による喪失です。民法137条は、次の場合には、債務者は期限の利益を主張することができないと定めています。
- 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき
- 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき
- 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき
二つ目は、契約の特約による喪失です。融資契約では、民法137条の事由に加えて、返済の遅れ、他の借入の延滞、手形・小切手の不渡り、差押え、反社会的勢力との関係、虚偽の申告、財務制限条項への抵触などを喪失事由として定めるのが一般的です。実務上、借り手が現実に直面しやすいのは、こちらの契約上の事由です。
契約上の喪失事由は、その効果の出方で、大きく二つのタイプに分けて説明されることがあります。
| タイプ | 効果の出方 | 典型的な事由の例 |
|---|---|---|
| 当然に失うタイプ(当然喪失) | 事由が起きた時点で、金融機関の通知や請求がなくても、期限の利益を失う | 支払の停止、破産・民事再生などの申立て、手形の不渡りなど |
| 請求により失うタイプ(請求喪失) | 事由が起きても、金融機関が「請求」して初めて、期限の利益を失う | 返済の延滞、財務制限条項への抵触、担保価値の下落、契約違反、報告義務違反など |
どの事由がどちらのタイプに入るかは、契約書の書き方で決まります。「請求により失う」タイプの事由でも、金融機関が請求する権利を持つ状態になっている点は同じで、抵触した事実そのものが、金融機関との交渉における立場を大きく変えます。契約書の文言が「直ちに」「通知なくして」となっているか、「請求があり次第」となっているかを、まず見分けてください。
融資契約でよく見られる喪失事由
不動産投資向けの融資契約で、期限の利益の喪失事由として定められやすい項目を、確認の観点とあわせて整理します。以下は一般的な例であり、すべての契約に含まれるわけではありません。
| 項目 | 内容の例 | 確認のポイント |
|---|---|---|
| 返済の遅れ | 元本・利息の支払を遅らせたとき | 何日(何か月)の延滞で事由になるか。猶予期間があるか |
| 他の借入の延滞 | 同じ金融機関や他の金融機関からの借入を延滞したとき | 「他行分」まで含むか(クロスデフォルト条項)。対象の範囲 |
| 信用状態の悪化 | 支払停止、不渡り、破産・民事再生等の申立て | 申立てを受けただけで該当するか |
| 差押え・仮差押え | 預金や物件に差押えを受けたとき | 少額の差押えでも該当するか。解除までの猶予があるか |
| 担保・保証の問題 | 担保物件の滅失・損傷、担保価値の著しい下落、保証人の信用悪化 | 追加担保を求められる基準。担保価値の評価方法 |
| 虚偽の申告 | 融資申込時の資料や報告に虚偽があったとき | 後から判明した場合も対象か |
| 契約違反 | 使途の違反、物件の無断譲渡や賃貸条件の変更、届出の怠り | 物件の売却・賃貸の条件が制限されていないか |
| 反社会的勢力 | 反社会的勢力との関係が判明したとき | 暴力団排除条項の対象範囲 |
| 財務制限条項への抵触 | 決算の数値が基準を下回ったとき | 次の章で詳しく整理します |
| その他、債権保全の必要 | 「債権の保全を必要とする相当の事由が生じたとき」といった包括的な条項 | 金融機関の判断の余地が大きい。実際にどう運用されるか |
特に注意したいのは、他の借入の延滞をきっかけに複数の契約が連動して期限の利益を失う、いわゆるクロスデフォルトの仕組みです。複数の金融機関から借りている場合、1件の延滞や条項抵触が、他の借入にも波及する形で契約に書かれていることがあります。
また、金利スワップなどのデリバティブ取引を併用している場合、金融庁の「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」は、銀行取引約定書等に定める期限の利益喪失事由に抵触すると、デリバティブ取引についても期限の利益を喪失し、解約清算金の支払義務が生じる場合があることを、金融機関が顧客に分かるように説明するよう求めています。融資とセットで取引をしているときは、その契約も含めて確認してください。
