不動産で人生を謳歌するブログ

損益通算の例外と純損失の繰越|土地の借入利子・国外中古建物・3年繰越

不動産所得が赤字になったとき、その赤字を給与所得などから差し引けるのが損益通算です。ところが、不動産所得の赤字には、差し引けない部分が決まっています。代表的なものが、土地を取得するための借入金の利子と、国外の中古建物の減価償却費相当額です。また、損益通算をしても引ききれない赤字は、青色申告であれば翌年以後3年間繰り越せます。この記事では、国税庁と法令の公表内容をもとに、損益通算の例外と純損失の繰越しの仕組みを、仮の数字で確認します。

▶ チーム戦(SEN)無料体験セミナーの詳細はこちら

損益通算の基本(どの所得で、どの順に差し引くか)

損益通算とは、ある所得の損失(赤字)を、ほかの所得の黒字から差し引く計算のことです。国税庁のタックスアンサー(No.2250)によれば、損益通算の対象になるのは、次の4つの所得で生じた損失に限られます。

損益通算の対象 損益通算の対象にならない主な所得
不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得 利子所得・退職所得(損失が生じない)、配当所得・給与所得・一時所得・雑所得(損失が生じても他の所得から控除できない)

国税庁の確定申告の手引き(損失申告用)では、差し引く順序も示されています。事業所得や不動産所得の赤字は、まず経常所得(事業所得、不動産所得、利子所得、配当所得、給与所得、雑所得)の黒字から差し引き、次に譲渡所得、一時所得、山林所得、退職所得の順に差し引きます。会社員が不動産所得で赤字を出した場合は、給与所得から差し引くことになります。

損益通算には、このほかにも通算できない損失があります。たとえば、生活に通常必要でない資産(別荘、一定額を超える貴金属・書画骨とうなど)に係る損失、土地建物等の譲渡による譲渡所得の赤字(一部の例外を除く)などです。この記事では、不動産賃貸に関わる例外に絞って整理します。

不動産所得の赤字のうち、差し引けない4つの損失

不動産所得の赤字は、原則として他の所得と通算できますが、国税庁のタックスアンサー(No.1391)で、次の損失は「生じなかったもの」とみなされ、他の所得から差し引けないと示されています。

損失の種類 内容 根拠(国税庁の記載)
別荘など 主として趣味・娯楽・保養・鑑賞の目的で所有する不動産の貸付けに係る損失 所得税法第69条、同施行令第178条
土地等の取得のための借入金の利子 必要経費に算入した、土地等の取得に要した負債の利子に相当する部分 租税特別措置法第41条の4
特定組合員・信託の受益者の損失 不動産所得を生ずべき事業を行う民法上の組合等の特定組合員、信託の受益者の、組合事業・信託から生じた不動産所得の損失(他の不動産所得の黒字との通算もできない) 租税特別措置法第41条の4の2
国外中古建物の償却費相当額 令和3年分以後、国外中古建物の損失のうち、耐用年数を簡便法で計算した減価償却費に相当する部分(内部通算もできない) 租税特別措置法第41条の4の3

とくに、国内で個人の大家さんが物件を購入するときに関係するのは、2つ目の「土地等の取得のための借入金の利子」です。次の章で、計算の仕組みを具体的に見ます。

土地の借入利子は損益通算できない(措置法第41条の4)

租税特別措置法第41条の4は、個人の不動産所得に損失が生じた場合、必要経費に算入した金額のうちに、不動産所得を生ずべき業務に使う土地(または土地の上に存する権利)を取得するために要した負債の利子があるときは、その損失のうち利子に相当する部分(政令で定める計算による金額)は、損益通算などの規定の適用上、生じなかったものとみなす、と定めています。

政令(租税特別措置法施行令第26条の6第1項)では、通算できなくなる金額を次のように計算します。

場合 損益通算できなくなる金額
土地の借入利子 > 不動産所得の損失の金額 不動産所得の損失の金額(損失の全部)
土地の借入利子 ≦ 不動産所得の損失の金額 土地の借入利子に相当する金額

つまり、「損失の金額」と「土地の借入利子」の小さいほうが、損益通算できなくなります。不動産所得が黒字の年は、この制限は問題になりません。赤字の年に、土地の借入利子の分だけ、損益通算の効果が小さくなる、という制度です。

