人間の悩みはすべて対人関係の悩みであるーーーこれは、近年ちょっとしたブームとなったアドラー心理学(個人心理学)の創始者アルフレッド・アドラーの言葉です。本当に「すべて」かどうかは別としても、
✔︎ 職場の人間関係の悩みがストレスになっている
✔︎ 人間関係のことで家庭が揉めている
などという人も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、今回は臨床心理学や医療の現場でも使われている、今すぐに一人でも始めることができる「ストレスを和らげるための方法」をご紹介します。
人間関係で人を変えることは難しい
ちょっと想像してみてください。あなたがとても尊敬しているわけでもなければ、権威のある専門家でもない他人から「あなたはここをこう直した方が良いよ」と言われたらどうするでしょう? 素直に言うことを聞くという人は数少ないのではないでしょうか。それくらい人を変えるというのは難しいことです。
たとえば、仕事に対する考え方の違いで上司や部下との人間関係にストレスを感じる場合などは、相手の考え方を無理やり変えようとしてもなかなかうまく行かないですよね。無理に相手を変えようとすることで、逆に関係が悪化してしまうというのも起こりがちなことです。
こういう場合は、相手を変えようとするよりは、まずは自分を何とかしましょう。ただし「自分を何とかする」と言っても、自分が悪いからそれを直すということではありません。自分のストレスをほぐしてあげるという意味です。人間関係でたまったストレスがほぐれ、自分自身が柔らかくなれば、もしかしたら相手もそれに影響されていい方向に変わっていくかもしれません。
1.7つのコラム法でストレスを自己分析する
コラム法とは、代表的な認知行動療法の1つで、認知再構成法とも呼ばれる療法です。事象についての自身の捉え方や考え方、自分の気分などを再整理することで、ニュートラルな考え方を保ち、心のバランスを取ろうとする心理学的手法です。
7つのコラム法の実施方法
この方法を実施するときには、まず紙と筆記用具を用意してください。慣れてくれば、頭の中だけでもできるようになってきます。紙に書き出すのは次の7つです。
(1)状況:ストレスを感じた場面
(例:挨拶をしたのに、返事が返ってこなかった)
(2)気分:そのときに感じた気持ちを数字で
(例:怒り80%、悲しみ20%)
(3)自動思考:そのとき頭に浮かんだ考え
(例:嫌われている)
(4)根拠:自動思考の内容を裏付けるような客観的な根拠
(例:無視された)
(5)反証:自動思考に矛盾するような事実
(例:昨日の帰りは普通に挨拶していた)
(6)バランス思考:自動思考に代わる新たな考え
(例:仕事に夢中になってこちらの挨拶に気づかなかったのかもしれない)
(7)心の変化:1~6までをやって、どのように気持ちが変化したか
(例:怒り20%、悲しみ5%)
7つのコラム法のコツ
7つのコラム法を実施するときのコツは、「反証」や「バランス思考」をできるだけ多く考え出すことです。ありそうもない可能性のものまで含めてもかまいません。どんどん想像力を膨らませましょう。
そうすることで自動思考を強く信じる気持ちが薄まれば、嫌な感情が和らいできます。また繰り返しおこなっていけば、自分の考え方の癖に気が付いて、柔軟に思考を修正できるようになってきます。
2.マインドフルネスでストレスを軽減させる
最近はテレビの健康番組で取り上げられることも多いマインドフルネスは、鬱(うつ)や不安障害、慢性痛などの治療法として臨床心理学や医療の現場で用いられています。
社員研修の一つとして、Google社ではマインドフルネスが行なわれていることも有名ですね。また、脳科学的な研究ではマインドフルネスを継続的に行うことで脳に好ましい変化が起きることも示されています。
マインドフルネス瞑想の実施方法
(1)最初のうちは一人になれる静かなところに行く
(慣れてくればにぎやかな場所でもできるようになってきます)
(2)背筋を伸ばして座る
(本格的な座り方でなくて、椅子でもかまいません)
(3)目は閉じるか、薄く開けて視線を斜め下に向ける
(4)呼吸の感覚に注意を向ける
(息が鼻を出入りする感覚や、胸・お腹が膨らんだりへこんだりする感覚)
(5)考えごとをして注意がそれていることに気づいたら、その注意をやさしく呼吸に戻す
マインドフルネスは何分くらいすればいい?