財務制限条項(コベナンツ)とは
財務制限条項(ファイナンシャル・コベナンツ)とは、融資を受けている期間中、借り手の財務状態が一定の基準を満たしていることを求める条項です。融資の時点だけでなく、返済が続く期間にわたって、決算の数値を契約の条件にするという考え方です。個人の住宅ローンにはほとんど付かず、法人向けの融資や事業性の大きな融資で見られます。不動産賃貸業を法人で行い、複数の物件を購入していく人にとっては、身近な条項になりえます。
代表的な種類は次のとおりです。
| 種類 | 内容の例 | 見るべき数字 |
|---|---|---|
| 純資産維持条項 | 各決算期末の純資産(自己資本)を、一定額以上、または前期末の一定割合以上に保つ | 純資産の額、直近の純資産に対する割合 |
| 利益維持条項 | 経常利益や当期純利益を、一定期間続けて赤字にしない | 経常損益、当期損益 |
| 返済能力に関する条項 | DSCR(債務返済余裕率)やインタレスト・カバレッジ(利息の支払余裕)を一定以上に保つ | 営業キャッシュフローと年間の返済額・利息 |
| 負債に関する条項 | 有利子負債の総額や、有利子負債の対EBITDA倍率、自己資本比率に上限・下限を置く | 有利子負債、自己資本比率 |
| 追加借入・配当の制限 | 事前の承諾なく、新たな借入や保証、配当、役員貸付金の返済などをしない | 資金調達の計画 |
| 報告・情報提供義務 | 決算書、試算表、賃貸借の状況などを期限内に提出する | 提出書類と期日 |
注意したいのは、数字の基準を満たしていても、報告義務に違反した場合や、追加借入に承諾が必要な契約で承諾を取らなかった場合に、抵触になりうる点です。数値基準だけを見て「大丈夫」と判断しないでください。
また、同じ「財務制限条項」という名前でも、基準を下回ったときの扱いは契約によってかなり幅があります。基準を下回った時点で期限の利益を失うタイプ、金融機関が請求できるタイプ、金利が上がるタイプ、報告や協議を求められるタイプなど、いくつかに分かれます。条項の見出しだけでなく、「抵触した場合の取扱い」の条文まで必ず読んでください。
数字で測る:基準との余裕を計算する
財務制限条項への備えは、「基準にどのくらいの余裕があるか」を、数字で把握することから始まります。以下は、説明のための仮の例です。
例1:DSCRの基準がある場合
賃貸業を行う法人の年間の数字を、次のように仮定します。
- 賃料収入(年間の実績):1,200万円
- 運営費(管理費、修繕費、固定資産税、保険など):年360万円
- 営業キャッシュフロー(NOI):840万円
- 年間の元利返済額:600万円
この場合のDSCR(NOI÷年間の元利返済額)は、840万円÷600万円=1.40です。仮に、契約書にDSCR1.20以上の維持が書かれているなら、NOIが600万円×1.20=720万円を下回ると、基準割れになります。余裕は840万円−720万円=120万円、NOIで約14%です。
ここで、次のような出来事が起きたとします。
- 空室が増え、賃料収入が1,200万円から1,050万円に減った(150万円の減少)
- 外壁の補修などで運営費が360万円から420万円に増えた(60万円の増加)
NOIは840万円−150万円−60万円=630万円になります。DSCRは630万円÷600万円=1.05で、基準の1.20を割ります。金融機関の定義が「決算書の税引前利益に減価償却費を足し戻した数字」などになっている場合は、計算の結果がさらに変わる点にも注意が必要です。
例2:純資産維持条項がある場合
純資産が3,000万円の法人があり、条項が「各決算期末の純資産を、前期末の75%以上に保つこと」だとします。基準は3,000万円×75%=2,250万円です。ここで、大規模修繕の費用や、物件の売却損、役員への配当などで、純資産が800万円減ると、純資産は2,200万円となって基準を割ります。余裕は750万円しかなかったことになります。
