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借り換えの損益分岐の計算|金利差と諸費用から回収期間を求める

金利が下がったから借り換える、あるいはもっと有利な条件を出してくれる金融機関が見つかったから借り換える、という判断は、金利差だけを見ると誤りやすくなります。借り換えには登記や事務手数料などの費用がかかり、その費用を毎月の返済額の減少分で何年かけて取り戻せるかによって、有利かどうかが決まるからです。この記事では、借り換えの損益分岐を求める計算式と、保有期間、返済期間の変更、税金の影響を加えた見方、確認すべき条件と進め方を、仮の数字を使って整理します。

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借り換えの判断は「回収期間」と「保有する期間」で決まる

借り換えとは、今の借入金を新しい借入金で返済し、金利や期間などの条件を入れ替えることです。借り換えをしたいと考える理由は、金利の引下げが主ですが、返済期間の見直し、担保や保証の条件の変更、変動金利から固定金利への切り替え、複数の借入のまとめ直しなど、さまざまです。

どの理由であっても、判断の軸は同じです。借り換えで得られる効果(毎月の返済額の減少や総返済額の減少)と、借り換えのためにかかる費用を比べ、その費用を取り戻せる時期が、物件を保有する予定の期間より前にくるかどうかを見ます。取り戻す前に物件を売却したり、完済したりする予定なら、借り換えは損になる可能性があります。

見る数字は、次の三つです。

借り換えにかかる費用を洗い出す

借り換えの費用は、新しく借りる側(新しい金融機関)にかかるものと、今の借入を返す側(現在の金融機関)にかかるものに分かれます。主な項目は次のとおりです。

費用の項目 内容と目安 確認のポイント
抵当権設定の登録免許税 登録免許税法別表第一で、抵当権の設定は債権金額(または極度金額)の1,000分の4。債権金額4,000万円なら16万円 居住用住宅を対象にした軽減税率は、投資用物件には使えない
抵当権抹消の登録免許税 不動産1個につき1,000円(土地と建物で2個なら2,000円) 不動産の個数を数える。司法書士の報酬は別
印紙税(金銭消費貸借契約書) 書面で作成する場合、契約金額が1千万円超5千万円以下なら2万円、5千万円超1億円以下なら6万円(2026年4月1日現在の税額表) 電子契約の場合は取扱いが異なる。金融機関の案内を確認
司法書士報酬 設定・抹消の登記を依頼する費用。金額は事務所ごとに異なる 金融機関が指定する司法書士の場合もある
新しい金融機関の事務手数料 借入額の一定率、または定額。金融機関により大きく異なる 率か定額か、消費税の扱い
保証料 保証会社を付ける融資の場合にかかる。一括払いか、金利への上乗せか 現在の借入の保証料の返戻の有無
現在の借入の繰上返済手数料・違約金 固定金利の期間中は、手数料や損害金の定めがあることが多い 契約書の「繰上返済」の条項、算式の有無
鑑定・調査・書類取得の費用 担保評価のための調査、登記事項証明書や評価証明書の取得など 費用を借り手が負担するか

なお、司法書士報酬や事務手数料、違約金などの金額は、金融機関や事務所、契約によって大きく異なります。金額が決まらないうちは、見積書や条件提示書で必ず確認してください。

損益分岐の基本式と計算例

借り換えの損益分岐は、次の二つの式で考えます。

以下は、仮の例です。借り換え前の条件を、残債4,000万円、残りの返済期間20年(240か月)、金利2.5%、元利均等返済とします。この場合の毎月の返済額は約21万1,961円、残りの期間の総返済額は約5,087万円(うち利息は約1,087万円)です。

借り換え後も、返済期間は同じ20年のままとして、金利と費用を変えて比べます。

新しい金利 毎月の返済額 月々の差額 総費用 回収期間 返済期間全体の得失
1.5% 約19万3,018円 約1万8,943円 80万円 約3.5年 約+374万円
1.5% 約19万3,018円 約1万8,943円 150万円 約6.6年 約+305万円
2.0% 約20万2,353円 約9,608円 80万円 約6.9年 約+150万円
2.0% 約20万2,353円 約9,608円 150万円 約13.0年 約+81万円

