不動産で人生を謳歌するブログ

青色申告特別控除65万円を受ける条件|不動産所得の事業的規模とe-Tax

賃貸経営の確定申告で、所得を大きく減らせる制度の一つが、青色申告特別控除です。ただし、不動産所得で最高65万円の控除を受けるには、貸付けが「事業的規模」であること、複式簿記で記帳すること、e-Taxなどの要件を満たすことが必要です。この記事では、国税庁と財務省の公表情報をもとに、65万円・55万円・10万円の違い、事業的規模の判定、e-Taxの要件、そして令和9年分から変わる予定の制度改正までを整理します。

▶ チーム戦(SEN)無料体験セミナーの詳細はこちら

青色申告特別控除とは(10万円・55万円・65万円の違い)

青色申告特別控除は、青色申告者が、不動産所得・事業所得・山林所得から一定額を差し引ける制度です。国税庁のタックスアンサー(No.2072)によれば、控除額は、記帳の方法や申告の方法によって、10万円、55万円、65万円の3区分があります(令和8年分までの取扱い)。

控除額 主な要件 対象になる所得
65万円 55万円の要件をすべて満たしたうえで、(イ)優良な電子帳簿の保存(仕訳帳・総勘定元帳)、または(ロ)確定申告書・貸借対照表・損益計算書等をe-Taxで送信すること 不動産所得または事業所得(不動産所得は「事業」として行う場合)
55万円 不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営み、正規の簿記の原則(一般には複式簿記)で記帳し、貸借対照表・損益計算書等を添付して期限内に申告すること 同上
10万円 上記に当てはまらない青色申告者(簡易な帳簿での記帳、事業的規模に至らない貸付けなど) 不動産所得・事業所得・山林所得

賃貸経営で大きな差が出るのは、「事業的規模かどうか」と「複式簿記で記帳しているかどうか」です。事業的規模でない不動産所得や、簡易な記帳の場合は、控除額は10万円です。たとえば、65万円と10万円では、控除額に55万円の差があります。所得税率が20%、住民税率が10%の人(仮)なら、差し引ける所得が55万円増えることで、所得税と住民税の合計で約16.5万円の税負担の差になります(実際の税額は、他の所得や控除によって変わります)。

NOTE 青色申告特別控除は、青色申告の特典の一つです。青色事業専従者給与、純損失の繰越しなど、ほかの特典は別の制度で、要件も異なります。専従者給与は別の記事で整理したとおりです。

青色申告を始めるための手続き(承認申請書の期限)

青色申告特別控除を受ける前提として、青色申告の承認を受ける必要があります。国税庁のタックスアンサー(No.2070)によれば、「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出します。提出期限は、始める時期によって異なります。

区分 提出期限
原則(すでに事業を営んでいる場合) 承認を受けようとする年の3月15日まで
新たに事業を開始した場合(その年の1月16日以後) 業務を開始した日から2か月以内
白色申告者の業務を承継した場合(その年の1月16日以後) 承継した日から2か月以内
被相続人が青色申告者だった場合(死亡日が1月1日〜8月31日) 死亡日から4か月以内
同上(死亡日が9月1日〜10月31日) その年の12月31日まで
同上(死亡日が11月1日〜12月31日) 翌年の2月15日まで

賃貸経営を新たに始めた年は、賃貸を開始した日から2か月以内が目安です。期限を過ぎると、その年は青色申告の特典を受けられません。購入してすぐに賃貸を始める予定がある方は、購入のスケジュールに合わせて、提出日をカレンダーに入れておきましょう。

不動産所得で65万円を受けるための「事業的規模」とは

不動産所得で55万円や65万円の控除を受けるには、不動産の貸付けが「事業」として行われている必要があります。国税庁のタックスアンサー(No.1373)によれば、事業として行われているかどうかは、社会通念上「事業」と称するに至る程度の規模で行われているかどうかにより、実質的に判断されます。そのうえで、建物の貸付けについては、次の基準のいずれかに当てはまれば、原則として事業として行われているものとして扱われます。