決算書上の損益は、減価償却費の計上、修繕費と資本的支出の区別、売却損益などで、実際の現金の動きとずれることがあります。「現金は残っているのに、帳簿上の純資産や利益が基準を割る」ことは起こりえます。
数字の定義は、契約書ごとに異なります。確認するときは、次の項目を一覧にしておくと整理できます。
- どの決算書(単体か連結か、税務申告書か)の数字を使うか
- 「営業キャッシュフロー」「経常利益」「純資産」の定義(減価償却費の扱い、役員借入金の扱いなど)
- 判定の時期(決算期末のみか、半期ごとか)
- 判定の結果を報告する期限
抵触したら何が起きるか
条項に抵触した場合の取扱いは、契約により、おおむね次のような段階に分かれます。実際には、これらの組み合わせになっていることもあります。
| 段階 | 内容 | 借り手への影響 |
|---|---|---|
| 報告・協議 | 抵触の事実と理由、今後の見通しを報告し、金融機関と協議する | 追加の資料提出、面談 |
| 条件の見直し | 金利の引上げ、追加担保の差入れ、返済額の増額、新規融資の停止 | 返済負担が増える |
| 期限の利益の喪失 | 残債の全額について、一括返済を求められる | 資金繰りに直結する |
| 担保の実行・保証の履行請求 | 一括返済ができなければ、担保物件の競売や保証人への請求に進む | 物件・個人資産に影響 |
実務では、抵触したから直ちに一括返済を請求されるとは限りません。金融機関が、借り手の状況や今後の見通し、他の取引の状況を踏まえて、一時的な基準割れを認める(権利の行使を猶予する)こともあります。しかし、それは金融機関の判断であり、契約上は請求できる状態になっている点を、忘れないでください。
期限の利益を失った後の負担
期限の利益を失うと、残債の全額が弁済期にあるものとして扱われ、返済できない部分には遅延損害金がかかります。民法419条は、金銭債務の不履行による損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定め、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率による、としています。契約書では、「年14%」のように、通常の貸出金利より高い遅延損害金の率が定められていることがあります。法定利率は年3%を基準に、3年ごとに見直されます(民法404条)。
遅延損害金の上限については、利息制限法に定めがあります。同法4条は、賠償額の予定が、元本に対して、同法1条の率(元本の額に応じて年15%〜20%)の1.46倍を超える部分を無効としています。また、同法7条は、営業的金銭消費貸借(債権者が業として行う金銭を目的とする消費貸借)については、賠償額の予定が年2割を超える部分を無効としています。実際にどの条文が自分の契約に適用されるかは、契約の当事者や性質によって異なるため、専門家に確認してください。
仮の例として、残債が3,000万円で、遅延損害金が年14%の場合、1日あたりの遅延損害金は、3,000万円×14%÷365日=約1万1,500円です。一括返済を請求されてから1か月放置すれば、約34万円が上乗せされます。
保証人・担保・他の借入への波及
期限の利益の喪失は、借り手本人だけの問題ではありません。
保証人への影響
法人が借りて代表者が連帯保証人になっている場合、主たる債務者(法人)が期限の利益を失うと、保証人に対しても、残債全額の請求が可能になります。民法458条の3は、主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内に、その旨を通知しなければならないと定めています。通知をしなかった場合、債権者は、保証人に対し、期限の利益を喪失した時から通知をするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く)に係る保証債務の履行を請求できません。ただし、この規定は、保証人が法人である場合には適用されません(同条3項)。
この規定は、個人の保証人を守るためのものです。借り手の側でも、条項に抵触したときは、保証人に早めに状況を説明しておく必要があります。経営者保証の考え方は、別の記事で整理しています。