総費用は、前の章の表の項目に、事務手数料などを加えた結果、約80万円または約150万円になったと仮定した数字です。同じ「金利差1%」でも、費用が高いと回収期間が約2倍になる点に注意してください。

この表のうち、「金利2.0%・総費用150万円」の行は、回収期間が約13年です。この物件を5〜7年で売却する予定なら、費用を取り戻す前に保有期間が終わるため、借り換えは見送ったほうがよい可能性が高くなります。

売却予定まで含めて比べる:残債の差も加える

回収期間の計算は、「月々の返済額の差」だけを見ています。しかし、実際に売却する場合には、売却時に残っている借入残高の違いも、手残りに影響します。金利が低いほど、同じ返済期間でも元本の減り方が速くなるため、同じ時点の残債は少なくなります。

総費用を100万円と仮定して、借り換え前(金利2.5%)と比べた、各時点で売却する場合の有利不利(支払額の差と残債の差の合計)を試算すると、次のようになります。

保有する期間 新金利2.0%の場合 新金利1.5%の場合
3年で売却 約−43万円 約+14万円
5年で売却 約−8万円 約+83万円
7年で売却 約+24万円 約+146万円
10年で売却 約+65万円 約+226万円

表の数字は、借り換え後も20年の元利均等返済とし、売却の費用や税金は考慮していません。金利差が0.5%で費用が100万円の場合は、5年強で有利不利が分かれる計算です。金利差が1%なら、3年弱で逆転します。

売却時には、借入先によっては、借入金の完済に伴う違約金や手数料が別にかかることがあります。借り換え後の契約にも、繰上返済に関する条項があるかを確認してください。

返済期間を変える借り換えは、総額で見る

借り換えと同時に、返済期間を延ばしたり縮めたりする場合は、月々の返済額の差だけで判断すると誤ります。同じ残債4,000万円、借り換え前の金利2.5%・残り20年のケースで、期間を変えた場合を比べてみます。

借り換え後の条件 毎月の返済額 総返済額 借り換え前(約5,087万円)との差
金利2.0%・20年 約20万2,353円 約4,856万円 約230万円減
金利2.0%・25年 約16万9,542円 約5,086万円 ほぼ変わらない(約8千円減)
金利2.0%・15年 約25万7,403円 約4,633万円 約454万円減
金利1.5%・25年 約15万9,975円 約4,799万円 約288万円減

金利が0.5%下がっても、返済期間を5年延ばすと、総返済額はほとんど変わらなくなります。月々の返済額が約4万円減るため、キャッシュフローは楽になりますが、「利息の総額が減った」わけではありません。キャッシュフローの改善を目的とするのか、総支払額の削減を目的とするのかを、先に決めておく必要があります。

返済期間の変更は、返済の余裕を示すDSCR(債務返済余裕率)にも影響します。年間の営業キャッシュフローを、仮に360万円とすると、借り換え前の年間返済額約254万円ではDSCRは約1.42です。同じ金利2.0%でも、期間を25年にすると年間返済額は約203万円でDSCRは約1.77、15年にすると約309万円でDSCRは約1.17になります。期間を短くすると総額は減りますが、返済の余裕は薄くなります。DSCRの考え方は、別の記事で整理しています。

融資の期間は、金融機関が物件の築年数や構造、残りの耐用年数などを踏まえて決めます。借り換えの時点では、購入時よりも築年数が進んでいるため、同じ期間を認めてもらえるとは限りません。希望する期間が通らず、短い期間で借り換えることになった場合、月々の返済額が増えて、「金利は下がったのに、毎月の負担が重くなった」という結果になりえます。審査の段階で、期間の条件を必ず確認してください。

税金を考える:利息が減ると、課税される所得は増える

金利が下がって利息が減ると、その分、必要経費(法人の場合は損金)に入る支払利息も減るため、課税される所得が増えます。借り換えの効果を、税引き後の手取りで見ると、見かけの効果よりも小さくなります。