貸付けの形態 事業として扱われる目安
貸間、アパート等 貸与できる独立した室数がおおむね10室以上
独立家屋(戸建て) おおむね5棟以上

事業的規模かどうかで、控除額だけでなく、不動産所得の計算の取扱いも変わります。

項目 事業的規模 事業的規模に至らない場合
青色申告特別控除 最高65万円(55万円) 最高10万円
青色事業専従者給与・事業専従者控除 適用あり 適用なし
資産損失(取壊し・除却など) 全額を必要経費に算入 不動産所得の金額が限度
貸倒損失(賃料の回収不能) 回収不能となった年の必要経費に算入 収入に計上した年にさかのぼって所得を計算し直す

たとえば、アパート6室と戸建て2棟を持っている場合は、どちらの基準にも単独では届きません。このように、基準に満たない場合でも、実質的に判断されるため、規模が基準に近い場合は、税務署や税理士に相談してください。10室以上や5棟以上は、あくまで原則として事業として扱われる目安です。

55万円控除の3つの要件

国税庁のタックスアンサー(No.2072)では、55万円の青色申告特別控除を受けるための要件を、次の3つとしています。

  1. 不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること(不動産の場合は、先に述べた事業的規模であること)。
  2. 取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)で記帳していること。
  3. 貸借対照表、損益計算書、所得の金額の計算に関する明細書を確定申告書に添付し、控除額を記載して、翌年3月15日までに提出すること。

ここでの「正規の簿記」は、現金出納帳などの簡易な帳簿ではなく、取引を借方と貸方に分けて記録する複式簿記のことです。会計ソフトを使えば、日々の入力から貸借対照表と損益計算書を作成できます。

また、国税庁のタックスアンサーでは、次の点も示されています。

65万円控除の2つのルート(令和8年分まで)

65万円の控除を受けるには、55万円の要件をすべて満たしたうえで、次の(イ)(ロ)のいずれかに該当する必要があります。

ルート 内容 追加で必要な手続き
(イ)優良な電子帳簿の保存 その年分の仕訳帳と総勘定元帳を、優良な電子帳簿の要件を満たして電子データで保存する。 令和4年分以後でこのルートを新たに使う場合は、所定の事項を記載した届出書を翌年3月15日までに提出する。すでに要件を満たして65万円を受けていた方が、引き続き要件を満たす場合は、届出書は不要。
(ロ)e-Taxによる申告 確定申告書、貸借対照表、損益計算書等を、提出期限までにe-Taxで送信する。 イメージデータ(PDFなど)での送信は認められない。

多くの個人の大家さんにとって、取り組みやすいのは(ロ)のe-Taxルートです。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、青色申告決算書(不動産所得用)を作成して、そのままe-Taxで送信できます。(イ)の優良な電子帳簿は、訂正・削除の履歴が残ること、帳簿間の相互関連性があること、検索機能があることなどの要件を満たす会計ソフトを使う必要があります。

e-Taxの準備と注意点

65万円控除を受けるためにe-Taxで申告する場合、事前の準備が必要です。国税庁のe-Taxのページによれば、利用者識別番号を取得して確定申告書等作成コーナーを使うには、マイナンバーカード(スマートフォンのマイナンバーカードを含む)が必要です。また、令和7年10月1日から、ID・パスワード方式のID・パスワードの新規発行は停止されています。

マイナンバーカードの暗証番号(利用者証明用電子証明書)を忘れていたり、カードの電子証明書の有効期限が切れていたりすると、申告の直前に慌てることになります。申告期限の1か月以上前を目安に、ログインできるか試しておくと安心です。

仮の例:65万円控除で税負担がどう変わるか

次は、控除の効果を確認するための仮の例です。実際の税額は、他の所得、所得控除、お住まいの自治体の税率などによって変わります。

項目 10万円控除 65万円控除
不動産所得(青色申告特別控除の前) 200万円 200万円
青色申告特別控除 10万円 65万円
控除後の不動産所得 190万円 135万円
所得税率20%・住民税率10%として税額の目安(仮) 約57万円 約40.5万円
差額 ― 約16.5万円