土地と建物を一緒に買って借り入れた場合の利子の区分

土地付きの物件を購入して、土地と建物の代金を一つの借入でまかなうと、借入金の利子のうち、どこまでが「土地の利子」なのかが問題になります。同令第26条の6第2項は、土地等と建物を一の契約で同じ人から取得し、負債の額が土地と建物ごとに区分されていないなど、区分が困難なときは、負債が「まず建物の取得の対価に充てられ、次に土地等の取得の対価に充てられたもの」として計算できる、と定めています(「できる」規定です)。

国税庁の措置法通達(41の4-3)は、土地等に係る負債の利子の額を、建物と土地等を取得するための負債の利子の額に、負債の額のうち土地等の対価に充てられたものとされる負債の額の割合を掛けて計算する、と示しています。

仮の例:土地3,000万円・建物2,000万円を4,500万円で借り入れた場合

次は、計算の流れを確認するための仮の例です。1年目の借入金の利子を90万円と仮定します。

項目 仮の条件・計算
購入価格 土地3,000万円 + 建物2,000万円 = 5,000万円(一の契約)
借入 4,500万円(土地・建物の区分なし)、1年目の利子90万円(仮)
負債の充当(建物を先とする) 建物に2,000万円 → 残りの2,500万円が土地
土地に係る利子 90万円 × 2,500万円 ÷ 4,500万円 = 50万円
建物に係る利子 90万円 − 50万円 = 40万円

この条件で、不動産所得の収入の水準を変えて、損益通算できる赤字を計算します。必要経費は、借入金の利子90万円、減価償却費100万円、固定資産税等20万円、管理費・修繕費・保険料など70万円の合計280万円としました(仮)。

年間の家賃収入 不動産所得 土地の利子相当(50万円)との比較 損益通算できない金額 損益通算できる赤字
300万円 +20万円(黒字) ― 0円 ―
240万円 −40万円 赤字40万円 40万円(赤字の全部) 0円
200万円 −80万円 赤字80万円 > 利子50万円 50万円 30万円
150万円 −130万円 赤字130万円 > 利子50万円 50万円 80万円

家賃収入が240万円の年は、帳簿上は40万円の赤字ですが、土地の利子相当(50万円)のほうが大きいため、赤字の全部が損益通算の対象外です。給与所得などから差し引くことはできず、税金の軽減効果はありません。家賃収入が200万円の年は、赤字80万円のうち50万円が対象外で、30万円だけが損益通算できます。

NOTE 上の表は、制度の仕組みを理解するための仮の例です。実際には、借入金の使い道が契約書上で区分されている場合や、自己資金を併用する場合などで、土地に係る利子の計算が変わります。購入前に、金融機関の借入の内訳と、税理士の計算を確認しておくことをおすすめします。

なお、損益通算できない部分は、法令上「生じなかったものとみなす」とされるため、純損失にも含まれず、翌年以後への繰越しもできません。また、土地の利子は、不動産所得の計算上は必要経費に算入されます。つまり、不動産所得の金額そのものは小さくなりますが、他の所得との通算が制限される、という仕組みです。

国外中古建物の償却費は損益通算できない(令和3年分以後)

国外にある中古建物を賃貸する場合は、別の制限があります。租税特別措置法第41条の4の3は、令和3年(2021年)以後の各年に、国外中古建物から生ずる不動産所得があり、不動産所得の金額の計算上、国外不動産所得の損失の金額があるときは、その金額を、損益通算などの規定の適用上、生じなかったものとみなす、と定めています。

ここでいう国外中古建物とは、同条の定義によれば、個人または法人が使用・事業の用に供していた国外にある建物を、個人が取得して不動産所得を生ずべき業務に供したもので、かつ、償却費の計算で用いる耐用年数を、財務省令で定めるところにより算定している(中古資産としての耐用年数を使っている)ものです。国税庁のタックスアンサー(No.1391)は、このうち、耐用年数を簡便法で計算した減価償却費に相当する部分が損益通算できない、と説明しています。

また、この特例の適用を受けた国外中古建物を売却するときは、取得費の計算で、毎年の減価償却費の合計額から、特例で生じなかったものとみなされた損失の合計額を控除します(国税庁 タックスアンサー No.3261)。つまり、損益通算できなかった分は、売却時の譲渡所得の計算では、取得費を減らさない形で調整されます。