仮の例として、前章の「金利1.5%・20年」で、返済期間全体の利息の減少額が約455万円だったとします。この利息の減少分に対して、実効税率が30%だとすると、税引き後の効果は約455万円×(1−0.3)=約318万円になります。「金利2.0%・20年」の場合は、約231万円×0.7=約161万円です。

回収期間も、税引き後で見ると長くなります。月々の差額が約1万8,943円(金利1.5%)のとき、税金を考えない場合の回収期間は、総費用80万円で約3.5年でした。税引き後の月々の効果を、約1万8,943円×0.7=約1万3,260円とすると、回収期間は約5.0年に延びます。ただし、借り換えの費用のうち、経費や損金として処理できるものがあれば、その分は税金が減って有利になります。費用のどの部分を、どの年の経費にできるか(繰延資産などの扱いを含む)は、個別の事情によって異なるため、税理士に確認してください。

個人で不動産を所有している場合には、もう一つの注意があります。不動産所得が赤字になったときに他の所得と損益通算をする際、赤字のうち、土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分は、損益通算の対象になりません(国税庁 タックスアンサー No.1391)。借り換えで利息が減ると、この部分の利子も変わるため、損益通算に与える影響は、土地と建物のどちらにあたる借入かで異なります。

現在価値で見ると、遠い将来の効果は小さく評価される

回収期間の計算は、「今日の1万円と、10年後の1万円を同じ価値」として扱っています。より厳密には、将来の効果を割引率で現在の価値に直して比べる方法もあります。

仮に、割引率を年3%として、金利1.5%・20年の借り換え(月々の差額約1万8,943円)の効果を、20年間分の現在価値に直すと、約342万円です。金利2.0%・20年(月々の差額約9,608円)の場合は、約173万円です。名目の合計額(それぞれ約455万円、約231万円)と比べて、約4分の1小さくなります。

また、保有期間が5年なら、金利1.5%の効果の現在価値は約105万円、金利2.0%の場合は約53万円です。総費用がこれを上回るなら、借り換えは見送ったほうがよい、という判断になります。

割引率に何%を使うかは、自分の資金の運用利回り、他の借入の金利、新規の物件の期待利回りなどで決まります。数字を細かく詰めること自体が目的ではありません。「費用を取り戻すまでの期間」と「保有する期間」の関係に、余裕があるかを確かめる補助として使ってください。

見落としやすい確認事項

借り換えは、新しい融資を受ける手続でもあります。金利と費用の計算のほかに、次の点を確認してください。

固定金利期間中の違約金は、費用の中で最も差が出やすい

固定金利の期間中に繰上返済をする場合、契約によっては、残りの固定期間に対応する損害金が定められています。算式は金融機関ごとに異なりますが、考え方の一つとして、「契約している金利と、返済時点の市場金利の差に、残債と残りの固定期間をかけた金額」を基準にするものがあります。

仮の簡易計算として、残債4,000万円、契約金利2.5%、残りの固定期間3年、返済時点で比較する市場金利を1.0%とすると、金利差1.5%×4,000万円×3年=約180万円になります。実際の算式は契約によって異なり、この金額より小さい場合も大きい場合もあります。ただし、この規模の違約金があれば、前章の表の「総費用80万円」は成り立たず、回収期間が大きく変わります。借り換えの検討を始める最初の段階で、現在の金融機関に、違約金の算式と、概算の金額を書面で出してもらってください。

固定期間の終了時期に合わせて借り換えれば、違約金を避けられる場合があります。急いで借り換えるよりも、固定期間の終了や、金利の見直し時期まで待ったほうが有利になることもあるため、契約書で期間の終了日を確認します。