控除後の所得が55万円減るので、税率の合計30%(仮)を掛けた約16.5万円が、税負担の差になります。ただし、控除額の上限は、不動産所得と事業所得の黒字の合計額です。たとえば、控除前の不動産所得が40万円なら、控除できるのは40万円までです。不動産所得が赤字の場合は、控除は0として計算され、控除によって赤字が大きくなることはありません。

NOTE 上の表の「税額の目安」は、所得金額に直接税率を掛けた単純な計算で、基礎控除などの所得控除を考慮していません。実際の税額は、確定申告書等作成コーナーや税理士による計算で確認してください。

令和9年分以後の改正予定(75万円・65万円・10万円)

青色申告特別控除は、令和8年度税制改正で見直しが決まっています。財務省の「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日閣議決定)によれば、令和9年分以後の所得税から、次のように変わります。

項目 令和8年分まで 令和9年分以後(大綱による)
55万円控除 複式簿記・期限内申告などの要件で最高55万円 確定申告書や決算書等をe-Taxで提出することが要件に加わり、控除額は65万円に引き上げ。
65万円控除 55万円の要件に加えて、優良な電子帳簿の保存またはe-Taxで最高65万円 e-Taxに加えて、仕訳帳と総勘定元帳の電磁的記録の保存等(優良な電子帳簿の保存、または、請求書データ等との自動連携など)を行う場合に、75万円に引き上げ。
10万円控除 簡易な記帳の青色申告者 簡易な簿記の方法で記帳する不動産所得・事業所得の青色申告者のうち、前々年分の収入金額が1,000万円を超える者は対象から除外。

国税庁のパンフレット(令和8年5月1日現在)でも、令和9年分以後の確定申告から、複式簿記・電子申告・優良な電子帳簿(訂正削除履歴)の組み合わせで75万円、複式簿記の書面申告では10万円などと整理されています。令和8年分までの申告(令和9年3月15日まで)は、現行の10万円・55万円・65万円の区分が使われます。

この改正で実務上重要なのは、令和9年分以後は、書面で申告する人が受けられる控除が、現在の55万円から大きく下がる点です。e-Taxによる申告が、事実上の前提になります。簡易な簿記で記帳している人は、前々年の収入金額が1,000万円を超えると、10万円の控除も受けられなくなります。詳細な要件や届出の運用は、国税庁の最新の案内で確認してください。

申告までの準備の流れ

65万円の控除を受けるために、年間を通じて必要な作業を、順番に整理します。

  1. 賃貸の開始から2か月以内(または、その年の3月15日まで)に、青色申告承認申請書を提出する。
  2. 事業的規模かどうか(10室以上・5棟以上など)を確認し、判断に迷う場合は税理士に確認する。
  3. 会計ソフトを決め、日々の取引(家賃収入、管理費、修繕費、借入金の利子、減価償却費など)を複式簿記で入力する。
  4. 毎月、通帳と帳簿の残高を照合し、入力漏れを防ぐ。
  5. 年末に、減価償却費、固定資産税、借入金の残高などを整理し、決算整理を行う。
  6. 貸借対照表と損益計算書を作成し、青色申告決算書(不動産所得用)を準備する。
  7. マイナンバーカードを使えるようにして、e-Taxで申告書と決算書等を、期限(翌年3月15日)までに送信する。
  8. 控除額の欄に65万円と記載されているかを、送信前に確認する。

帳簿や書類の保存も、青色申告の要件の一部です。国税庁のタックスアンサー(No.2070)によれば、帳簿書類の保存期間は原則として7年で、請求書、見積書、納品書、送り状などは5年とされています。賃貸経営では、家賃の入金記録、管理会社からの月次報告書、修繕の見積書と請求書、固定資産税の納税通知書、借入金の返済予定表などが、保存の対象になる代表的な書類です。申告が終わった後も、整理して保管しておきましょう。

入力の負担を減らすには、通帳やクレジットカードの明細を会計ソフトに取り込み、仕訳を自動で提案してもらう機能が役立ちます。ただし、自動で提案された勘定科目が正しいとは限りません。とくに、修繕費と資本的支出(固定資産に計上するもの)の区別、借入金の元本返済と利子の区別は、間違えやすい点です。元本の返済は必要経費にならず、利子は必要経費になります。判断に迷う項目は、税理士に確認しましょう。