国外不動産の購入を検討する場合は、物件の評価や為替などのリスクに加えて、このような税務上の制限があることを、事前に確認しておく必要があります。国外中古建物の判定や計算は複雑なので、税理士に相談してください。

組合や信託を通じた不動産投資の注意点

任意組合などの組合事業や信託を通じて不動産に投資する場合にも、損益通算の制限があります。国税庁のタックスアンサー(No.1391)によれば、不動産所得を生ずべき事業を行う民法上の組合等の特定組合員(組合事業の重要な業務の執行の決定に関与せず、契約締結の交渉等を自ら執行しない個人組合員)や、信託の受益者である個人は、組合事業や信託から生じた不動産所得の損失が、生じなかったものとみなされます。

そのため、その損失は、他の所得との損益通算ができないだけでなく、ほかの不動産所得の黒字から差し引くこともできません。また、組合事業や信託から生じる不動産所得がある場合は、組合事業ごと・信託ごとの収支に係る明細書を確定申告書に添付する必要があります。出資や受益権を取得する前に、契約の内容と税務上の取扱いを確認してください。

純損失の繰越控除(青色申告なら翌年以後3年間)

損益通算をしても、引ききれない赤字が残ることがあります。国税庁の確定申告書作成コーナーによれば、純損失の金額とは、事業所得、不動産所得、譲渡所得、山林所得の4つの所得の損失の金額のうち、損益の通算をしてもなお控除しきれない金額をいいます。この純損失は、一定の要件のもとで、翌年以後3年間にわたって繰り越せます。

繰越しの要件

項目 青色申告の場合 白色申告の場合
繰り越せる純損失 居住用財産に係る通算後譲渡損失を除き、純損失の全額 変動所得の損失額(事業から生じたもの)と被災事業用資産の損失額に限る
繰越期間 翌年以後3年間(特定非常災害の場合は一定の純損失について5年) 同左
申告の方法 損失が生じた年分の確定申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を提出する 同左

賃貸経営の赤字を繰り越すには、損失が生じた年に青色申告をしていることが、実質的な前提です。白色申告では、不動産所得の赤字は繰り越せません。さらに、損失が生じた年分の確定申告書を期限内に提出し、その後も毎年、連続して確定申告書を提出する必要があります。繰越しの途中で申告を忘れると、それ以降は繰越控除を受けられなくなります。

仮の例:100万円の純損失を3年間で使う場合

ある年に、損益通算をしても100万円の純損失が残り、青色申告で損失申告をしたとします(仮の例)。翌年以後の所得に応じて、次のように控除されます。

年 その年の所得(繰越控除の前、仮) 繰越控除 翌年への繰越額
損失の生じた年 純損失100万円 ― 100万円
1年後 40万円 40万円 60万円
2年後 30万円 30万円 30万円
3年後 20万円 20万円 10万円
4年後以降 ― 期限切れで控除できない 失効(10万円)

この例では、3年間の所得が小さかったため、10万円が使いきれずに失効します。繰越期間は3年間なので、物件の購入初年度に大きな赤字を出しても、その後の所得が小さいと、繰越しの効果は限定的です。一方、繰越しをする年に所得が大きければ、毎年の所得から差し引いて、税負担を軽くできます。

NOTE 繰越控除は、控除できる所得の範囲で行われ、控除しきれない分だけが翌年に回ります。特定非常災害(令和5年4月1日以降に指定された災害)の場合は、一定の純損失について繰越期間が5年に延びます。

純損失の繰戻し還付と、青色申告特別控除との関係

前年も青色申告をしていた場合は、純損失の繰越しに代えて、前年分の所得に繰り戻して、前年分の所得税の還付を受ける方法もあります(国税庁 タックスアンサー No.2070)。繰戻しによる還付を請求した金額は、繰り越せません(確定申告の手引き 損失申告用)。国税庁の案内によれば、還付請求書と還付額の計算書を、純損失が生じた年分の確定申告書とあわせて提出します。

賃貸経営を始めたばかりの年は、前年に不動産所得がなく、繰戻しの対象になる所得が小さい場合が多いでしょう。給与所得がある会社員は、前年の所得税額が還付の上限の目安となります。繰越しと繰戻しのどちらが有利かは、前年の納税額、今後の所得の見込みなどで変わるため、税理士に相談して判断してください。