マインドフルネスは、できれば20分から30分くらいできるようになれば理想的ですが、初めのうちは3~5分くらいでもいいでしょう。
1週間に1回30分を一気にやるよりは、毎日5分ずつでもいいので毎日継続するほうが有効です。そして慣れてきたら少しずつ時間を伸ばすようにすれば、より効果的でしょう。
マインドフルネス瞑想のコツ
マインドフルネス瞑想で大事なのは、考えごとにとらわれていることに気づき、注意を「今ここ」に戻すことです。呼吸に集中し続けることが難しくて、何度も注意が逸れたとしても、それに気づいて注意を戻すことができていれれば大丈夫です。
「集中できない」「雑念ばかりだ」などと新たなストレスの種を増やすのではなく、たとえ何百回でも何千回でも「注意がそれたら戻す」ことに淡々と取り組むようにしましょう。
マインドフルネスは瞑想だけではない
マインドフルネスは家事や歩行といった日常の動作にも取り入れることができます。やりかたは瞑想と似ています。今していることや歩いている足の感覚などに注意を向けましょう。瞑想の場合と同じく、考えごとにとらわれていることに対する気づきが大事です。考えごとをしていることに気づいたら、やさしく戻すようにしましょう。
またマインドフルネスでは、頭に浮かんでくる考えをただながめるという方法もあります。その考えが正しいか正しくないかなどと吟味しているようであれば、それは考えごとにとらわれているということです。考えが浮かんでくるたびに「という考えがある」と後ろに付け足して、思考をどんどん受け流していくようにすると良いでしょう。
3.身体から人間関係のストレスをほぐす
人間関係で悩みごとを抱えている場合など、ストレスフルな状況にあるときに凝り固まっているのは心だけではありません。心と身体は密接につながっています。ストレスフルな状況では、身体も過度な緊張によってバランスの崩れた状態になっているのが普通です。
こういう場合には、身体の方へ働きかけて心身をリラックスさせるのも効果的でしょう。ここでは「漸進的筋弛緩法(ぜんしんてききんしかんほう)」のやりかたを紹介します。名前は難しそうですが、簡単で手軽な方法ですのでぜひマスターしてみてください。
漸進的筋弛緩法の実施方法
(1)椅子に座る
(2)両手をしっかり握り、腕にも力を入れる
(3)首をすぼめ、両肩に力を入れて耳に近づけるように上げる
(4)かかとをつけたまま両足のつま先を引き上げて足も緊張させる
(5)すっぱいものを食べた時のように顔のパーツを真ん中に寄せて緊張させる
(6)全身の力を一気に抜き、脱力したときの感覚を15~30秒くらい味わう
漸進的筋弛緩法のコツ
身体をリラックスさせるには「いったん力を入れて、そこから一気に脱力する」というのが効果的です。漸進的筋弛緩法をするときは、しっかりと力を入れ、その後に脱力したときの感覚をじっくりと味わうようにしましょう。なお、全身を一度に緊張させるのではなく、部分ごとに緊張と弛緩を繰り返していく方法でもかまいません。
人間関係のストレスを和らげる心理学的方法のまとめ
臨床心理学の中でも行動療法や認知行動療法と呼ばれる分野では、科学的に効果があると認められた方法を主として用いることで、こころの病気や悩みなどを抱える人々の援助を行なっています。
この記事では、この行動療法や認知行動療法で主に使用されている方法を紹介しました。なお、ストレスを和らげるための方法をたくさん持っている方がより効果的です。どんな些細なものでもかまいませんので、気分転換になってストレスが和らぐような方法を手帳などにリストアップしておくといいでしょう。
ここで紹介した方法に加えて、自分なりのストレスのほぐし策をたくさん見つけて、人間関係のストレスフルな状況と上手に付き合っていくようにしましょう。
人間関係というのは、アドラーが言うように、人生における最大の悩みの1つでもあります。そのほかにも人が行き着く「悩み」というのは8つの分野に集約されると言われています。人生100年時代に少しでも悩みを取り除き、充実した人生を送るための手法として私が書き下ろした52ページのPDF冊子『100年先も通用する人生を謳歌する方法』を期間限定で無料公開しています。読んでみたい方はこちらからご覧ください。
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