担保・他行の借入への影響
物件に抵当権が付いている場合、一括返済ができなければ、金融機関は担保権の実行(競売)を申し立てることができます。また、複数の物件に共同担保が付いている場合、1件の延滞が、他の物件にも影響することがあります(担保の入れ替えや解除については、別の記事で整理しています)。
さらに、他行の融資契約に、クロスデフォルト条項(他の借入について期限の利益を失ったときは、この契約についても喪失事由とする条項)がある場合、1行で起きた問題が、他の借入に連鎖します。複数行から借りている場合は、それぞれの契約書で、他行の借入の状況が喪失事由になっていないか、一覧にして確認してください。
契約前の確認手順
契約書が手元に届いてから確認するのでは遅いことがあります。融資の条件が固まる段階で、次の順序で確認することを勧めます。
- 融資の「条件提示書」(または内諾の書面)で、財務制限条項や報告義務の有無を確認する
- 契約書(金銭消費貸借契約書や約款)の写しをもらい、「期限の利益の喪失」「財務制限条項」「報告」「届出」「担保」の条文を探す
- 各条項について、事由、判定の方法、抵触した場合の取扱い(自動か、請求か、協議か)を一覧にする
- 自社(自分)の直近2〜3期の決算書で、基準との余裕を計算する
- 今後の計画(大規模修繕、追加の物件購入、役員報酬・配当)を織り込んだ場合の数字も試算する
- 不明な点、厳しすぎる点は、契約の前に、金融機関に質問・交渉する
金融庁の「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」は、貸付契約について、貸付金額、金利、返済条件、期限の利益の喪失事由、財務制限条項等の契約内容を、顧客の財産の状況を踏まえて契約する客観的合理的な理由を、顧客から説明を求められたときに説明する態勢を整えることを、金融機関の着眼点として挙げています。契約書の内容に疑問があれば、「なぜこの基準なのか」「他の基準でも足りないか」を、遠慮せずに聞いて構いません。
確認のときに、次の表を使うと整理しやすくなります。
| 確認項目 | 書き込む内容 |
|---|---|
| 条項の名称と条文番号 | 例:第○条(期限の利益の喪失) |
| 事由 | 抵触する条件(数字、事実) |
| 判定の方法 | 使う決算書、判定日、報告期限 |
| 抵触時の取扱い | 自動か請求か、協議か、金利上乗せか |
| 自分の現状の数字 | 基準との余裕(金額・割合) |
| 余裕が小さい場合の対策 | 内部留保、修繕の時期調整、交渉 |
契約後の管理:決算前に抵触の見込みを確認する
契約を結んだ後は、決算ごとに、基準に抵触しないかを、事前に確認します。確認する時期は、決算日の直前だけでは足りません。大規模修繕、物件の売却による損失、役員報酬の変更、新たな借入など、純資産や利益を大きく動かす取引は、実行する前に影響を計算します。
管理の方法としては、次のようなものがあります。
- 契約ごとに、条項・基準・判定日・報告期限を1枚の表にまとめ、年間のカレンダーに入れる
- 月次の試算表で、DSCRや純資産、利益を概算で追う
- 大きな支出(修繕、購入、配当、役員への支払)の前に、基準への影響を試算する
- 決算の前に、税理士と、基準を満たせるかを確認する
- 税務上の決算処理(修繕費と資本的支出の区分、減価償却の方法など)で数字が動く場合は、金融機関の定義との関係を確認する
なお、決算の数字を基準に合わせるために、実態と異なる処理を行うことは、虚偽の報告として別の喪失事由になるだけでなく、税務上も問題になりえます。数字が悪い年は、悪いなりに正確に報告し、早めに相談するほうが、結果として選択肢が残ります。
抵触しそうなとき、抵触したときの動き方
基準を割りそうだと分かったときは、決算の後に金融機関から指摘されるのを待つのではなく、前もって連絡するのが基本です。個別の事情によっては、条件の見直しや、基準の一時的な免除(ウェイバー、権利行使の猶予)が認められることがあります。ただし、認められるかどうかは金融機関の判断であり、契約上の権利として当然に求められるものではありません。