借り換えでよくある失敗

進め方の手順

借り換えを検討するときは、次の順序で進めると、判断を誤りにくくなります。

  1. 現在の借入の、残債、金利、残りの期間、返済方法、繰上返済の条件(手数料、違約金、事前の通知期間)を、契約書と返済予定表で確認する
  2. 物件を今後何年保有する予定か、売却や完済の予定時期を、仮でもよいので決める
  3. 複数の金融機関から、金利、期間、手数料、保証料、担保・保証の条件を、同じ前提で提示してもらう
  4. それぞれの案について、総費用、月々の差額、回収期間、保有予定期間での得失、DSCRを一覧表にまとめる
  5. 現在の金融機関にも、金利の引下げや条件の見直しが可能かを相談する。借り換えを行うよりも、費用が少なくて済む場合がある
  6. 審査の結果と最終的な条件を確認し、契約書の繰上返済、財務制限条項、保証の条文を確認したうえで契約する

4で比べる一覧表は、次のような形でまとめると、見比べやすくなります。

比べる項目 現在の借入 A案 B案
金利・金利タイプ (記入) (記入) (記入)
残りの期間 (記入) (記入) (記入)
毎月の返済額 (記入) (記入) (記入)
総費用 (記入) (記入) (記入)
回収期間 (記入) (記入) (記入)
保有予定期間での得失 (記入) (記入) (記入)
DSCR (記入) (記入) (記入)
担保・保証の条件 (記入) (記入) (記入)

借り換えが向いているケースと、見送るケース

最後に、判断の目安を整理します。数字は、あくまで目安であり、個別の状況に応じて判断してください。

場面 借り換えが有利になりやすい 見送ったほうがよいことが多い
金利差 大きく、残債も大きい 小さく、残債も小さい
総費用 小さい(違約金がない、手数料が低い) 大きい(固定期間中の違約金が高い)
保有予定 回収期間より十分に長い 回収期間の前に売却・完済する予定
返済期間 同じ期間か、希望の期間で借りられる 期間が短くなり、返済の余裕が減る
審査 決算や稼働が良好で、条件が改善している 決算が悪化している、築年数が進んで担保評価が下がっている
現在の金融機関 条件の見直しに応じてもらえない 条件の見直しに応じてもらえる

よくある質問

Q. 金利差が何%あれば、借り換える意味がありますか。

A. 一律の基準はありません。金利差が1%でも、残債が小さい、費用が高い、保有期間が短い場合は、費用を取り戻せないことがあります。反対に、金利差が0.5%でも、残債が大きく、費用が小さく、長く保有するなら、有利になることがあります。回収期間と保有予定期間で判断します。

Q. 借り換えの費用は、経費にできますか。

A. 項目によって扱いが異なる可能性があります。登録免許税、印紙税、手数料、保証料などの処理(その年の経費にするか、繰延資産などにするか)は、個人か法人か、費用の内容によって変わりえます。税理士に確認してください。

Q. 借り換えの審査に落ちるのはどんなときですか。

A. 借り換えも新規の融資と同じように審査されます。決算が赤字になっている、空室が増えた、築年数が進んで担保評価が下がった、他の借入が増えたなど、前回の審査から状況が悪化していると、条件が悪くなったり、通らなかったりする可能性があります。

Q. 借り換えをせずに、金利を下げてもらう方法はありますか。

A. 現在の金融機関に、金利の見直しを相談する方法があります。他行の提示条件を示して交渉する、決算が良好になったことを示す、繰上返済で残債を減らすなどの方法があります。応じるかどうかは金融機関の判断です。

Q. 借り換えのときに、返済期間は同じにしたほうがよいですか。

A. 目的によります。総返済額を減らしたいなら、期間を変えずに金利を下げるのが分かりやすい方法です。月々の負担を軽くしたい場合は、期間を延ばす選択肢もありますが、総返済額は増えやすくなります。返済期間を変えたときの、総額とDSCRを比べて決めてください。

まとめ

借り換えは、金利の差だけでなく、かかる費用と、それを取り戻すまでの期間で判断します。要点は次のとおりです。

税率、手数料、融資の条件は、改正や金融機関ごとの運用で変わることがあります。具体的な判断は、金融機関、税理士などの専門家に確認してください。

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※本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、特定の投資・融資・税務上の判断を勧めるものではありません。制度や数値は記事作成時点の一般的な内容です。個別の判断は、金融機関・税理士などの専門家にご確認ください。

最終更新:2026年10月

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