よくある失敗と確認ポイント

失敗の例 何が問題か 対策
承認申請書を出し忘れた 承認を受けていない年は、青色申告の特典を使えない。 賃貸開始から2か月以内の期限を、購入時に確認する。
事業的規模でないのに65万円で申告した 10室・5棟の目安を満たさず、実質判断でも事業と言えない場合は、控除の対象外となる可能性がある。 部屋数・棟数を整理し、迷う場合は事前に相談する。
貸借対照表を添付しなかった 65万円・55万円の要件には、貸借対照表と損益計算書の添付が必要。 会計ソフトで両方を作成し、e-Taxで送信する。
期限後に申告した 55万円・65万円は、翌年3月15日までの提出が要件。 期限の1か月前を目標に、準備を完了する。
現金主義の特例を選んでいた 特例を選んでいると、55万円・65万円の控除を受けられない。 特例を選んでいないか、過去の届出を確認する。
PDFで貸借対照表を送った e-Taxルートでは、イメージデータでの送信は認められない。 確定申告書等作成コーナーなどで、データとして作成して送る。

よくある質問

Q. アパート6室を持っています。65万円の控除は受けられますか。

A. 10室以上や5棟以上の目安には届かないため、原則としては事業的規模に当たらず、控除額は最高10万円です。ただし、事業としての規模かどうかは、実質的に判断されます。規模が目安に近い場合は、税務署や税理士に相談してください。

Q. 年の途中で物件を買い増して、10室を超えました。その年から65万円を受けられますか。

A. 事業的規模かどうかは、その年の貸付けの状況で実質的に判断されます。年の途中で規模が変わった場合の扱いは、個別の事情によるため、税理士や税務署に確認してください。青色申告承認申請書が出ているかも、あわせて確認が必要です。

Q. 会計ソフトを使わずに、エクセルで帳簿をつけても65万円になりますか。

A. 複式簿記の原則に沿って記帳し、貸借対照表と損益計算書を作成できれば、要件を満たす可能性があります。ただし、(イ)の優良な電子帳簿ルートは、訂正削除履歴や検索機能などの要件があるため、エクセルでは満たしにくい場合があります。e-Taxルートなら、帳簿の保存方法は問われません。

Q. 令和9年分からは、書面申告でも55万円は受けられますか。

A. 財務省の令和8年度税制改正の大綱では、令和9年分以後、55万円控除の要件にe-Taxでの提出が加わり、控除額が65万円に引き上げられるとされています。書面申告の取扱いは、国税庁のパンフレットでは10万円と整理されています。申告方法の詳細は、国税庁の最新の案内で確認してください。

Q. 不動産所得が赤字の年でも、控除を受けるメリットはありますか。

A. 控除額の上限は黒字の所得の合計額で、不動産所得が赤字だと、控除は0として計算されます。ただし、青色申告を続けていると、損益通算をしても引ききれない純損失を、翌年以後3年間繰り越せるなどの特典があります。純損失の繰越しは、別の記事で整理します。

まとめ

不動産所得で青色申告特別控除の65万円を受けるには、事業的規模の判定、複式簿記による記帳、e-Taxなどの要件を、順番に満たす必要があります。この記事のポイントを整理します。

制度や数値は改正されることがあるため、最終的な判断の前に、国税庁、税務署、税理士などの専門家に確認してください。

融資を活用した不動産投資を、体系的に学びたい方へ
レバレッジ型不動産投資スクール「チーム戦(SEN)」では、融資・物件選び・税金の考え方を、無料体験セミナーでご紹介しています。

チーム戦(SEN)無料体験セミナーはこちら

※セミナー後に有料サービスのご案内がある場合があります。成果を保証するものではありません。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、特定の投資・融資・税務上の判断を勧めるものではありません。制度や数値は記事作成時点の一般的な内容です。個別の判断は、金融機関・税理士などの専門家にご確認ください。

最終更新:2026年10月

関連記事