相談の際には、次の内容を整理して持っていくと、話が進みやすくなります。
- 基準を割る(割った)理由と、一時的なものか構造的なものか
- 現在の資金繰り(現金残高、今後12か月の収支の見通し)
- 改善策(空室の埋め戻し、家賃の見直し、経費の削減、資産の売却、追加の自己資金)
- 求めたい対応(基準の免除、期間の延長、返済条件の見直しなど)
- 他の借入や保証人への影響の見立て
返済そのものが厳しい場合の条件変更(いわゆるリスケジュール)の考え方は、別の記事で整理します。ここでは、「基準を割った事実を隠さず、改善計画を添えて、早く話す」ことが、選択肢を広げるという点を押さえてください。
よくある質問
Q. 財務制限条項は、個人名義の融資にも付きますか。
A. 個人名義の住宅ローンなどには、ほとんど付きません。法人向けの融資や、事業性の大きな融資で見られるものです。ただし、個人で不動産賃貸業を行っている場合の事業性融資でも、報告義務や、期限の利益の喪失事由は定められるのが通常です。契約書の内容は、金融機関や商品ごとに異なります。
Q. 返済を一度も遅らせていないのに、一括返済を求められることはありますか。
A. 契約上の事由に抵触すれば、可能性はあります。返済の遅れ以外にも、財務制限条項への抵触、担保価値の著しい下落、虚偽の申告、契約違反、他の借入の延滞などが事由になりえます。実際に請求されるかどうかは、事由の内容と金融機関の判断によります。
Q. 財務制限条項に抵触すると、必ず一括返済になりますか。
A. 契約によります。報告や協議、金利の引上げ、追加担保など、段階的な対応で足りる契約もあります。ただし、契約上は一括請求が可能な状態になっているため、事前の相談が重要です。
Q. 契約の後で、条項の内容を変えてもらえますか。
A. 交渉の余地はありますが、金融機関の同意が必要です。事業の状況が変わったとき、返済の実績が積み上がったとき、借り換えの検討をするときなどに、条件の見直しを相談できる場合があります。実際の可否は、金融機関や契約によります。
Q. 抵触した場合の連絡は、いつまでにすべきですか。
A. 契約書に報告期限が書かれていれば、それに従います。期限がなくても、抵触の見込みが分かった段階で、早めに連絡するほうが、話し合いの余地が残りやすくなります。
Q. 保証人には、期限の利益の喪失が知らされますか。
A. 民法458条の3は、保証人が個人である場合に、債権者が期限の利益の喪失を知った時から2か月以内に通知する義務を定めています。保証人が法人の場合は適用されません。通知の有無にかかわらず、借り手側からも、早めに状況を共有しておくことを勧めます。
まとめ
期限の利益は、長期の融資を支える土台であり、一定の事由に抵触すると、残債の全額について一括返済を求められる可能性があります。要点は次のとおりです。
- 期限の利益を失う経路は、民法137条の規定(破産手続開始の決定、担保の滅失・損傷・減少、担保を供しないとき)と、契約上の特約(延滞、財務制限条項、クロスデフォルトなど)がある
- 契約上の事由は、通知なしに失うタイプと、請求によって失うタイプがある。文言を見分ける
- 財務制限条項は、純資産、利益、DSCR、有利子負債、追加借入の制限、報告義務など、種類がある。数字の定義と判定の時期を確認する
- 基準との余裕は、仮の数字でもよいので、事前に計算しておく
- 契約前に条項を一覧にし、契約後は決算前に抵触の見込みを確認する
- 基準を割りそうなときは、改善計画を添えて、早めに金融機関へ相談する
税制や融資の制度、契約の内容は、改正や金融機関ごとの運用で変わることがあります。個別の契約の判断は、金融機関、税理士、弁護士などの専門家に確認してください。
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、特定の投資・融資・税務上の判断を勧めるものではありません。制度や数値は記事作成時点の一般的な内容です。個別の判断は、金融機関・税理士などの専門家にご確認ください。
最終更新:2026年10月
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