青色申告特別控除との関係にも注意が必要です。国税庁のタックスアンサー(No.2072)では、控除額の上限は、不動産所得と事業所得の黒字の合計額で、損益通算の前の黒字で判定し、損失が出ている所得は0として計算する、とされています。したがって、不動産所得が赤字の年は、青色申告特別控除は0円で計算され、控除によって赤字が大きくなることはありません。

損益通算と繰越しを使うときの確認手順

赤字が見込まれる物件を取得するときは、購入前から次の順序で確認しておくと、後で想定と違う結果になることを減らせます。

  1. 土地と建物の取得価額、借入金の内訳(土地・建物にどう充てるか)を整理し、土地に係る借入利子の見込みを出す。
  2. 年間の収入と必要経費から、不動産所得の見込みを出し、赤字になる場合は、土地の利子相当額との比較で、損益通算できる額を計算する。
  3. 減価償却費、固定資産税、修繕費など、赤字の中身を分解し、現金が出ていかない費用がどれだけ含まれているかを確認する。
  4. 国外の不動産や、組合・信託を使う場合は、損益通算の対象外になる損失の有無を確認する。
  5. 青色申告承認申請書を期限までに提出し、複式簿記等で記帳して、損失が生じた年に確定申告書を期限内に提出する。
  6. 赤字が引ききれない場合は、損失申告(純損失の繰越し)をして、その後も毎年、連続して確定申告書を提出する。
  7. 繰戻し還付が使える場合は、繰越しとの有利不利を比較する。

損益通算や繰越しで税金が軽くなっても、赤字の中身が実際の現金支出の場合は、手元の資金が減っている点に変わりはありません。税金だけを目的にせず、物件の収支と返済の見通しを基準に判断してください。

よくある質問

Q. 土地の借入利子がある物件は、損益通算の効果が全くありませんか。

A. 全くないわけではありません。損益通算できないのは、不動産所得の赤字のうち、土地の借入利子に相当する部分です。減価償却費など、ほかの要因による赤字の部分は、損益通算の対象になります。ただし、赤字が土地の利子より小さい場合は、赤字の全部が対象外になります。

Q. 土地を自己資金で買って、建物だけを借入でまかなえば、制限は避けられますか。

A. 土地の取得に要した負債の利子がなければ、この制限の対象になる金額もありません。ただし、借入金の使い道が土地と建物のどちらなのかは、契約の内容や実態で判断されます。具体的な判断は、税理士に確認してください。

Q. 白色申告でも、純損失を繰り越せますか。

A. 白色申告の場合、繰り越せる純損失は、変動所得の損失や被災事業用資産の損失などに限られます。通常の不動産所得の赤字は、繰り越せません。賃貸経営で赤字が見込まれる場合は、青色申告の承認を受けておくことが大切です。

Q. 赤字の年に申告を忘れました。繰越しは使えますか。

A. 繰越控除を受けるには、損失が生じた年分の確定申告書を提出し、その後も連続して確定申告書を提出する必要があります。損失が生じた年の申告をしていない場合は、繰越しの要件を満たしません。早めに税務署や税理士に相談してください。

Q. 国内の中古アパートの減価償却費は、損益通算できますか。

A. 国外中古建物の特例は、国外にある建物が対象です。国内の中古建物の減価償却費には、この制限はありません。ただし、土地の借入利子の制限や、別荘などの制限は、国内の物件でも関係します。

まとめ

不動産所得の赤字は、ほかの所得と通算できる反面、いくつかの例外があります。この記事のポイントを整理します。

制度や数値は改正されることがあるため、最終的な判断の前に、国税庁、税務署、税理士などの専門家に確認してください。

融資を活用した不動産投資を、体系的に学びたい方へ
レバレッジ型不動産投資スクール「チーム戦(SEN)」では、融資・物件選び・税金の考え方を、無料体験セミナーでご紹介しています。

チーム戦(SEN)無料体験セミナーはこちら

※セミナー後に有料サービスのご案内がある場合があります。成果を保証するものではありません。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、特定の投資・融資・税務上の判断を勧めるものではありません。制度や数値は記事作成時点の一般的な内容です。個別の判断は、金融機関・税理士などの専門家にご確認ください。

最終更新:2026年10月

関連記事